白山(読み)はくさん

精選版 日本国語大辞典 「白山」の意味・読み・例文・類語

はく‐さん【白山】

[一] 石川岐阜県境にある火山トロイデ両白山地にあり、白山火山帯の主峰。白山神社・白山比咩(しらやまひめ)神社奥院があり、古くから信仰の山として知られる。富士山立山とともに日本三名山の一つ。標高二七〇二メートル。しらやま。
[二] 石川県南部の市。手取川上・中流域および下流扇状地大半を占める。北部はJR北陸本線が通じ、金沢市のベッドタウン化がすすむ。平成一七年(二〇〇五)、松任市と石川郡の七町村が合併して成立
[三] (白山神社があるところから呼ばれた) 東京都文京区中央部の地名。江戸時代、館林城主松平氏の下屋敷が置かれ、白山御殿と呼ばれた。のち一部に幕府の麻布御薬園が移され、明治八年(一八七五)に小石川植物園となる。
※高野本平家(13C前)一「其勢一千余騎、鵜川におしよせて、坊舎一宇も残さず焼はらふ。鵜河と云は白山(ハクサン)末寺なり」

しら‐やま【白山】

[一] 石川・岐阜県境にある白山(はくさん)古称
※古今(905‐914)羇旅・四一四「きえはつる時しなければこしぢなるしら山のなは雪にぞありける〈凡河内躬恒〉」

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デジタル大辞泉 「白山」の意味・読み・例文・類語

はく‐さん【白山】

岐阜・石川両県にまたがる火山。最高峰は御前峰ごぜんみねの標高2702メートル。古くから信仰の対象とされ、富士山立山たてやまとともに日本三名山の一。しらやま。
石川県南東部にある市。白山国立公園の山岳部から日本海まで、多様な地形が広がる。平成17年(2005)2月に松任まっとう市、美川町、鶴来つるぎ町、河内村、吉野谷村、鳥越村、尾口村、白峰村が合併して成立。人口11.0万(2010)。

しら‐やま【白山】

白山はくさん」の古称。[歌枕]
「よそにのみ恋ひやわたらむ―の雪みるべくもあらぬわが身は」〈古今・離別〉

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日本歴史地名大系 「白山」の解説

白山
はくさん

最高峰である御前ごぜん(二七〇二・二メートル)、および大汝おおなんじ(二六八四メートル)けんヶ峰(二六七七メートル)の三峰からなる主頂部と、南方のべつ(二三九九・四メートル、小白山ともいう)さんノ峰(二一二八メートル)、西方の白山釈迦はくさんしやか(二〇五三・二メートル)などを合せた総称。主峰三峰を白山三峰、これに別山・三ノ峰を加えて白山五峰というよび方もある。山頂は県南東部、岐阜県境に位置し、山域は白峰しらみね村・尾口おくち村、岐阜県白川しらかわ村・荘川しようかわ村・白鳥しろとり町、福井県大野市・勝山市などにまたがる。白山山系は南方に続く能郷白のうごはく(一六一七・三メートル、岐阜・福井県境)山系とともに両白りようはく山地を構成する。手取川水系・しよう川水系の分水嶺であり、山系南部は九頭竜くずりゆう川や長良ながら川の水源となっている。山頂付近では冬季の積雪が一〇メートルにも達し、残雪も多く、古称「しらやま」ともども四季を通じて山頂が白く遠望されることが山名の由来である(「色葉字類抄」など)。古くから信仰の対象となり、とくに手取川流域の加賀、九頭竜川流域の越前、長良川流域の美濃に生れた信仰は仏教や道教の影響を受けながら山岳信仰として展開し、平安時代の初期までには各国(各流域)ごとの信仰拠点として加賀馬場・越前馬場・美濃馬場のいわゆる三馬場が形成された(白山之記)。加賀は白山本宮白山はくさん(現鶴来町)、越前は白山中宮平泉へいせん(現勝山市)、美濃は白山本地中宮長滝ちようりゆう(現白鳥町)が各馬場の中核となり、それぞれから白山の頂上(禅頂・禅定ともいう)を目指す登拝路、白山本道(白山禅定道ともいう)が開かれた。白山信仰の隆盛に伴って当山は富士山・たて山とともに日本三霊山・三名山の一つに数えられている。

〔白山の自然〕

白山は最終氷期(ウルム氷期)の氷河活動による浸食作用を明確に確認できるわが国の南西限にあたる。このため当山より西ではみられなくなる、あるいはきわめて少なくなるという動・植物も多種あり、生物分布上からも重要な山である。山麓にはブナ林、中腹の亜高山帯にはダケカンバ、オオシラビソの林が広がり、山頂部の緩斜面ではハイマツやハクサンコザクラ、ハクサンボウフウ、ハクサンフウロなどの高山植物がみられる。また亜高山帯のダケカンバ林を中心に、ツキノワグマ、ニホンカモシカ(特別天然記念物)、ニホンザルなどの哺乳類やイヌワシなどの野鳥が多く生息する。昭和三七年(一九六二)石川・福井・岐阜・富山の四県にまたがる山域は白山国立公園に指定された。

