白血球(読み)はっけっきゅう

精選版 日本国語大辞典 「白血球」の意味・読み・例文・類語

はっ‐けっきゅう ハクケッキウ【白血球】

〘名〙 血球の一つ。呼気色素をもたない有核細胞総称。広く動物に分布している。発生および顆粒の染色性から脊椎動物では、リンパ球単核白血球好中性白血球・好エオジン性白血球・好塩基性白血球などに分類し、骨髄脾臓リンパ節で生成される。食作用免疫作用などの生体防御が主な機能である。白血球数の分布は動物により異なり、ヒトでは一立方ミリメートル中五〇〇〇~九〇〇〇だが、いろいろな環境変化によって変動しやすい。〔医語類聚(1872)〕

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デジタル大辞泉 「白血球」の意味・読み・例文・類語

はっ‐けっきゅう〔ハクケツキウ〕【白血球】

血液を構成する成分の一。骨髄リンパ節などでつくられ、形は不定で核があり、生体防御関与顆粒性かりゅうせい好酸球好中球好塩基球などと、無顆粒性のリンパ球単球などに分けられる。顆粒白血球と単球は遊走性があり、食作用によって侵入した細菌異物などを消化分解する。リンパ球はその細菌などの抗原に対して抗体をつくり、免疫作用をもつ。WBC(white blood cell)。

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百科事典マイペディア 「白血球」の意味・わかりやすい解説

白血球【はっけっきゅう】

血液の有形成分の一つ。赤血球の対。ヘモグロビンを持たず白く見えるためこの名がある。有核細胞で,細胞質内の顆粒(かりゅう)の有無により顆粒細胞と無顆粒細胞に大別される。顆粒細胞には,顆粒の色素に対する染色性により,好中球(中性好性白血球),好酸球(酸性好性またはエオジン好性白血球),好塩基球(塩基好性白血球)の3種がある。いずれも円形またはそれに近い形で,赤血球よりやや大きく,径10〜16μm。無顆粒細胞にはリンパ球と単球があるが,狭義の白血球にはリンパ球は含めない。単球は白血球中最大で,円形に近いものも不定形のものもあるが,径15〜20μm。赤血球を含むすべての血球は骨髄で造られ,リンパ球の一部は胸腺で成熟する。寿命はいずれも赤血球より短く,2週間以内。細菌などに対する食作用は好中球と単球で著しく,リンパ球と好塩基球には欠如する。正常な成人の白血球数は,血液1mm3中4000〜1万(平均約7000)。各種白血球の比率は,好中球60〜70%,リンパ球20〜30%,その他10%以下で特に好塩基球はきわめて少ない。白血球数の病的な増減,各種白血球の比率の変動は診断の重要な手掛りになる。
→関連項目炎症血球造血幹細胞移植ソリブジン伝染性単核症白血球減少症白血球増加症白血病マクロファージ有機スズ(錫)化合物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白血球」の意味・わかりやすい解説

白血球
はっけっきゅう

血液中に含まれる有形成分の一つ。白血球の数は血液1立方ミリメートル当り6000~8000個で、赤血球数の500ないし1000分の1ほどである。しかし、その種類は豊富で、原形質内に顆粒(かりゅう)をもった顆粒白血球として中性好性、酸好性、塩基好性白血球があり、無顆粒白血球としてリンパ球、単核細胞がある。そのうち、中性好性白血球(好中球)が全体の約60%、リンパ球が30%を占める。白血球の働きは生体の防御作用にある。その作用の第一は、侵入した細菌、異物などを貪食(どんしょく)することである。このため、白血球は目的の場所までアメーバ運動によって到達しなければならない。この性質を遊走性といい、中性好性白血球がとくに優れている。一方、単核細胞は遊走性は鈍いが、細菌を貪食する力は中性好性白血球の10倍もある。したがって、前者は急性、後者は慢性感染のときによく増えるという特徴がある。第二の白血球の働きは、免疫による生体の防御作用である。これはリンパ球の働きによる。そのうちTリンパ球(T細胞)とNK細胞は細胞免疫によって、直接侵入した外敵やウイルス感染した細胞を攻撃する。一方、Bリンパ球(B細胞)は免疫グロブリンをつくることによって、細菌、毒素などの作用を無力化する。免疫グロブリンにはIgM, IgG, IgA, IgD, IgEの5種類がある。このように、白血球は生体を防衛するうえでたいせつな成分であるから、白血球数が1立方ミリメートル当り5000以下になると危険な状態となる。とくに、顆粒白血球減少症の場合、2000以下となると身体の抵抗が極度に衰え、死亡率が高くなる。白血球は、血管内からどんどん組織に出ていくため、その寿命を正確に測定することは困難であるが、一般には、顆粒白血球で10日前後、リンパ球の大部分は100~200日、一部は3~4日と推定されている。

