神風号(読み)かみかぜごう

改訂新版 世界大百科事典 「神風号」の意味・わかりやすい解説

神風号 (かみかぜごう)

1937年朝日新聞社によって行われた東京~ロンドン連絡飛行の使用機。日本陸軍の試作司令部偵察機キ-15(制式名97式司令部偵察機)のうちの1機を改装のうえ購入したもの。イギリスジョージ6世戴冠たいかん)式を機に本機による訪欧飛行が計画され,37年4月6日,乗員飯沼正明塚越賢爾により立川飛行場を出発,全行程1万5357kmを94時間18分(実飛行時間は51時間19分)を要して4月10日最終目的地ロンドンのクロイドン飛行場に到着した。これは都市間連絡飛行の国際新記録であったばかりでなく,それまで低く見られていた日本の飛行機設計能力が世界的に認められる機縁となった。機体は全長8.5m,全幅12m,空冷750馬力のエンジン1基をもつ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神風号」の意味・わかりやすい解説

神風号
かみかぜごう

1937年(昭和12)東京―ロンドン間の連絡飛行で、国産機による国際記録を樹立した、国産の2人乗り高速通信連絡機。1930年代の航空機発展期に多くの記録飛行が行われたが、これもその一つで朝日新聞社が計画したものである。4月6日立川(東京)を出発し、10日(日本時間)ロンドン到着。1万5357キロメートルを94時間17分56秒(実飛行時間51時間19分23秒)で飛行した。乗員は操縦士飯沼(いいぬま)正明(1912―1941)、機関士塚越賢爾(けんじ)(1900―1943)の2名。型式は三菱雁(みつびしかりがね)型といい、神風名称は474万通の投票のなかから選ばれた。同型機はその後キ‐15九七式司令部偵察機として陸軍だけでなく海軍にも制式採用され、500機余り生産された。翼幅12メートル、全長8.5メートル、重量約2トン、550馬力エンジンを備え、最大時速480キロメートル、航続距離2400キロメートルであった。

[落合一夫]


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百科事典マイペディア 「神風号」の意味・わかりやすい解説

神風号【かみかぜごう】

1937年に朝日新聞社が行った東京〜ロンドン連絡飛行の使用機。日本陸軍の司令部偵察機キ-15を改装したもので,操縦士飯沼正明,機関士塚越賢爾により訪英親善飛行を行い,立川〜ロンドン間全行程1万5357kmを94時間17分56秒(飛行時間51時間19分23秒)で飛び,日本最初の国際記録を樹立した。機体は全長8.5m,全幅12m,空冷750馬力のエンジン1基をもっていた。
→関連項目飯沼正明

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世界大百科事典(旧版)内の神風号の言及

【航空】より

…このような状態を続けている間にしだいに独自の技術が育成され,35年ころには陸海軍の各種の軍用機で,欧米の水準に劣らぬ性能をもち,しかも操縦性が優れているなど,日本独特の長所をもった国産機が次々に出現した。37年,神風号が東京~ロンドン間を途中11着陸,94時間17分56秒で飛び国際記録を樹立したり,38年,航研機が1万1651kmを無着陸で飛び,周回航続距離の世界記録を樹立したのも,当時の技術水準の高さを物語っている。 一方,航空輸送の面では,1922年に大阪~徳島,大阪~高松間の運航を始めた日本航空輸送研究所などの先駆的活動に続いて,29年,日本航空輸送株式会社が政府の補助を受けて東京・大阪・福岡・蔚山・京城・平壌・大連間に本格的な旅客,貨物,郵便物の定期輸送を開始した。…

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