白山
はくさん

白山(大山)火山帯東縁に位置し、大野郡白川しらかわ村・荘川しようかわ村、郡上ぐじよう白鳥しろとり町、福井県大野市、石川県石川郡白峰しらみね村・尾口おくち村にまたがる休火山。しよう川水系と手取てどり川水系の分水嶺をなし、白山から能郷白のうごはく(一六一七・三メートル)まで続く山系は両白りようはく山地と呼称される。頂上部は南から最高峰の御前ごぜん(二七〇二・二メートル)けんヶ峰(二六六〇メートル)大汝おおなんじ(二六八四メートル)と連立するが、古くから白山三峰とよばれるのは御前峰(本宮)と大汝峰(二宮)、白山の南に続くべつ(二三九九・四メートル、三宮)の三峰。白山は単一の成層火山ではなく、数十万年前に現白山の北部に溶岩が残る加賀室かがむろ火山の火山活動があり、長い浸食期を挟んで約一〇万年前頃古白山火山の活動があった。大汝峰はこの時期に形成され、さらに浸食期のあと約一万―二万年前新白山火山活動による成層火山帯が形成された。その後山頂部東側の大崩壊があり、西側の残峰が御前峰で、剣ヶ峰はその後の中央火口丘と考えられている。このときの溶岩流の末端部にかかる滝が白水しらみず滝である。有史時代の噴火は慶雲三年(七〇六)から万治二年(一六五九)まで一〇回余あった。一六世紀代に六回の記録があるが、みどりヶ池をはじめ一五の火口池は有史時代の噴火口と考えられている。

白山火山の基盤は北半が濃飛流紋岩類で、南半は中生代ジュラ紀から白亜紀にかけての手取層群が主体。基盤岩は標高二〇〇〇メートルより上までみられ、溶岩はあまり厚くない。別山は火山でなく手取層群の山で、地層の縞模様により四海波しかいなみ岳ともよばれる。白山は白山国立公園の中心をなし、生物分布上からも重要な山である。山麓はブナ林、中腹はダケカンバ、オオシラビソの林、山頂緩斜面はハイマツやハクサンボウフウなどの高山植物がある。

白山
はくさん

加茂市との境にあり、標高一〇一二・四メートル。北は神戸かんど山、南西は宝蔵ほうぞう山に連なる。この山を源流とする仙見せんみ川・能代のうだい川が北流し、谷を刻んだ奥地は峡谷美で知られる。頂上付近にあるさば池には、池水をかき回すと雷雨になるという伝説がある。中腹と頂上にはかつて薬師堂があったと伝え、山名も古くは薬師嶽あるいはおお峰といった。

寛延三年(一七五〇)の村松領各宗由緒帳(村松町役場蔵)慈光じこう寺の項に「奥之院薬師如来、銅像、弘法大師作、是当寺之地主仏ニ、上古開闢より此山ニ勧請致来り候」とある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山
はくさん

石川県岐阜県の県境にそびえる火山活火山で,常時観測火山両白山地の中心をなす。約 2000mの中生代の基盤上に御前峰(2702m),大汝峰(2684m),剣ヶ峰(2677m)が噴出し,白山はその総称。南方の別山,三ノ峰を加え白山五峰と称されることもある。山頂部に千蛇ヶ池,翠ヶ池などの火口湖があり,南に溶岩によって形成された弥陀ヶ原がある。周囲には石川県,福井県,岐阜県の 3県をまたぐ大日ヶ岳経ヶ岳などの古い火山と,同時代の大日山,戸室山などがあり,これら白山火山系の火山形成の最後に白山が誕生したとされている。奈良時代の僧泰澄が開山したと伝えられ,富士山立山とともに山岳霊場としても知られ,加賀,越前,美濃から参詣道が開かれて参拝者を集めてきた。「越の白山(しらやま)」として詩歌にも登場する。明治期から白山比咩神社の社領となり,山頂に奥宮がある。山腹には中生代の植物化石が豊富でケイ化木群が見られ,「手取川流域の珪化木産地」として国の天然記念物に指定されている。温泉が多く,手取川支流の尾添川の上流に国の特別天然記念物「岩間の噴泉塔群」がある。ツキノワグマニホンカモシカニホンザルイヌワシライチョウなどが生息し,ブナの天然林,クロユリの群落やハクサンの名を冠する多種の高山植物が見られる。白山国立公園に属する。

白山
はくさん

三重県中部,津市中部にある旧町域。布引山地南東麓にある。 1955年家城町と川口村,大三村,倭村,八ツ山村の4村が合体して白山町が成立。 2006年津市,久居市,河芸町,芸濃町,美里村,安濃町,香良洲町,一志町,美杉村の2市5町2村と合体,津市となった。地名は氏神の白山神社にちなむ。大部分は山地だが,雲出川中流域の平地は一志米と呼ばれる酒米の産地。肉牛飼育も行なわれる。中心地区の家城 (いえき) は雲出川上流の渓谷,家城ラインへの入口。白山比 咩神社 (しろやまひめじんじゃ) ,成願寺 (国の重要文化財の阿弥陀如来倚像などを所蔵) ,常福寺 (国の重要文化財の木造千手観音立像を所蔵) などがある。東部にはゴルフ場が多く,北西部は青山高原で別荘地や航空自衛隊ナイキ基地などがあり,一帯は室生赤目青山国定公園に属する。

