びゃく‐え【白衣】
〘名〙 (「びゃく」「え」は、それぞれ「白」「衣」の
呉音)
※日本往生極楽記(983‐987頃)春素「其使禅僧一人。童子一人。共着二白衣一」
② 白小袖に
指貫(さしぬき)または袴などだけを着て、直衣、素襖
(すおう)、
直垂(ひたたれ)、肩衣
(かたぎぬ)などの
上着を着けない下着姿。
※
源平盛衰記(14C前)一三「大口許に白衣
(ビャクエ)にて、
長押に尻懸」
③
法師が
墨染の衣を着なかったり、
武士が袴を着けずにいたりするなど
非礼な服装。転じて、無礼・非礼をいう
俗語。
※発心集(1216頃か)一「白衣(ビャクヱ)にてあしださしはきをりけるままに、衣なんどだにきず」
④ (インドでは
俗人は多く白の衣を着ていたところから) 仏語。俗人のこと。
僧侶が
黒衣(墨染の衣)を着けるのに対していう。はくえ。
しろ‐きぬ【白衣】
〘名〙 (「しろぎぬ」とも)
① 白い衣。染めてない衣。びゃくえ。
白装束。
浄衣。
※栄花(1028‐92頃)
初花「
女房のしろきぬなど、この度は冬にて、
浮文・
固文・
唐綾など、すべていはんかたなし」
② 墨染の衣の僧に対して、俗人の称。
※
書紀(720)推古一七年四月(岩崎本院政期訓)「百済の僧道欣・恵彌、首
(このかみ)として、一十人
(とたり)、俗
(シロキヌ)人
(ひと)七十五人
(ななのちあまりのいつたり)、肥後国
(ひのくに)の葦北津に泊れり」
はく‐い【白衣】
〘名〙
① 白い衣。
白色の衣服。特に、医師・化学者・
美容師などが着る白色の外衣。はくえ。びゃくえ。
※明衡往来(11C中か)上末「只有二黄花之艷一遂無二白衣之人一。閑寥之甚也」 〔礼記‐月令〕
② (官位のある人は色のある衣を着たところから) 中国で、無位無官の人。官位のない卑しい人。庶人。はくえ。〔漢書‐龔勝伝〕
はく‐え【白衣】
〘名〙
※謡曲・融(1430頃)「月宮殿の白衣(はくえ)の袖も」
※源平盛衰記(14C前)一一「帰命頂礼大慈大悲証誠権現、白衣(ハクエ)の弟子平重盛驚奉申入心中の旨趣を聞召入しめ給へ」
びゃく‐い【白衣】
※浄瑠璃・嫩㮤葉相生源氏(1773)五「ハイハイハイ白衣(ビャクイ)でおります御赦されませふ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「白衣」の意味・読み・例文・類語
びゃく‐え【白▽衣】
1 白色の衣服。はくい。
2 白小袖に指貫または袴をつけただけの姿。
「大口許りに―にて、長押に尻懸け」〈盛衰記・一三〉
3 僧が黒衣を着けずに白い下着だけでいること。転じて、礼にそむくこと。非礼。
「―ながらみな様へ、是から御礼をはらりと申し上げまする」〈古今役者物語〉
4 黒衣の僧に対して、俗人。在家。
「―の弟子、平重盛」〈盛衰記・一一〉
しろ‐きぬ【白▽衣】
《「しろぎぬ」とも》
1 染めてない白い衣服。びゃくえ。白装束。
「女房の―など、この度は冬にて、浮文、固文、織物、唐綾など、すべていはむかたなし」〈栄花・初花〉
2 墨染めの衣を着ている僧に対して、一般の人。俗人。
「家を出でし人も―も相まじはりてつかへ奉るに」〈続紀宣命〉
はく‐い【白衣】
1 白い衣服。特に、医師・化学者・美容師などが着る白色の外衣。びゃくえ。
2 ⇒びゃくえ(白衣)
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
普及版 字通
「白衣」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の白衣の言及
【朝鮮服】より
… 一方,この時期は朝鮮における服飾の伝統が新しく生み出された時期でもあり,15世紀初めに伝統衣装のシンボル的存在である,かぶりものとしての笠(カッ)が創成され,袍はツルマギ以外に〈帖裏〉(天翼),〈道袍〉〈氅衣(しようい)〉などの宋制の深衣から発展したさまざまの袍服が士大夫社会に流行した。また家庭における三年喪や王家の喪儀において,喪服として白衣の風習がこの期に定着して,朝鮮民族は〈白衣の民〉といわれたが,日常生活では色物も着ていたし,〈白衣の民〉という表現は多少誇張されたものであった。女性の伝統的な服装であるチマ・チョゴリも,16世紀末の壬辰・丁酉倭乱(文禄・慶長の役)後にチョゴリ(上衣)が短くなり,チマ(裳)が長くなって,現在のような乳房の上でチマをまきつけるようなチマ・チョゴリのスタイルになった。…
【制服】より
…しかも,これら制服は自分が所属している集団の象徴でもある。僧服,法服(裁判官や弁護士の制服),白衣(看護服),学生服,企業の制服などは特定の職業・職場を象徴するものであり,その服装そのものがあこがれ,ないしは嫌悪(恐れ)の対象となる。したがって服装そのものが人格化されている。…
※「白衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報