目でカメラのレンズの役割をする水晶体が白く濁り、物が見えにくくなる病気。最大の原因は加齢。早い人は40代から、80代では大半の人に見つかる。白濁した水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する手術が広く行われている。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
水晶体が混濁した状態をいい,俗に〈しろそこひ〉ともいう。視力障害,失明の原因となる最も一般的な疾患である。水晶体は虹彩の後方,硝子体の前方に位置し,チン小帯によって眼内に保持された透明な組織であり,カメラでいえばちょうどレンズに相当する。栄養血管がないため,周囲の房水から栄養を受け,代謝を営み,その透明性を維持している。したがって,なんらかの代謝的な障害が起こると白内障の原因となる。自覚症状としては視力障害がその最たるものである。もちろん,視力障害の程度は混濁の程度と密接に関係するが,一般に,水晶体の中央部が混濁した場合は視力障害が強く,その反対に周辺のみの場合は視力障害は軽い。ときに,単眼性複視(片方の眼だけで見ても像がだぶって見える状態)を訴える。これは,水晶体内の不規則な屈折のためである。
白内障はその原因,混濁の部位およびその程度,先天性,後天性などによって分類されるが,まだ,完全な単一分類はない。
(1)形状別分類 水晶体は簡単にいえば,中心部の核とその周りにある皮質と,これを包む囊から成る。水晶体の混濁は,その形状や位置によって分類命名される。点状白内障,層間白内障,縫合白内障は先天白内障に多くみられる。後極白内障,後囊下白内障は,老人性白内障や続発白内障,糖尿病などに多い。皮質白内障,全白内障は老人性白内障に多くみられる。水晶体の混濁の検査法として,瞳孔を散大させたのち,眼内に光を送り込んで検査する徹照法があるが,これによって比較的簡単に混濁を見ることが可能である。また,細隙灯顕微鏡を用いれば,水晶体混濁の位置や程度をさらに精密に調べることができる。さらに完全に白濁した水晶体は肉眼でも容易に見ることができる。
(2)病因別分類 (a)老人性白内障 白内障の代表的疾患であり,皮膚のしわや白髪と同じように老化に伴う水晶体の生理的変化とみなされている。細隙灯顕微鏡によって60歳以上の95%以上に水晶体の混濁がみられるともいわれる。初期のものは初発白内障ともいわれ,視力が侵されることは軽微であるが,混濁が徐々に進行するにしたがって,未熟白内障から成熟白内障へと変化し,視力障害が生ずる。高度に混濁したものを過熟白内障という。なぜ混濁が生ずるのかまだ明らかにされてはいないが,脱水による核質硬化,水晶体タンパク質のうち,可溶性タンパク質の減少,不溶性タンパク質の増加などがその原因として考えられている。(b)先天白内障 出生時あるいは生後3ヵ月以内に認められる白内障をいう。通常,濁りが停在性のものが多く,また,混濁の程度も軽度で,視力障害を起こさないものもあるが,進行するものもある。先天白内障の原因としては,妊娠3ヵ月以内の妊婦の風疹,麻疹感染,X線被曝,栄養不良,ステロイド剤の投与などがある。(c)併発白内障 ぶどう膜炎,網膜色素変性症,網膜剝離(はくり),絶対緑内障,眼内腫瘍等の疾患から,二次的に起きるものである。これらの疾患からの毒素が水晶体の代謝を障害し,混濁すると考えられている。(d)外傷性白内障 鋭利な刃物や鉄片が眼内に飛来して起こる穿孔(せんこう)性外傷に好発する。水晶体囊の破裂によって混濁が起こる。混濁の程度は種々であり,非常に軽微なものは自然に透明化することもあれば,停在性のものもある。また重篤なものは全白内障に進展する。非穿孔性外傷,たとえば眼球打撲の後,白内障が発症することもあり,これを打撲白内障という。(e)放射線白内障 X線,β線,γ線などの電磁エネルギーの被曝によって生ずる。被曝量によっても異なるが,数ヵ月から数年の間に水晶体の混濁が始まる。(f)全身疾患に伴う白内障 糖尿病患者にしばしば白内障が生じ,糖尿病性白内障という。通常2種類のタイプがある。一つは糖尿病患者の初老期に発病するもので,老人性白内障に酷似する。もう一つは,比較的若年者に起きるもので,前囊下や後囊下の混濁を特徴とする。いずれも進行性のものであるが,前者のほうが頻度は高い。そのほか,アトピー性皮膚炎,ロスモンド症候群などの皮膚疾患,筋強直性ジストロフィー,副甲状腺機能低下症などの全身病に白内障が合併する。(g)中毒性白内障 いくつかの薬剤が白内障を起こす。ステロイド内服あるいは点眼の長期投与,エコチオペート,アイオダイド,ラメカリウム,ブロマイドなどが知られている。
