【Ⅰ】両性電解質が溶液中で酸および塩基として解離するとき,両者の量が等しくなるような状態をいい,そのときの水素イオン濃度の値で表す.たとえばAl(OH)3の溶液では,pH < 10では Al3+,pH > 13ではAlO33-がそれぞれ多く存在する.そして,この中間の pH の値(~11)では両種のイオンが等量ずつ存在し,この pH 値を等電点という.【Ⅱ】コロイド粒子,とくにタンパク質は,それが分散している分散媒の pH によって,その荷電の符号および量をかえる.したがって,ある pH のもとで全体としての電荷が0となる.このときの pH が等電点である.タンパク質では,アミノ基,ヒスチジンの4-イミダゾリル基,アルギニンのグアニジノ基が塩基性解離をし,酸性解離をする基としてはカルボキシル基,チロシンのフェノール性ヒドロキシ基,システインのメルカプト基がある.等電点はこれらの基が解離して陰陽両イオン基の数が等しくなり,実効電荷が0となったときの pH である.たとえば,カゼインでは4.6,オキシヘモグロビンでは6.75である.等電点ではコロイド粒子の凝集や発泡などの現象が見られ,とくにタンパク質では種々の特異性を示すので,生化学分野で重要である.一般に等電点は,その分散媒として用いている緩衝液中の塩の種類によって少しずつ異なる.これはコロイド粒子の荷電の原因として,両性コロイド電解質の電離以外にコロイド粒子への電解質イオンの吸着もあることを示しており,前者のみの場合の pH を等イオン点とよび,両者を含めていう等電点と区別する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アミノ酸やペプチド、タンパク質のような両性電解質、あるいはコロイドなどにおいて、溶液の水素イオン濃度(pH)を変化させたとき、溶質や粒子全体としての電荷(実効電荷)がゼロになるようなpHがある。これを等電点という。つまり、このような水素イオン濃度においては、溶質、粒子のもつ正荷電と負荷電の量が等しくなるのである。タンパク質も両性電解質であるが、成分のアミノ酸の種類と数によってかなり異なった等電点を示す。たとえば、コムギのグリアジンのように酸性アミノ酸に富むものでは、等電点は4付近であるが、プロタミンのように塩基性アミノ酸に富むものでは10から12に及ぶ。このような等電点の差異を利用して分離も行える。水酸化アルミニウムのような両性の沈殿(両性水酸化物)においても同じように等電点がある。このpHにおいて溶解度が最小となることがわかる。コロイド溶液は、等電点において電気泳動速度が極小となるが、浸透圧、粘性なども極小となる。これに対し、泡立ちや凝結などでは逆に最大となる。
[山崎 昶]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…偏比容は密度の逆数に近いが,タンパク質ではふつう0.69~0.75cm3/g程度であり,アミノ酸組成によりだいたいの値を予言することができる(表2)。また,タンパク質分子の電荷の総和が0になるpHを,そのタンパク質の等電点という。アミノ酸組成から等電点のおよその予想はできるが,正確な値は実験してみないとわからない。…
※「等電点」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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