精選版 日本国語大辞典 「粘性」の意味・読み・例文・類語
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液体や気体の流れでは、流速の分布が一様でない場合、速度差をならして一様にしようとする性質が現れる。これを流体の粘性という。一般に水や空気のようなさらさらした流体は粘性が小さく、ひまし油やグリセリンのような液体は粘性が大きい。
[今井 功]
粘性の大きさを定量的に表すために粘性率coefficient of viscosityが定義される。たとえば、2枚の平行な平板の間に流体を入れ、一方の板を固定し他方を速度Uで動かすと、流体は引きずられてずり運動をおこす。板の間隔をhとすると、速度勾配(こうばい)はU/hである。この場合、固定平板は流体によって引きずられ、運動平板は引き戻される方向に力を受ける。普通の流体では、その力の大きさは速度勾配に比例する。すなわち、板の単位面積当りに働く力をτとすると、τ=ηU/hの関係が成り立つ。この比例係数ηを粘性率という(粘度あるいは粘性係数ともよばれる)。板の表面のみならず流体内部の各点でも、板に平行な面の両側の流体部分は単位面積当りτ=ηU/hの大きさで面に平行な方向の力を及ぼし合っている。τを「ずり応力」という。一般に、流れの方向にx軸、それと直角にy軸をとり、流速をuとすると、∂u/∂yは速度勾配で、τ=η∂u/∂yの関係が成り立つ。これを「ニュートンの粘性の法則」という。
一般に物体の運動はニュートンの運動法則、すなわち、質量×加速度=力(m×a=F)によって支配されるから、流体の運動には、質量に関連して「密度」ρ、力に関連して粘性によるずり応力が重要である。しかし、運動そのものを支配するのはηとρの比ν=η/ρである。νを動粘性率kinematic viscosityという。なお、粘性の作用を無次元の形に表すためにレイノルズ数R=ρUl/η=Ul/νが使われる。ただし、Uは流れを表す代表的な速度、lは代表的な長さである。
[今井 功]
粘性率の単位は、国際単位系(SI)ではパスカル秒(Pa・s=N・s/m2)、CGS単位系ではポアズ(P=dyn・s/m2)である。両者は、1P=100cP=0.1Pa・sの関係にある。気体では粘性率は温度とともに増加し、液体では逆に減少する。また、気体では圧力によってほとんど変化しないが、液体では圧力とともに増加する。なお、動粘性率の単位は、国際単位系ではm2/s、CGS単位系ではストークスStで、1St=1cm2/s=10-4m2/sの関係にある。
[今井 功]
粘性を考慮して流体の運動を議論する場合、流体は粘性流体viscous fluidであるという。水や空気のように粘性の小さい流体では、粘性を無視した取扱いが可能である。このとき流体は完全流体perfect fluidあるいは非粘性流体inviscid fluidという。粘性は流体のずり変形を妨げる性質であるが、気体には膨張・収縮を妨げる性質もある。これは気体の体積粘性volume viscosityとよばれ、音波の減衰などの原因になる。氷河や地殻のような固体の流動的な変形運動の場合にも粘性が現れる。その粘性率は液体に比べてはるかに大きい。普通の液体ではずり応力と速度勾配の間に比例関係τ∝∂u/∂yが成り立つが、高分子やコロイドの溶液では成り立たないものがある。前者をニュートン流体、後者を非ニュートン流体という。
[今井 功]
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出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…これを静水圧という。流れが起こると力の等方性が破れ,面に並行な力,すなわちずれの応力(粘性応力)が現れて,流速を均一にしようとする。このような性質を流体の粘性という。…
※「粘性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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