精選版 日本国語大辞典 「研究所」の意味・読み・例文・類語
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[研究所の歴史と多様性]
研究所は,公設の研究所や民間の営利,非営利の研究所を指して言うことが多い。このほかに,民間企業や大学に付属する研究所もある。研究所はその設置主体にかかわらず,一般的に特定の研究分野の研究,または特定の目的のための研究を実施するために設置される。
ポルトガルのエンリケ航海王子(ポルトガル)は,15世紀初頭に造船,天体観測,航海術などを研究させるための施設を1ヵ所に集めて建設するとともに,航海や探検を援助し,大航海時代の礎となったと言われている。エンリケ航海王子が開いた研究施設は,歴史上初の研究所であると言われている。17世紀以降は欧州各地に科学分野のアカデミーが設立されるようになる。アカデミーは科学愛好家の集まりであったが,大学における科学の教育研究が本格化するまでは,科学研究の交流の場であるとともに人材育成や研究のための施設としての性格も有していた。18世紀末にはロンドン王立協会の会員が中心になって科学の研究,教育のための専門施設である王立研究所(イギリス)(Royal Institute(イギリス))が設立された。このように,研究を実施することを目的に設置された施設としての研究所は,大学とは別のものとして発展してきた。
日本では,明治期に政府直営の衛生試験所,気象台,天文台,電気試験所,農事試験所,工業試験所等が設置された。これらは国立研究機関の源流ではあるが,研究所としては未熟な段階にとどまった。日本で最初の本格的な研究所は,1917年(大正6)設立の理化学研究所(日本)(理研(日本))であると言われる。理研では自然科学分野の基礎研究,応用研究が行われ,研究成果の産業化も行った。関連企業も多く,理研コンツェルン(日本)を形成した。このため,第2次世界大戦後には財閥解体の対象となり,理研本体も解体されたが,1958年(昭和33)に特殊法人として新たに設置され,その後独立行政法人,さらに国立研究開発法人に移行し今日に至っている。
日本では,公設の研究所を公設試験研究機関(日本)と言う。そのうち都道府県等が設置する研究所は,地域産業の振興や行政支援のため,工業,農業,環境衛生等の分野の研究所が設置されている。国立の研究所は医学系を中心に,産業,農林水産業,建設,通信,その他の行政分野にほぼ対応する形で,国の直営研究機関もしくは国立研究開発法人として設置されている。なお文部科学省には,基礎研究分野の研究所や航空宇宙,海洋,原子力等の国家プロジェクトの推進のための研究所が設置されているほか,大学共同利用機関と呼ばれる形態の基礎研究分野の研究所がある。大学共同利用機関(日本)は固有の研究活動のほか,大規模施設や研究基盤を有し,大学関係者等の利用に供する役割を担っている。日本では,大学共同利用機関の多くが国立大学の附置研究所等が独立して設置され,かつては国立大学と同じ財源(国立学校特別会計)で運営されていたことから,伝統的に産学官の区別では大学部門に分類されている。ただし,海外の同等の機関は公設研究部門に分類される。
[国立大学の研究所]
国立大学は,かつて附置研究所と分類される研究所を持っていた。これは学部等と同等の部局として,予算上も一定の裏付けをもって設置されていた。学科相当の研究所は研究施設と呼ばれ,特定の学部に附属する学部附属研究施設,大学直轄の学内共同利用研究施設,全国共同利用研究施設などの種類があった。研究センター(日本)と呼ばれる組織の多くは,制度上は研究施設に分類されていた。しかし,2004年(平成16)の国立大学の法人化により,国立大学の附置研究所,研究施設の設置・改廃等は法人の自由裁量に任されることになり,従来の附置研究所,研究施設の運営基盤は脆弱になった。一方,大学の独自の判断で研究センター,研究ユニットなどと呼ぶ研究組織を設置することが可能になり,各大学が重点的に資源を投入し,研究拠点の形成を目指すことが可能になった。また多くの大学では,一定規模の教員が集積している場合や,大型の外部資金を受け入れた場合に研究センター等を名乗ることを認めるようになった。これらは,組織の永続性を保証するわけではないが,研究活動の可視性を高め,研究活動の進展に応じて柔軟に組織化する手段となった。
なお,国立大学法人化以降,運営基盤が脆弱化していた国立大学の全国共同利用研究所・研究施設の制度は2009年で廃止され,新たに「共同利用・共同研究拠点(日本)」の制度が発足した。共同利用・共同研究拠点は,従来の国立大学の全国共同利用研究所・研究施設の枠を超えて,さらには公私立大学を含めた大学の枠を超えて大型の研究設備や大量の資料・データ等を全国の研究者が共同利用し,共同研究する制度として発足したものである。また,大学を超えて連携するネットワーク型共同利用・共同研究拠点も可能になった。共同利用・共同研究拠点となるためには文部科学大臣の認定を受ける必要があるが,認定は期限付きである。このような制度変化の結果,国立大学の研究所,研究センターは私立大学のそれらと似たものになった。アメリカ合衆国では,学部等とは別に組織される研究組織を組織的研究単位(アメリカ)(Organized Research Unit(アメリカ))と呼ぶが,日本の大学における研究組織も似たものになってきたと言える。
著者: 小林信一
参考文献: 日本科学史学会編『日本科学技術史大系 第3巻(通史第3)』第一法規出版,1967.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
[1864~1915]ドイツの精神医学者。クレペリンのもとで研究に従事。1906年、記憶障害に始まって認知機能が急速に低下し、発症から約10年で死亡に至った50代女性患者の症例を報告。クレペリンによっ...
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