(読み)アワ

デジタル大辞泉 「粟」の意味・読み・例文・類語

あわ〔あは〕【×粟】

イネ科一年草五穀の一。高さ約1.5メートル。葉は細長く、互生する。秋、茎の頂に長く太い円柱形の花穂を1本出す。実は小粒で黄色もちうるとがある。古くから栽培され、粟飯粟餅などにして食べ、またあめ・酒の原料小鳥飼料にする。 秋》「―垂るる修学院こみちかな/風生
恐怖や寒さのため、皮膚一面にできる粟粒のようなぶつぶつ。「肌にを生じる」
[類語]ひえきびコーリャン蜀黍もろこし

ぞく【×粟】

あわ
穀類。また、扶持米。「む」
「金を軽くし―を重くす」〈方丈記
容積単位しゃくの1万分の1。

ぞく【粟】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ゾク(慣) [訓]あわ
穀物の名。あわ。「粟散粟粒

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「粟」の意味・読み・例文・類語

あわあは【粟・粱】

  1. 〘 名詞 〙
  2. イネ科の一年草。インド原産で古くから各地の畑に栽培されている。高さ一~一・五メートル。葉は広い線形。夏から秋に緑色の小花が集まった一〇~二〇センチメートルの穂をつける。種子はみのると黄色、赤色、紫色になる。植物学上は大粟(狭義の粟)と小粟にわかれる。五穀の一つで糯(もち)と粳(うるち)がある。生育期間は三~五か月間で、日照りに強く、やせ地でもよく育つ。粟飯、粟餠粟おこし、だんごなどにするほか、あめ、酒の原料、小鳥の飼料などとする。
    1. [初出の実例]「二つの目に稲種(いなだね)(な)り、二つの耳に粟生(な)り」(出典:古事記(712)上)
    2. 「足柄の箱根の山に安波(アハ)蒔きて実とはなれるを逢はなくもあやし」(出典:万葉集(8C後)一四・三三六四)
    3. 「粟稗(ひゑ)にまづしくもなし草の庵〈芭蕉〉」(出典:俳諧・笈日記(1695)中)
  3. あわいい(粟飯)」の略。
    1. [初出の実例]「佐野の粟是も栄花の炊初」(出典:雑俳・柳多留‐六一(1812))
  4. あわもち(粟餠)」の略。
    1. [初出の実例]「曲舂は粟で此世をすごすなり」(出典:雑俳・柳多留‐八二(1825))
  5. ( 「あわちらすくに(粟散国)」の略 ) 日本国の異称。「扶桑略記」に、日本国を指して、「東方粟散国」とある。
    1. [初出の実例]「粟の近所へもろこしは寄せ付ず」(出典:雑俳・柳多留‐六四(1813))
  6. 寒さや恐怖のはなはだしいとき、毛孔が粟粒のように立つもの。ぞく。
    1. [初出の実例]「慄然として粟を肌に吹く」(出典:趣味の遺伝(1906)〈夏目漱石〉二)
  7. を図案化した紋章。粟の丸、抱き粟などがある。

ぞく【粟】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (あわ)。また、日ごろ食する穀類や官吏に与えられる扶持米をいう。
    1. [初出の実例]「遠望苗抽一レ緑、遙思粟衍一レ紅」(出典:菅家文草(900頃)四・納涼小宴)
    2. 「たまたま換ふるものは金を軽くし、粟を重くす」(出典:方丈記(1212))
    3. [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕
  3. 容積の単位。圭(けい)の一〇分の一。勺の一万分の一。
  4. 植物「こあわ(小粟)」の漢名。
  5. もちごめ(糯米)」の異称。〔薬品手引草(1778)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「粟」の解説

粟 (コアワ)

学名:Setaria italica var.germanica
植物。イネ科の一年草

粟 (アワ)

学名:Setaria italica
植物。イネ科の一年草,園芸植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

今日のキーワード

メタン

化学式 CH4 。最も簡単なメタン系炭化水素で,天然ガスの主成分をなしている。また石炭ガスにも 25~30%含まれる。有機物の分解,たとえばセルロースの腐敗,発酵の際に生成され,沼気ともいわれる。また...

メタンの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android