[本田良行]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白血球」の意味・わかりやすい解説

白血球
はっけっきゅう
leukocyte

血液の細胞成分の一つ。白色に見えるためにこの名がある。骨髄に由来する顆粒球と単球,リンパ組織に由来するリンパ球の3種がある。顆粒球はさらに好中球,好酸球,好塩基球に分れ,外界から体内に侵入する細菌や異物に対して,食作用により防御の役割を果している。リンパ球は大,小リンパ球またはB,T細胞に分れ,抗体を作り出す働きによって免疫に重要な役割を果している。3者の割合は,顆粒球 60~70%,リンパ球 20~30%,単球5%。成人の白血球総数は,血液 1mm3あたり 5000~8000である。

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世界大百科事典 第2版 「白血球」の意味・わかりやすい解説

はっけっきゅう【白血球 leucocyte】

白血球とは赤血球に対比した呼称で,呼吸色素をもたない血球の総称である。多くの白血球はその胞体内に顆粒(かりゆう)をもち,その染色性から好酸性,好塩基性,ヘテロフィルおよび好中性白血球と呼ばれている。無脊椎動物の白血球は,脊椎動物のそれらと同じく貪食能をもち,胞体内の顆粒は個体防御機構になんらかの形で役だっていると考えられている。無脊椎動物では白血球は間葉組織からランダムに産生され,消滅すると考えられる。

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栄養・生化学辞典 「白血球」の解説

白血球

 血球のうち,赤血球と血小板を除く細胞.核を有する.リンパ球などが含まれる.

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世界大百科事典内の白血球の言及

【炎症】より

…1793年J.ハンター(スコットランドの外科医)は,炎症とは病気ではなく,個体に有益な効果を起こすための反応〈生体防御反応〉であるという考えを導入した。コーンハイムJulius Cohnheim(1839‐84)は,炎症の起こる経過をカエルの腸間膜を用いて顕微鏡で観察し,炎症の初めに血管が拡張し,次いで血液の流れが変化し,そして白血球や血清が血管からしみ出る(滲出という)ことを記載し,炎症の実験的研究の口火を切った。この観察は現在でも確認されている重要な知見であった。…

【化膿】より

…組織の損傷部に多量の好中球が集まり,組織の融解が起こり,局所に濃厚な液を貯留することをいう。この濃厚な滲出液を膿(うみ)といい,その内容は,多量の白血球,生菌や死菌,繊維素,液性成分,細菌,組織や白血球の崩壊産物,それに由来するコレステロール,レシチンなどの脂質,多量のDNAから成る。化膿の原因は細菌感染が最も多いが,白血球の走化をひき起こすような化学物質によっても無菌的な化膿が起こる。…

【血球】より

…無脊椎動物の血球は一定の細胞回転をとらずランダムに産生されるが,一部の進化した動物群では脊椎動物の造血に類似した細胞回転のあることが知られている。鳥類までの脊椎動物の血球は,最も未分化な円口目メクラウナギ類を除き,赤血球,リンパ球と顆粒(かりゆう)球(この二つを合わせて白血球ともいう)および栓球の4種類が区別される。形態学的に,これらの動物では赤血球と栓球はともに有核細胞で,ともに血管内で産生される。…

【膿瘍】より

…主として化膿性の細菌(ブドウ球菌,連鎖球菌,肺炎双球菌,髄膜炎菌,リン菌)の感染により生ずる炎症である。初期は白血球のうちの好中球の集まったものであるが,しだいに組織の融解壊死を伴って大きくなる。このときのうみの成分は好中球のみならず壊死に陥った組織や死滅した細菌および滲出液から成っている。…

【白血病】より

…認知すべき原因もなく白血球系のある細胞が無制限に増殖し,これら増殖した白血球が血液中に出現ないし増加する病気。血液の悪性腫瘍ともいうべき病気である。…

※「白血球」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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