私塾(読み)しじゅく

精選版 日本国語大辞典 「私塾」の意味・読み・例文・類語

し‐じゅく【私塾】

〘名〙 私設の教育機関。江戸時代は主に儒学者洋学者が設けた。明治になると、洋学を主とした慶応義塾や津田塾は、それぞれ特色を持った私立学校として存続するが、他はおおむね学校制度に改編されて公立学校となった。現在では、学校制度の枠外にある学習塾、そろばん塾、書道塾などをいう。
※西洋聞見録(1869‐71)〈村田文夫〉前「学校二百五十ケ処、私塾一千五百ケ処」

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デジタル大辞泉 「私塾」の意味・読み・例文・類語

し‐じゅく【私塾】

私設の教育機関。江戸時代には主に儒学者・国学者・洋学者が開設し、重要な教育機関であった。明治の学制以降、洋学を教える慶応義塾など、私立学校として存続したものもある。現在は、書道塾・学習塾などの類。

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百科事典マイペディア 「私塾」の意味・わかりやすい解説

私塾【しじゅく】

近世より近代初期にかけて,民間の学者が自己の学問的立場に立って開設した民間学校(塾)。一般に寺子屋より高い程度の教育を施した。幕府,諸藩の学校(昌平坂学問所藩学)が未整備の段階では,私塾が正規の学問・教育の場として機能した。幕藩の統治政策に合致した諸学校が整備されると,私塾は公的学校の補完的存在として,あるいは新しい学問・教育の場となった。漢学咸宜園(かんぎえん)(広瀬淡窓),古義堂(伊藤仁斎),国学の鈴屋(すずのや)塾(本居宣長),洋学の適塾緒方洪庵),鳴滝塾シーボルト),慶応義塾(福沢諭吉),政治結社的私塾として松下村塾(吉田松陰)などが有名。

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大学事典 「私塾」の解説

私塾
しじゅく

江戸時代の学者・文人武芸者などが自宅を教場として開設した,学問・技芸の民間教育施設。手習塾(寺子屋)よりも高い程度の内容を教えた。学問を教える私塾のことを学問塾と呼ぶ場合もある。18世紀後半以後に普及した藩校などの組織的教育機関を除けば,江戸時代の学問教授は通常,私塾で行われた。中江藤樹の藤樹書院,伊藤仁斎の堀河塾,荻生徂徠の蘐園塾,細井平洲の嚶鳴館,菅茶山廉塾,広瀬淡窓の咸宜園,木下犀潭の韡村書屋などの漢学塾,シーボルトの鳴滝塾や緒方洪庵の適塾などの洋学塾が著名。幕末,民衆の向学熱が高まり,開設数は急増した。なお,私塾のうち幕府や藩に士官していた儒者などが幕藩から公認され,幕臣・藩士の子弟教育のために設けたものを家塾と呼ぶこともある。家塾では,幕藩から施設や修繕費用などの支給を受けていたものがあった。私塾の中には咸宜園のように明治時代になってもしばらく存続したもの,慶應義塾のように現代の私立大学にまで展開したもの,適塾のように大阪大学の母体とされるものがあるなど,現代日本の大学に大きな影響を残している。
著者: 冨岡勝

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世界大百科事典 第2版 「私塾」の意味・わかりやすい解説

しじゅく【私塾】

主として江戸時代の学問,武芸,その他いろいろの芸道に関する民間教育機関をいい,教育の対象となったのは成年である。私塾はいずれの場合も教師の自宅が教場となり,寺子屋と同様に教師と経営者とが同一人物で,これを塾主と呼ぶ。この点では教育者と経営者とが分離している郷学や藩校(藩学)のような学校とは異なっている。私塾では塾主の学派などにもとづき,特定の学派を標榜(ひようぼう)するものが多く,かつ塾主の学識と徳とを中心として共同学習する形態のものが多かった。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「私塾」の解説

私塾

正式社名「株式会社私塾」。英文社名「Shijuku Co., Ltd.」。サービス業。平成9年(1997)前身の「数学私塾」創業。同11年(1999)「有限会社私塾」設立。同12年(2000)株式会社化。本社は京都市中京区御幸町通六角下ル伊勢屋町。学習塾。医学部・東大・京大など難関大学の受験対策に特化した進学塾。京都・大阪・奈良に教室を展開。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「私塾」の意味・わかりやすい解説

私塾
しじゅく

私設の教育機関。江戸時代には有名な儒者などの開設した私塾が教育機関として重要な役割を果した。江戸時代から明治維新にかけて,漢学塾,洋学塾など多くの私塾が設けられたが,近代学校制度の発達とともに改編され,そのなかに吸収された。

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防府市歴史用語集 「私塾」の解説

私塾

 江戸時代に藩が行ったものではなく、個人が開いて、運営していた勉強の場です。藩校[はんこう]や郷校[ごうこう]に比べると、庶民も多く利用していたようです。

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世界大百科事典内の私塾の言及

【学校】より

…これは,市井の学者による批判を受けながらも,幕末の国学,蘭学の高揚を迎えるまで権威を保ち続けた。江戸時代の学校としては,このほか,藩校(藩黌,藩学),郷学私塾,寺子屋などがあり,戦乱のない社会で,それぞれ発展した。藩校は各藩が藩体制強化のため武士の子弟に儒学と武道を教授することを目的として設置された。…

【書堂】より

…朝鮮で初学者のための入門的な教育を行う私塾をいう。李朝中期以後に発達し全国に普及するが,起源は遠く高句麗の扃堂(けいどう),高麗の郷先生,高麗末・李朝初期の書斎にさかのぼる。…

※「私塾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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