中国古代の水力利用の臼。脱穀用のつき臼と製粉用のすり臼の総称で,動力には水車が使われた。すでに漢代の文献に水を利用した碓,磨の類が現れるが,唐・宋時代に碾磑の成語が広く使用され,元・明以降には古語となった。その語義を説くものとして〈養老令〉の平安初期の注〈令釈〉は〈水碓(みずからうす)也。米を作るを碾といい,石を以て碓を為り木を以て杵(きね)を為る。麵(こむぎこ)を作るを磑といい,臼杵並びに石を以て作る也〉(〈職員令〉主税寮条集解引)とし,《唐律疏議》の元代の〈釈文〉は〈碾は磨上の転石也,磑は磨下の定石也〉(〈名例律〉以贓入罪条)とするが,いずれも稀用の2字をなんとか注釈しようとしたもので,実際は碾,磑,碓,磨はしばしば互用連用された。〈唐令〉雑令に〈凡そ水の灌漑あるは,碾磑のともに利を争うを得ざれ〉(《六典》巻七)という趣旨の規定があり,碾磑が耕地の灌漑を妨げるのを禁じており,宋の〈慶元河渠令〉にも〈その碾磑之類,水を壅(ふさ)ぎ公私において害あるものはこれを除け〉(《慶元条法事類》巻四十九)と定める。当時貴顕の営利を目的とする碾磑設置が流行し,農民の灌漑を妨害するに至ったのが立法の背景をなす。10世紀の〈敦煌文書〉には,碾磑を保有する磑戸が寺院から穀麦を支給され麵を納入していた例が見える。碾磑の盛行は,粉食の流行や小麦作の増大を前提に,製粉業の営利企業化がもたらした現象であった。
執筆者:池田 温
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
字通「碾」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ロータリーカーンは西洋で完成された形態で,シルクロードを経て,小麦とともに中国へ伝えられたというのが定説になっているが,漢代の中国には,ロータリーカーンに属する石製の挽き臼,すなわち石磨臼(単に石磨とも。中国では碾磑(てんがい)と呼ぶ)が広く普及していた。非常に整った姿であり,これは後述の茶磨(ちやうす)や,韓国に現存する石磨などとつながる東洋独特のもので,主に上流階級の間でつかわれた。…
…北方ではアワ,キビが主食であったことはもとよりであったが,稲も漕運により南方より運ばれ米食が普及した。碾磑(てんがい)という水車を利用した石臼による製粉法もこの時代いっそう発達し,粉食の普及に輪をかけた。胡餅のほか,酪(乳酸飲料),酥(クリーム),醍醐(ヨーグルト),乳腐(チーズ)などがもてはやされた。…
※「碾磑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新