多くの白内障は薬物治療の有無にかかわらず進行する。したがって,最後は手術に頼らざるをえないのが現状である。薬物療法としては,カタリン,タチオン点眼,唾液腺ホルモン(パロチン)注射などが用いられている。
手術を行うべきか否かの明確な基準はないが,現在では,矯正視力が0.1以下の場合に手術が行われる。もちろん,視力が手動弁(眼前で手を動かして,その手の動きがわかる程度の視力),光覚弁(フラッシュライトの明りを目に送って,その明暗がわかる程度の視力)となってからでも手術は行うことができる。しかしそのまま放置しておくと,急性隅角閉塞緑内障を起こすことがあり,その前に手術をしておくほうがよい。(1)水晶体全摘出術 角膜輪部を切開したのち-60~-70℃に凍らせ全水晶体を摘出する。(2)水晶体囊外摘出術 水晶体前囊を破り,後囊だけを残し,核質や皮質を摘出,吸引する。最近,この手術は超音波振動を用いて行われるようになった。すなわち,1秒間に数万回のチップ振動によって発生した超音波で核質を破砕吸引し,さらに吸引チップで残りの皮質を吸引するという方法であり,これを超音波白内障手術(水晶体乳化吸引術)という。切開創が少なくてすむため,術後の回復が早く,また術後乱視も少ないという利点をもつ。ただし,囊外摘出術の場合,術後,残された後囊が混濁し,視力が再び低下することがある。(3)水晶体吸引術 先天白内障,若齢性白内障に対して行われる。これらの白内障では,核質はまだ硬化していないため,核質も容易に吸引できる。
白内障手術後の眼を無水晶体眼という。もちろん調節も行われるため,手術前に正視であった眼ならば,術後,遠方視には通常+10D(ジオプトリー),近方視には+13D程度の凸レンズ装用が視力回復のためには必要である。この方法としては眼鏡,コンタクトレンズがおもに用いられている。両眼とも無水晶体であれば眼鏡でもよい。しかし,片目だけ無水晶体の場合,眼鏡の装用は不可能に近く,コンタクトレンズが従来よく使われてきた。しかし,最近,水晶体を摘出後に,凸レンズの機能を有する人工水晶体(眼内レンズ)の挿入も行われるようになってきている。
→目/眼
執筆者:南波 久斌
白内障は太古から失明の最大の原因の一つであったと考えられる。古代インドの医学では,これが水晶体の混濁によるものであることが知られ,かなり古い時代から針をさして混濁した水晶体を脱臼墜下させる手術が行われていた。この方法は中国に移入され,さらに日本にも伝えられた。平安末期の絵巻《病草紙(やまいのそうし)》にある眼病の治療は,白内障の男に眼医者が針をたてて手術している図であるといわれる。日本では長く〈しろそこひ〉〈うみそこひ〉といわれ,江戸時代の眼科の名門馬島(まじま)流の元祖馬島清眼僧都は,白内障の針術を得意としていた。また幕末の眼科医土生玄昌(はぶげんしよう)(土生玄碩(げんせき)の子)には,白内障の臨床記録だけをつづった《白内翳手術人名》があり,白内障患者の多かったことが知られる。
ヨーロッパでは,2世紀のローマの外科医アンテュロスAntyllosが白内障の水晶体除去の手術を行ったといわれ,その後はインドやアラビアから伝えられた方法が,遍歴の眼科医師によって行われていた。近代医学が専門分化した18世紀になり,フランスの宮廷医ダビエルJacques Davielによって水晶体摘出手術が行われ,19世紀に入り近代眼科学の創設者といわれるドイツのグレーフェAlbrecht von Graefeが,線状切開法により白内障手術を飛躍的に前進させた。
執筆者:立川 昭二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
加齢とともに、
水晶体核の硬化、着色が主因のものを
混濁がある程度進行すると、視力障害が起きます。また、夜間に入射光が混濁により散乱することで、自動車のヘッドライトがまぶしく感じるグレアが起きたり、
進行度は必ずしも両眼が同程度ではなく、多くは左右に差があります。また、白内障の初期では核の硬化がみられ、見かけ上、老眼が軽減した症状(近用眼鏡の度数の軽減化)が現れることがあります。
白内障が初期のうちは、進行を予防する目的で目薬を点眼します。しかし、目薬は進行を抑制するのみで、視力を改善させる効能はありません。
ある程度進行し、視力が低下した場合や、グレアを訴える場合には手術を行います。
手術の時期は、視力の必要度が患者さんの社会生活により異なるため、視力検査の数値だけでは一概に決められません。また、白内障の程度と視力は一致しないことがあるため、混濁の程度でも手術時期の決定は不可能です。高齢者は全身疾患を有することが多いため、その治療方針は年齢や全身状態も考慮して決められます。
