地磁気の強度や方向が突発的に大きく変動する現象。地球に向かう高速の太陽コロナ爆発現象(CME)が発生すると、約2日後に強い磁気嵐が発生することが多く、太陽活動極大期に現れる磁気嵐の多くはこのタイプである。また、太陽のコロナ・ホールから流出する高速太陽風によって、太陽の回転とともに約27日の周期で現れる回帰性磁気嵐もみられ、太陽活動が低い時期に顕著となる。地磁気変動の直接の原因は電離層(電離圏)や磁気圏に流れる電流にあり、太陽活動の影響によって、磁気圏の内部で強い電流(電子や陽子を主体とする、高エネルギー荷電粒子の流れ)が発生することを示している。磁気嵐は地磁気水平成分の時間変化にみられる特徴から、「急始部」「初相」「主相」「終相」にわけられ、全体の継続時間は1~2日間である。CMEの前面に形成された衝撃波が磁気圏に衝突すると、磁気圏の圧縮に伴って東向きの電流が発生し、地磁気水平成分が急激に増大する急始部が観測され、数時間にわたり磁場が強まった状態が継続する(初相)。ついでCMEが太陽コロナから運んでくる磁場の南向き成分が強くなると、もともと北向きである地球磁場との「つなぎかえ(再結合)」が磁気圏の昼間側と夜側で発生することによって、太陽風エネルギーが効果的に磁気圏に侵入し、磁気圏の中に強い電流が発生して、磁気嵐の主相へと発達する。このとき赤道面には地球を取り巻く形で西向きの環赤道電流が流れ、日本のような低緯度帯では地磁気強度の減少が観測される。高緯度帯においては、磁気圏より電離層に強い電流が流入し、地磁気の激しい変動が現れると同時に、明るいオーロラが発生する。その後、太陽風磁場の南向き成分が減少するにつれて、磁気嵐は「終相」となって回復に向かう。磁気嵐は伝書鳩などの地磁気を感知している動物の行動に影響を与えるだけでなく、北米大陸などの高緯度帯では、大振幅の磁場変化に伴って長距離送電線に異常電流が流れて大規模な停電事故が発生したり、人工衛星に障害が発生することがある。したがって強い磁気嵐の予測は、「宇宙天気予報」の一環として重要視され、国際協力体制のもとに業務化されている。
[渡邉 堯・和田雅美]
『上出洋介著『オーロラと磁気嵐』(1982・東京大学出版会)』▽『斎藤尚生著『オーロラ・彗星・磁気嵐』(1988・共立出版)』
地磁気変動のうち汎世界的に起こる最も大きな変動で,継続時間1~2日の現象。太陽フレア(フレア)の発生から2~3日後に起こることが多い。フレアに伴って惑星間空間に放出された高速プラズマ流に磁気圏が包まれると起こる現象である。太陽の自転周期27日の再帰性を示す磁気あらしもある。これらは太陽風中の高速流に関連して生ずる。
フレアが発生すると,フレア領域のプラズマが急速に加速,膨張するため,前面に衝撃波を伴った高速プラズマ流が放出される。この衝撃波が磁気圏に衝突すると,磁気圏が圧縮され,この圧縮の効果として地磁気水平成分が増加する。これが磁気あらしの開始を示す急始変化である。衝撃波に続くプラズマ流は,通常の太陽風に比べ速度や密度が大きいため,急始変化の後,数時間ほど磁気圏が圧縮された状態が続く(初相)。高速プラズマ流に伴う磁場が地球に対して南向きの場合には,磁気圏へのエネルギー流入が効果的に行われ,中低緯度地域で水平成分の大きな減少が観測される(主相)。この時期には,極域では激しいオーロラ活動が起こり,極磁気あらしが発達する。中低緯度地域でみられる水平成分の減少は,オーロラ活動に伴って加速された荷電粒子が磁気圏内深く侵入し,西向きの赤道環電流を形成するためである。また赤道環電流の発達とともに,オーロラ活動領域は赤道側に広がる。例えば,観測史上で最大級の磁気あらしが起こった1958年2月11日には,長野県でオーロラが観測された。
執筆者:国分 征
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