せき‐しつ【石室】
[1] 〘名〙
① 岩の間にできた、または岩をうがって造った室(むろ)。いわむろ。いわや。
※文華秀麗集(818)中・和武蔵平録事五月訪幽人遺跡之作〈藤原冬嗣〉「風度松門寂、泉飛石室凄」
※俳諧・奥の
細道(1693‐94頃)雲岸寺「妙禅師の死関、法雲法師の石室をみるがごとし」 〔
史記‐
太史公自序〕
② 石またはコンクリートで造った建物の
部屋。また、その建物。〔和英語林集成(
初版)(1867)〕
※東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉三「園の中央に石室有り、
停車場と曰ふ。石を鏤めて而して柱と為し、石を磨ひて而して壁と為し、精巧美麗」
※性霊集‐五(835頃)与越州節度使求内外経書啓「石室難
レ見、貝葉
レ聞者、路険之所
レ致也」 〔張九齢‐酬趙二侍御使西軍贈両省旧僚之作詩〕
[2] 鎌倉時代から室町初期の
臨済宗の僧。諱
(いみな)は
善玖。
筑前(福岡県)の人。元に渡って
古林清茂に学び、帰朝後、
南禅寺・
天龍寺、のち足利基氏に請われて
円覚・建長両寺に住した。五山文学興隆の
基礎を築いた。永仁二~康応元=元中六年(
一二九四‐一三八九)
いし‐むろ【石室】
〘名〙
①
天然の
岩屋を利用したり、石を積んだりして造った
小屋。岩屋。
※
滑稽本・滑稽富士詣(1860‐61)四「登りつめたる
頂上の、やくし十二の石室に、着てはいとどものすごく」
②
岩石を積んで造った古代人の
墳墓、または
民間信仰の神をまつった石造りの室。せきしつ。
※山吹日記(古事類苑・礼式三〇)「家居のうしろの山際にいしむろあり。南に向ひて入口の高さ五尺余り、横三尺あまり、〈略〉うへもめぐりも、きはなき石もてたためる也」
③ 位牌(いはい)をおさめて、霊屋(たまや)の中に安置する石造りの厨子。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
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デジタル大辞泉
「石室」の意味・読み・例文・類語
せき‐しつ【石室】
1 岩のすき間を利用した天然のほら穴。また、石で造った部屋。いしむろ。
2 古墳の、石で壁や天井をつくった墓室。竪穴式石室と横穴式石室がある。
いし‐むろ【石室】
1 岩間の天然のむろ。また、岩石でつくったむろ。せきしつ。いわむろ。
2 石を積み、または岩を利用してつくった山小屋。
3 霊屋の中に安置する石造りの厨子。
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石室
せきしつ
自然石または加工石材を用いて積み上げた墓室をいう。内部に棺や副葬品を納める構築物であるが、小形の例では直接遺骸(いがい)を納めるなどの場合もある。日本古墳時代の石室には大別して2種がある。一は棺を安置したのちに、その周囲の四壁に主として割石(わりいし)などを積み、最後に上部に天井石を架する竪穴(たてあな)式石室であり、他は周囲三壁および天井をつくり、埋葬後に入口となる一壁を閉じる横穴式石室である。竪穴式石室はおもに4世紀から5世紀にかけてつくられ、横穴式石室は5世紀に大陸から伝えられて、その後6世紀以降に盛んにつくられた。のちには巨大な自然石使用石室、切石(きりいし)積みの精緻(せいち)な石室もつくられるようになる。九州を中心とする地域の装飾古墳はこの横穴式石室にみられ、その形態を継ぐ横穴にも及んでいる。
[伊藤玄三]
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普及版 字通
「石室」の読み・字形・画数・意味
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石室
せきしつ
墳墓の埋葬施設の一種で,石材を積んで造った室をいう。日本の古墳の場合,遺体を納めたのち上部をふさいでしまうものと,一方の壁あるいはその壁の一部を開けられるようにして外部とつないでいるものとの2種がある。前者を竪穴式石室,後者を横穴式石室という。後者は入口を閉鎖したあとからの追葬も可能である。石室の小さなもののなかには石棺と区別のつかないものもある。石積みの様子によって,名称の区分がつけられていて,各面を加工した石をきちんと積上げてあるのを切り石積みの石室,大小さまざまの石を一見乱雑に積んだものを乱石積み,割り石を積んだものを割り石積みなどという。
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せきしつ【石室】
石で作った室を意味するが,おもに埋葬施設をさすときに用いる。その場合,原則的には,遺体を直接入れる容器を〈棺〉,棺を収めるもので,単次葬用に作られ,大きさも棺によって規定されるものを〈槨(かく)〉,そして,棺とは直接関係しない広い空間と通路をもち,複数の棺(遺体)を順次追葬(複次葬)することのできるものを〈室〉と呼びわけるべきであるが,3者を厳密に区別することは困難な場合が少なくない。したがって,これらの用語は混用されることが多く,石室は火葬墓の蔵骨器や経塚の経筒を収納する石組みなどを呼ぶのにも用いられる。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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石室
せきしつ
古墳の内部構造で,棺を置く室
横穴式石室と竪穴式石室の2種がある。なお火葬墓の臓骨器を収容するための石造の構築物や経塚の経筒埋納の施設も石室と呼ばれる。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
石室
石を積んで作った部屋のことですが、多くの場合、古墳の埋葬施設[まいそうしせつ]を言います。死体をほうむる部屋や通路なども石室に含みます。
出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報
世界大百科事典内の石室の言及
【墳墓】より
…また,崖や斜面にうがった横穴(よこあな)やそれに続く墓室(中国後漢代の崖墓(がいぼ),日本古墳時代の横穴),垂直に掘り下げてから水平方向に掘った横穴(南ロシア青銅器時代の地下式横穴墓,宮崎・鹿児島県の地下式横穴),地下の坑道の壁面にうがった横穴(ローマの初期キリスト教徒の墓所であるカタコンベ)に納めることもある。石,塼(せん),木などで構築した墓室内に棺を納めることも多い(石室,塼室墓)。墓室の中にあって棺を包みもつ構造を槨(かく)という。…
※「石室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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