白山
はくさん

東京都文京区中部の文教・住宅地区。山手台地に属する白山台を占め,江戸時代は武家屋敷地。江戸幕府の薬草園,小石川薬園跡は小石川植物園となり,広大な敷地に数千種に及ぶ植物が集められている。ほかに東洋大学や,地名の由来となった白山神社がある。都営地下鉄三田線白山駅がある。

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百科事典マイペディア 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山【はくさん】

石川県南端,岐阜県との境にある活火山。両白山地の上に噴出した溶岩円頂丘で,大汝峰(2684m),剣ヶ峰(2677m),御前峰(最高峰,2702m)からなり,南に別山(2399m)が続く。地質は手取層群を基盤とする安山岩。西斜面は緩傾斜で,登山口も石川県側に多い。古来,山岳信仰の対象とされ,9世紀ごろまでには白山信仰の三馬場が形成され,のち本地垂迹説による伝承が中心となり,泰澄による開山が強調された。白山国立公園に属し,日本百名山にも選ばれている。岐阜県側山麓の地獄谷などでは現在でも噴気が上がり,気象庁が常時観測している。
→関連項目石川[県]修験道白川[村]白峰[村]白山比【め】神社長滝寺手取川

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「白山」の解説

白山
はくさん

古くは「しらやま」とも。石川県白山市と福井県大野市・勝山市,岐阜県大野郡・郡上(ぐじょう)市にまたがる火山帯。最高峰の御前(ごぜん)峰(標高2702m)・大汝(おおなんじ)峰(2684m)・剣ケ峰(2677m)の3峰(白山三峰)と,南方の別山(べっさん)(2399m)・三ノ峰(2128m)などからなり,白山はその総称。石川県の手取川,福井県の九頭竜(くずりゅう)川,岐阜県の長良川の水源で,富士山・立山とともに日本三霊山の一つとして信仰されてきた。

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世界大百科事典 第2版 「白山」の意味・わかりやすい解説

はくさん【白山】

石川,岐阜,福井の3県にまたがる両白山地にあり,第四紀後半に活動した火山。山名は,最高峰の御前峰(ごぜんみね)(2702m)のほか大汝(おおなんじ)峰(2684m),剣ヶ峰(2680m)の3峰に分かれる主頂部と,南方の別山(べつさん)(2399m)および三ノ峰(2128m),西方の白山釈迦岳(2053m)などを合わせた総称である。山頂近くでは冬季に積雪10mに達し,残雪が多いため白山の称が生まれた。

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事典 日本の地域遺産 「白山」の解説

白山

(石川県;富山県;岐阜県;福井県)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「白山」の解説

白山
(通称)
しらやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
傾城白山禅定
初演
宝永1.1(京・万太夫座)

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事典・日本の観光資源 「白山」の解説

白山

(香川県木田郡三木町)
香川のみどり100選」指定の観光名所。

白山

(石川県・福井県・岐阜県)
日本百名山」指定の観光名所。

白山

(石川県・岐阜県)
日本三名山」指定の観光名所。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「白山」の解説

白山(はくさん)

ビーラー・ホラ

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世界大百科事典内の白山の言及

【権現】より

…院政期,上皇はじめ公家貴族の参詣で脚光をあびた熊野は早玉宮・結宮を合して両所権現,家津御子を入れて熊野三所権現と称し,眷属神である五所王子・四所宮を合して十二所権現とも呼んだ。加賀白山では奈良朝初め泰澄により霊場が開かれ,その主神を白山妙理権現と称し,伊豆箱根では同じころ僧満願が僧形・俗形・女形の神体を感得して三所権現と称し社にまつり走湯権現ともいわれ,日光山では勝道が平安朝に滝尾権現を感得し,日吉山王でも大宮・二宮・八王子・客人・十禅師・三宮・大行事等多数の祭神に一々権現号を付し,醍醐寺の鎮守清滝明神は密教の善女竜王にほかならないが,権現の名称で親しまれていた。 以上に見るように,総体に修験者が信仰する山岳中心の霊場には権現号が多く,そこにはひときわ祭神の強力な霊験機能を誇示しようとする意識が働き,律令制の下で《延喜式》に規定された名神から来たと思われる明神の号への対抗が考えられるが,いずれの号をも称する祭神は多かった。…

【泰澄】より

…越(こし)の大徳,神融禅師,泰澄和尚とも号する。飛鉢の術を使う能登島出身の臥(ふせり)行者と出羽の船頭であった浄定(きよさだ)行者を弟子とし,霊夢の導きで717年(養老1)に白山に登拝して初めて白山三峰の神を明らかにしたとされる,越前の越知山(おちさん)(現,福井県朝日町)の修行者である。伝説上の人物であるが,本地垂迹説にもとづく事績を詳記する《泰澄和尚伝記》がすでに10世紀に成立しているので,かつては奈良時代に実在していた人物で伝記どおりの経歴を事実とする考えが強かった。…

※「白山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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