死体解剖保存法(1949)により,政令指定都市を管轄する都道府県知事は,その地域内において発生した伝染病,中毒または災害により死亡した疑いのある死体やその他死因の明らかでない死体の死因を明らかにさせるため,専門の医師を置くことができ,このような医師を監察医という。監察医は検案によっても死因を明らかにしえないときには解剖(行政解剖)することができる。ただし,変死体または変死の疑いのある死体では,刑事訴訟法229条の規定による検視のあとでなければ検案・解剖はできず,また鑑定のための解剖(司法解剖)が必要な場合には鑑定が優先する。監察医制度は当初,東京都(区部),横浜市,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,福岡市に設置された。京都市および福岡市では監察医制度は廃止され,また,その後に政令指定都市になった地域(仙台市,千葉市,川崎市など)でも行われていない。監察医制度は,人の死因を明らかにし,公衆衛生,個人の人権の擁護などに関して社会的にも重要な役割を果たすものであり,本来,全国的に普及されるべきものであろう。
執筆者:若杉 長英
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異常死体の検屍(けんし)や解剖を行う医師をいう。第二次世界大戦前、わが国では病理解剖、司法解剖、系統解剖は行われていたが、行政解剖は行われていなかった。戦後、日本の諸都市では浮浪者があふれ、伝染病が蔓延(まんえん)するなど著しい混乱と劣悪な社会環境を生じ、連合国最高司令部(GHQ)は公衆衛生の向上を図るため、死因不明の死体についてその死因を明らかにするための科学的な制度を早急に実施するよう政府に申し入れた。その結果、1947年(昭和22)1月に死因不明死体の死因調査に関する厚生省令が制定され、さらに49年6月に死体解剖保存法が制定されて主要都市に監察医制度が施行されるに至った。監察医はすべての異常死体の検案を行い、必要があれば剖検して死因の究明にあたっている。監察医の行う解剖を行政解剖と称している。また監察医には通常、法医学、病理学を専攻する医師が多い。
[船尾忠孝]
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…例えば,外因死(不慮の事故死・自殺・他殺など)と推定される死体や,外因死か病死か判断しがたい死体のほか,病死の可能性が高いが診療をまったく受けていないため生前の健康状態が医学的に明らかになっていないもの,診療を受けたことがあっても相当以前で,その後の病状が把握されていないもの,死因が不明のものなどである。これらの死体は監察医制度のしかれている地域では監察医が,その他の地域では一般臨床医が検死している。監察医は検死によって死因を明らかにしえない場合には解剖(行政解剖)することができるが,その他の地域ではほとんど解剖されないので,かなりの誤診があるものと推定されている。…
※「監察医」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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