〈ちくしさんち〉ともいう。おもに福岡,佐賀,長崎3県にまたがって北東から南西方向に走る山地。地体構造上,西南日本内帯に位置し,中国山地の延長上にある。中国山地が連続した山地であるのに対し,この山地は筑豊盆地,福岡平野,筑紫平野などにより地塊に分断されている。北東から本州と対峙する企救(きく)山地,紫川の東側に位置する貫(ぬき)山地と西側に位置する福智山地,筑豊盆地と福岡平野の間の三郡山地,筑後川の南の耳納(水縄)(みのう)山地,福岡・熊本両県にまたがる筑肥山地,福岡・佐賀両県境の脊振山地,佐賀県から長崎県にかけての肥前山地の総称である。これらの山地の多くは断層山地と考えられているが,まだ確認はされていない。地質は大部分が中生層,古生層,花コウ岩類であるが,肥前山地では第三紀層上の厚さ約300mの玄武岩が台地を形成している。標高は大部分が1000m前後であるが,東の企救山地は最高598m(足立山),西の肥前山地は最高776m(国見山)である。企救山地から脊振山地にかけては標高約1000m,500m,300mの3段の浸食平たん面が形成されており,3回の間欠的な土地隆起があったことを示している。肥前山地の玄武岩溶岩の基底面は第三紀層を切る浸食平たん面であり,その高度は東で最も高く標高400mを超えるが西では海面の高さまでくだる。玄武岩溶岩の厚さがほぼ一定しているために山地全体が西に傾いている。南の耳納山地は北に直線的で急な斜面を,南には緩やかな斜面をもっているため,形態的には典型的な傾動地塊となっている。各山塊の周囲にはしばしば第三紀層の夾炭層が堆積しており,かつては筑豊,粕屋,唐津,佐世保の諸炭田を形成していた。また貫山地には山口県の秋吉台に続く石灰岩が分布し,典型的なカルスト台地である平尾台が位置しており,その周辺では香春(かわら)岳などに多数のセメント工場が立地している。
執筆者:赤木 祥彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
九州北部を北東から南北に福岡、佐賀、長崎三県にまたがる山地。「ちくしさんち」ともいう。断層性の盆地や河谷によって多数の山塊に分断され、東部山地群は企救(きく)、貫(ぬき)、福智(ふくち)、孔大寺(こだいじ)、三郡(さんぐん)の各山地からなり、西部山地群は脊振(せふり)、天山(てんざん)の山地からなる。地帯構造上は西南日本の内帯に属し、中国山地の南西延長部分となる古い褶曲(しゅうきょく)山地で、おもに古生層の基盤とこれを貫く花崗(かこう)岩、地溝に堆積(たいせき)した古第三紀層よりなる。断層運動は紫(むらさき)川断層谷以東は中国山地と同じ北東走向であるが、それ以西では北西走向となって地溝を形成、古第三紀夾炭(きょうたん)層が堆積して筑豊(ちくほう)、粕屋(かすや)、唐津(からつ)、佐世保(させぼ)など多くの炭田を形成した。山腹は急傾斜であるが、頂上部は緩傾斜の平坦(へいたん)面が広がり、脊振山の1055メートルを最高に東西で高度を減じ、海中に没する。貫山地の平尾台(ひらおだい)、福智山地の香春(かわら)岳、船尾(ふなお)山などに石灰岩が分布してカルスト地形を生じ、セメント工業の原料として利用されている。大半が北九州国定公園、筑豊、太宰府(だざいふ)、脊振雷山(らいざん)の各県立自然公園に含まれており、四季を通じハイキングなどを楽しむ行楽客も多い。
[石黒正紀]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…〈ちくしさんち〉ともいう。おもに福岡,佐賀,長崎3県にまたがって北東から南西方向に走る山地。地体構造上,西南日本内帯に位置し,中国山地の延長上にある。中国山地が連続した山地であるのに対し,この山地は筑豊盆地,福岡平野,筑紫平野などにより地塊に分断されている。北東から本州と対峙する企救(きく)山地,紫川の東側に位置する貫(ぬき)山地と西側に位置する福智山地,筑豊盆地と福岡平野の間の三郡山地,筑後川の南の耳納(水縄)(みのう)山地,福岡・熊本両県にまたがる筑肥山地,福岡・佐賀両県境の脊振山地,佐賀県から長崎県にかけての肥前山地の総称である。…
…筑後国筑前国豊前国【狐塚 裕子】
[モザイク状地形の風土]
大分,熊本との県境一帯は浸食された溶岩台地で,英彦(ひこ)山,釈迦ヶ岳など標高1000m前後のメーサやビュートが多数集まって県の最高部を形成し,遠賀(おんが)川,矢部川の水源をなす。その北西に,地帯構造上西南日本の内帯に属し中国山地の延長部に当たる筑紫(つくし)山地が広がる。筑紫山地は断層によって,東から西へ企救(きく)山地,貫(ぬき)山地,福智山地,三郡山地,佐賀県境の脊振(せふり)山地,南に耳納(水縄)(みのう)山地,熊本県境の筑肥山地など多数の地塊に分裂し,広い谷や盆地,平野を数多く介在させて複雑なモザイク状を呈している。…
※「筑紫山地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新