手術器械や眼内レンズの改良、手術方法の向上で、眼内手術は以前より安全なものになっています。方法は、超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術です。
3㎜程度に小さく切開したところから超音波プローブを挿入して、水晶体を乳化吸引し、残った水晶体嚢のなかに眼内レンズを挿入します。挿入する眼内レンズは、小切開から挿入可能なアクリルやシリコン素材の折りたたみレンズを主に使います。麻酔は、点眼麻酔やテノン嚢下麻酔などの局所麻酔を行い、20分程度で手術は終了します。
視力障害が白内障以外の病気によるものでないかを、常に確認する必要があります。
前記したように、白内障手術は以前に比べて安全な手術となりましたが、術後感染症など失明に至る合併症を起こすこともあります。眼科医とよく相談して、今後の治療方針を決めることが必要です。
沼賀 二郎, 村田 博史
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
俗に「目のレンズ」とよばれる水晶体の混濁する疾患で、視力障害をおこす。白そこひ、うみそこひなどともよばれ、いろいろの種類がある。先天性と後天性に大別されるが、原因や混濁の形状および位置によっても分類される。すなわち、老人性白内障、糖尿病性白内障、外傷性白内障などの後天性白内障のほか、層間白内障、点状白内障、中心白内障、全白内障には、母親が妊娠中に風疹(ふうしん)にかかると、その子に白内障を生ずるものもある。いずれも視力が悪く、ときには失明状態になるほか、特別の症状はみられない。近年とくに老人性白内障が増加しており、筆者の外来では60歳以上で視力0.1以下の人の60%を占めている。なお、虹彩(こうさい)炎、緑内障、網膜疾患など他の眼疾患のために二次的に発生する併発白内障もあり、原疾患の軽重に予後が左右される。
[桑原安治]
先天性白内障は早期に手術を行わないと効果はない。古くは水晶体の切嚢(のう)術によったが、これには副作用が多い。桑原安治(やすはる)(1908―85)の開発した水晶体吸引法は、角膜に2、3ミリの切開を加えて注射器で水晶体の内容物を吸い取る方法である。これによると角膜切創がごくわずかであり、術後管理も良好で成績もよい。また、老人性白内障や成人の白内障においては中央に核ができ、加齢とともに硬度を増す。そこで1745年フランスの眼科医ダビエルJacques Daviel(1696―1762)が、角膜を3分の1ほど切開し、後嚢を残して中央の核を摘出する手術を開発した。これが嚢外摘出法である。これが安定した方法として長く行われ、その後に水晶体全体、すなわち嚢を残さず摘出する嚢内摘出法が開発された。桑原は、この有核の白内障も無核の先天性白内障のように簡単に吸引することができないものかと種々検討の結果、超音波ねじり振動を利用し、チップtipの先を60度に曲げたものが水晶体核の破砕力が強大であることを確かめ、これを利用して角膜に2、3ミリの切開を行い、そこから超音波のチップを水晶体内に挿入し、核を破砕しながら破砕片を吸引することに成功した。この方法は各年齢の白内障に応用することができた。切創が小さく、外来診療でも手術が可能である。なお、ほとんど同時にアメリカのケールマンKelmanも超音波を利用した水晶体の破砕吸引を開発したが、超音波の縦振動を用いたために核の破砕力が弱く、だいたい50歳以下の白内障に適応されている。また1970年(昭和45)ころから白内障手術の進歩は飛躍的であり、とくに手術用顕微鏡の導入が意外にも早く一般化し、それに応じて手術器具の改良、とくに手術顕微鏡用のものがつくられ、縫合材料も精密化して手術術式が大幅に変革した。現在では老人性白内障の手術は、おもに嚢内摘出法、計画的嚢外摘出法、超音波吸引法が常用されている。近年、眼内レンズ挿入法が発達してきた。前房内に挿入する方法と後房内に挿入する方法があるが、まだ一般に臨床に応用されるまでには至っていない。
[桑原安治]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…また,これらの悪性腫瘍は,白血病よりも遅れて被爆後13年目以降に発症率の増加がしだいに明らかとなっている。 白内障も被爆との関係の明らかな疾病で,とくに40レム以上の放射線被曝を受けた人々(爆心地から1.6~1.8km以内)に高率に出現が認められている。そのほか,胎児期に被爆した人々にみられる小頭症および知能障害が,爆心地から1.2km以内,胎齢18週未満,ことに3~17週での被爆で認められている。…
※「白内障」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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