翻訳|sand
「しらす」「すばしり」などの「す」の語源が同じものであるかどうかは、やや問題が残る。それらには「洲」の字があてられる場合も多い。
岩石が自然の作用により砕けて細かくなったもの,またはその集合体の総称。近年では,砕石をさらに細かく人工的に砕いた人工砂,すなわち砕砂(さいさ)の製造が盛んになってきたので,前者をとくに天然砂と呼ぶようになった。粒径に対する定義はまちまちで,一般には5~2mm以下のものと認識されているが,国際土壌学会法に基づく土壌の粒径区分では2~0.2mmのものを粗砂,0.2~0.02mmのものを細砂としている。現在,骨材等に利用されている天然砂はほとんどが天然砂利と共存しており,砂利採取の乾式または湿式ふるい分け産物として回収される。産地すなわち堆積地によって,海砂,川砂(河川砂),陸砂(おかずな),山砂に区分されるが,ほかに花コウ岩風化部分,または風化堆積物から得られる砂,すなわち〈まさ〉または〈まさ土(ど)〉や,ダム堆積砂がある。天然砂利(砂利・砂混合物としての)における砂含有率の平均は,河川および陸砂利で約30%,山砂利は約80%,海砂利は95%以上で,天然砂利総計の約50%(いずれも重量比)である。
砂の用途は,セメントまたはアスファルトコンクリート用細骨材,セメントモルタル用細骨材のほか,道路構築用目つぶし材,掘削跡の埋戻し用材料および地下埋設物等の保護充てん材,あるいは汚泥水のろ過材などであるが,細骨材として良質といわれるものは,良質の粗骨材とほぼ同条件の性状を具備していなければならない。この点,山砂は自然淘汰度が低いために球形率が悪く,泥分や脆弱(ぜいじやく)粒子を含むことが多いので,コンクリート用細骨材にはあまり適さない。また海砂は塩分を含むので,鉄筋コンクリート用細骨材として使用する場合は,十分なる洗浄・脱塩が必要である。同時に海砂は一般に細粒径のものが多く,かつ粒度分布の幅がせまい(単一粒度に近い)ので,他の砂との混合使用を要する場合が多い。日本における天然砂の生産および使用量は,1980年に約3億tであったが,河川砂の供給がほとんど期待できない今日では,天然砂の供給可能量は年を追うごとに低下するであろう。代替としては,海砂,砕砂,および砕石(玉石(たまいし)砕石を含む)工程で発生した細破砕物からの分級回収砂,ダム堆積砂,あるいはまさ土などが考えられる。しかし賦存量が最も豊富と思われる海砂は採取にあたっての漁業権との抵触問題,脱塩処理後の残留塩分と粒度の問題,砕砂についてはエネルギーの大量消費に係る生産コストの問題,分級回収砂では粒形の点で,ダム堆積砂は供給が間欠的になり,まさ土は不純物が多く,用途が限定されるなど,砂の需要に対する供給の前途はますます多難が予想されている。
→骨材 →砂利
執筆者:岩崎 孝
鳴き砂あるいは鳴り砂,英語ではsinging sand,musical sand,sonorous sandなどと呼ばれ,特異な発音特性を有する石英質の砂がある。自然条件では,激しい波浪や風の作用で砂粒が淘汰されて同じ場所に堆積し,土砂など異物が混入しないような海岸や砂漠でまれに形成される。この砂の上を歩いたり,棒などでつつくと,クックッとかブーというような大きい音を発するため,珍しい現象として古くから知られてきた。日本では宮城県気仙沼市大島の十八鳴(くぐなり)浜(九+九=十八),牡鹿半島の鳴(なら)浜や十八成浜,能登半島の泣(ごめ)き浜,丹後半島の琴引浜,島根県大田市の琴ヶ浜など,いずれも発音特性にちなんだ名前が残っている。中国の敦煌にある鳴沙山も,その名は砂が鳴く現象からきている。
砂が鳴くための物理的条件は,砂粒の表面がきわめてよく洗浄され,微粉状の物質が付着していないことである。きれいな砂粒の表面は摩擦係数が大きい。一方,鳴き砂の砂粒は花コウ岩や熱変成を受けた砂岩の風化物と考えられている。そのために,岩石破砕物にみられる鋭角状の扁平な粒子を含まず,しかも波浪や風によって円摩されているから,堆積状態にある砂層は,きわめて密なる充てん体を形成している。したがって,このような鳴き砂の砂層の上から棒などで力を加えると,砂層は著しい抵抗力を示し,十分力が加わったとき,広範囲の砂層がいっせいに運動する。この繰返しによる砂層の振動が音を発生する。
海浜の砂は河川や海の汚染の影響を受けやすく,かつては十数ヵ所も存在していた日本の鳴き砂の名所も,今では大部分が発音しなくなっている。原子力発電所や観光開発,道路工事などのために完全に消滅した場所も多い。前記の十八鳴浜,琴引浜および琴ヶ浜の3ヵ所のみが,かろうじて発音する。
執筆者:三輪 茂雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
地質学では粒径2ミリメートル~16分の1ミリメートルの岩片をいい、2ミリメートル以上の礫(れき)、および16分の1ミリメートル以下のシルトと区別する。この砂は海底または湖底の堆積(たいせき)物として、あるいは海岸砂丘や内陸乾燥地域の砂漠の風成堆積物として、地表や露頭にみられるものである。一方、土壌学で扱う砂とは、土壌生成過程にシルト、粘土分と分かれて残った粒子であって、国際土壌学会法ではその粒径を2~0.02ミリメートルと定めている。砂はさらに2~0.2ミリメートルを粗砂、0.2~0.02ミリメートルは細砂と区分される。風化に対する抵抗性の強い石英片を主とするほか、雲母(うんも)、角閃石(かくせんせき)、輝石、磁鉄鉱、火山ガラスなどが含まれている。低倍率の双眼顕微鏡下で、結晶体の特徴から鉱物を同定して土壌母材を推定したり、摩耗度や溶食の状態から風化度を判定したりすることができる。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]
建設に用いられる砂には河川砂、海砂などのほか、コンクリート用砕砂やコンクリート用高炉スラグ細骨材、人工軽量細骨材、パーライト砂、大理石などを粉砕した色砂(いろすな)などがある。河川砂・砕石はモルタルやコンクリートの骨材のほか、路盤材、道路や建物の建設の際の埋戻し材などに用いられる。人工軽量細骨材は軽量のモルタルやコンクリートを製造するのに用いる。パーライト砂を用いて気泡を混入すると比重1.0以下のモルタルをつくることができる。またカラーセメントに色砂を用いて色モルタルをつくり、洗い出しや研(と)ぎ出しを行って人造大理石をつくることができる。色砂と着色樹脂を用いたモルタルは高級人造石として使われている。
[笠井芳夫]
礫(れき)より小さく,泥より大きな粒度2~1/16 mm の岩片あるいは鉱物片.一般に,石英,白雲母,長石,輝石,角せん石,黒雲母,磁鉄鉱,チタン鉄鉱からなる.石英の多いものを石英砂,有色鉱物の多いものを黒砂,海緑石の多いものを緑砂という.堆積場所によって,海砂,川砂,山砂,砂丘砂,火山砂などに区別される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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