農作物の栽培の出発点となる繁殖体。種苗とほぼ同義に用いられる。種物には作物体の各種の器官が利用されている。最も一般的なものは種子あるいは果実で,イネ,ムギ,トウモロコシ,マメなどで利用される。野菜では種子のほかに,これから育てられた苗が利用される。いも類では種いも(塊根,塊茎)が利用されるが,これから育てられた苗が使われる場合(サツマイモ)もある。果樹類では苗木,挿穂,接穂などが,また花類では種子のほか,塊根や各種の地下茎(園芸分野では一括して球根と呼ばれる)が種物となる。種物には農家が自家生産する場合のほか,市場を通じて業者から購入する場合,国公立研究機関から所定の経路を通じて購入する場合など,さまざまな流通過程がある。農家や栽培者は自家の経営形態や作物の特性を考慮して,このいずれかを選択している。種物は優良な性質をもっていること,斉一であることなど,品種の特性を備えていることのほかに,病害虫に汚染されていないこと,栽培が容易で生育が良好であることなどが重要である。種物は一般に貯蔵・輸送に適した性質をもっているが,苗のように柔弱な場合には流通の範囲は限られたものとなる。
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[農林業の種苗]
農林業では繁殖のために使用する植物体の一部または全体をさし,種物(たねもの)ともいう。最もふつうに利用されるのは種子または果実であるが,このほかに苗や苗木,あるいは各種の地下茎や枝(接木や挿木に利用する),台木も種苗として取り扱われる。…
※「種物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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