かま‐ど【竈】
① 上に鍋、釜などをかけ、下から火を燃して、物を
煮炊きするようにしたもの。土、石、
煉瓦(れんが)、鉄、コンクリートなどで築き、中をうつろにし、上に鍋、釜をのせる穴をあける。かま。くど。へっつい。
※
万葉(8C後)五・八九二「可麻度
(カマド)には
火気(ほけ)ふき立てず 甑
(こしき)には
蜘蛛の巣かきて」
※宇津保(970‐999頃)
藤原の君「世界にふせうととのはず、家
かまどなくして、たよりなからん人」
③ 生活の単位としての家。独立して家庭生活をする
一家。また、
戸数割りなどの
賦課における家族生活の単位。世帯。江戸時代、これの代わりに炉の
自在鉤(かぎ)を単位とする
地方もあった。
※
今昔(1120頃か)二六「其
(その)郡司が孫
(そん)なむ伝へて、今
(いまに)其糸奉る竈戸
(かまど)にては有なる」
⑤ 靫(うつぼ)の、矢を入れる口のあたり。「蒲戸」とも書く。
※就弓馬儀大概聞書(1464)「うつぼの
根本(こんぼん)は、かまと計
(ばかり)をうつぼとて付けたる也」
[2] 〘接尾〙 戸数を数えるのに用いる。軒(けん)。戸(こ)。一家に二世帯同居する場合、二竈と数える。
そう サウ【竈】
〘名〙
① かまど。
② (「論語‐八佾」の「与三其媚二於奥一、寧媚二於竈一」に、「奥」を高い地位にある者の意に、「竈」を実権のある権臣にたとえるところから) 実力のある者。実際の権力をにぎっている者。
※太平記(14C後)一二「実に忠有る者は功を憑で諛はず、忠無き者は奥に媚び竈(サウ)を求め」
へ‐つ‐い ‥ひ【竈】
〘名〙 (「へ」は竈、「つ」は「の」の意の古い格助詞、「ひ(い)」は霊威の意)
① かまどを守る神。かまの神。かまどの神。
※神楽歌(9C後)竈殿遊歌「〈本〉豊(とよ)戸津比(ヘツヒ) 御遊びすらしも」
② かまど。へっつい。
※名語記(1275)四「家のへついに塗るかま如何。答、かまは釜也」
へっ‐つ‐い ‥ひ【竈】
〘名〙 (「へつい(竈)」の変化した語) かまど。〔文明本節用集(室町中)〕
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デジタル大辞泉
「竈」の意味・読み・例文・類語
へ‐つ‐い〔‐ひ〕【×竈】
《「竈つ霊」または「竈つ火」の意》
1 かまどを守る神。
「内膳、御―渡し奉りなどしたる」〈能因本枕・九二〉
2 かまど。へっつい。〈日葡〉
かま‐ど【×竈】
《「ど」は処の意》
1 土・石・煉瓦などでつくった、煮炊きするための設備。上に釜や鍋をかけ、下で火をたく。へっつい。かま。
2 独立して生活する一家。所帯。「竈を分ける」
3 生活のよりどころとなるもの。家財道具。
「家―なくして、たよりなからむ人」〈宇津保・藤原の君〉
へ【×竈】
かまど。へっつい。
「慎、よもつ―ものを莫食ひそ」〈霊異記・中〉
くど【×竈】
1 かまど。へっつい。
「―の前で、火ィくべてなさるでェ」〈有吉・助左衛門四代記〉
2 かまどの後方にある煙出しの穴。〈和名抄〉
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竈【かまど】
煮たきをする施設で,一般に壁などに面し,焚口(たきぐち),煙道がつく。日本では古墳時代中期ごろの竪穴(たてあな)住居跡に竈の施設が見られ,以後,奈良・平安時代を通じ長く用いられてきた。西日本では竈形土器と呼ばれる半円形の焚口のある土師器(はじき)が発見されている。竈は清潔にしておくべきもので,火が汚れると竈神が不幸をもたらすと信じられ,別棟(むね)に竈をおく地方もある。
→関連項目ヘスティア
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竈
かまど
「くど・へっつい」とも。竈処(かまど)の意。家の火所(ひどころ)すなわちクドの一つで日常的に食物の煮炊きに用い,一般には土間の奥に築いた。クドはもとカマドのうしろの煙出し穴をさした。火所のもう一つである炉もクド・カマドといったので,土で築いた土竈の出現以前は,炉とカマドは一致していたと考えられる。生活の拠点となるところから,家・所帯を数えるのにも用い,分家させることを「カマドを分ける」ともいう。家を象徴するところから,カマドに祭られる竈神は家の神の性格をもつ。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
かまど【竈】
土・石・れんがなどで囲いを作り、中で火をたいてその上に鍋や釜をかけ、煮炊きや湯沸かしをする設備。◇「竈(かま)処(ど)(=ところ)」の意。「へっつい」「くど」ともいう。
出典 講談社食器・調理器具がわかる辞典について 情報
世界大百科事典内の竈の言及
【窯】より
…これは穴の中で缶(ほとぎ)を焼成することを意味する。日本の竈は炊事のカマドから出ており,釜という字も用いられたが,明治以降は窯の字が一般化している。 日本では最古の縄文土器を焼成した窯はまだ知られていない。…
※「竈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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