一定の目的を効果的に実現するために、人的・物的諸要素を適切に結合し、その作用・運営を操作・指導する機能もしくは方法を、管理あるいはマネジメントmanagementという。その中核的機能は調整であるが、対象が人的集団であるときはリーダーシップ(指導性)に、またそれが物的資源であるときはコントロール(制御)と表現されることが多い。管理機能の範囲にはいくつかの段階がある。最低水準の範囲は、保存ないし現状維持であり、私法上の「管理」行為のように、物または権利の現状や性質を変更しない行為をさす場合がこれである。最高水準の範囲は、目的の設定ないし変更をも含む調整であり、システムの運営に関する管理を広義に解する場合がこれである。この両者の中間の範囲がもっとも一般的な管理であり、経営者と区別した管理者を想定する、あるいは政治に対する行政上の「管理行為」を定めるなどはこれであり、この場合は、目的の設定は除かれ、現状維持以上の操作が含まれる。
管理すべきシステムが単純で小規模な場合には、管理はそれほど問題をもたず、管理者(管理主体)は非専門家でよい。中小企業で世襲経営者や出資経営者が多かったり、大学で学者が学長になるなどは、非専門家管理の例である。しかし、システムが大規模・複雑化し、環境が激動するようになると、管理の重要性は高まり、管理そのものの機能分化が生じ、管理技術が発達して、管理専門家が出現するようになる。管理が調整を本質とすることに変わりはないが、変化した状況のなかで管理の有効性を保つために、管理の合理化・科学化が必要になる。このような管理の合理化・科学化を展開する思考には、組織的思考と計数的思考の二つがある。前者は、管理に関連するすべての要因(目的、主体、対象、行動など)を体系的・秩序的に配慮することをいい、後者は同じくすべての要因を計数によって表示・秤量(ひょうりょう)することをいう。このような二つの思考に関連させながら、管理を一つの過程としてとらえ、展開する試みも重要である。そのもっとも代表的なものは、管理を計画、組織、統制の3部分機能からなる循環過程としてとらえるものである。計画は目的に即した活動予定であり、活動の事前から事中へと作用する。組織は、計画を活動に展開し、活動を通して目的の有効な実現を図る仕組みである。統制は、計画と活動実績とを比較対照し、その差異の原因を解明し、必要に応じて是正措置をとり、かつ実績を次期の計画へフィードバックすることをいい、活動の事中から事後へと作用する。実際には相互に重複しているが、管理は基本的に、計画→組織→統制の反復的循環活動によって営まれているとみることができる。この過程をマネジメント・サイクル(管理の循環過程)とよぶ。これによって、実情に即した計画の設定と、計画的、組織的な実施活動の確保とが可能となる。
各種の管理技術は、これまで述べた中核的機能、基本思考、部分機能に即して発展してきた。指導性についてはリーダーシップの理論と技術が、制御については情報と伝達のそれぞれについて理論と技術がある。計画には二つの基本思考が関係し、予測、代替案設計、代替案のなかからの選択などについて計画技術が発達した。組織には主として組織的思考をもとにした管理技術が多く、組織設計、人事、情報システムなどに具体化されている。統制は主として計数的思考をもとにした管理技術が多く、計算、比較、分析、監査、評価などに具体化されている。大規模なシステムでは、主体、対象、技術などを組み合わせた管理システムが形成され、それらは、対象の要素別、主体の階層別、活動の過程別、同じく活動の空間別(たとえば地域別)などに編成されることが多い。現代は管理社会ともいわれるように、管理貿易、管理価格、小集団管理などあらゆるレベルと対象について管理が存在する。問題は、管理システムが人間から遊離して、人間不在にならないような配慮が払われなければならないことである。
[森本三男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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[経営・管理の語意]
〈経営〉という言葉は今日,企業をはじめ行政,教育,宗教,組合など各種組織の運営にかかわる言葉として使われているが,日本語としていつごろ定着したかは確かではない。《日本国語大辞典》1940年版には,(1)縄張りをして土台をすえいとなみ造ること,(2)工夫をこらして物事をいとなむこと,とされ,中国春秋時代の《詩経》に(1)(2)の早い使用例があり,日本では(2)の使用例が室町時代の《太平記》にみられる。…
※「管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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