(読み)ベニ

デジタル大辞泉 「紅」の意味・読み・例文・類語

べに【紅】

紅色の顔料。ベニバナの花びらから製したもの。絵の具・染料・化粧品や食品の着色料などに用いる。
紅色。くれない。
口紅。また、ほお紅。「をさす」「を引いた唇」
紅花のこと。
[類語]真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれない真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

くれない〔くれなゐ〕【紅】

《「くれ(呉)のあい(藍)」の音変化》
鮮明な赤色。特に、紅花の汁で染めた色。「夕日が空をに染める」
ベニバナの別名。末摘花すえつむはな
「よそのみに見つつ恋ひなむ―の末摘む花の色に出でずとも」〈・一九九三〉
香の名。伽羅きゃらの一種。
[類語]べにレッド真紅真っ赤緋色ひいろ赤色せきしょく紅色こうしょく鮮紅せんこうしゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

こう【紅】[漢字項目]

[音]コウ(漢) (慣) グ(呉) [訓]べに くれない あか
学習漢字]6年
〈コウ〉
鮮やかな赤色。くれない。「紅顔紅茶紅潮紅白紅葉暗紅鮮紅淡紅
べに。「紅粉
女性。女性の。「紅涙紅一点
(「」と通用)仕事。特に、女の仕事。「女紅
〈ク〉くれない。「真紅
〈くれない〉「薄紅唐紅
〈べに〉「口紅頰紅ほおべに
[名のり]いろ・くれ・もみ
[難読]紅蓮ぐれん百日紅さるすべり紅型びんがた紅絹もみ紅裏もみうら

こう【紅】

くれない。くれない色。べに色
「其顔色せいを含み眼辺に―を帯ぶ」〈織田訳・花柳春話

もみ【紅/紅絹】

《ベニバナをもんで染めるところから》べにで染めた無地の平絹。女物長着の胴裏や袖裏に用いる。もみぎぬ。

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精選版 日本国語大辞典 「紅」の意味・読み・例文・類語

べに【紅】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 紅花から製した鮮紅色の顔料。染料や、頬紅・口紅など化粧品の原料とし、また、食品の着色などに用いる。臙脂(えんじ)。〔訓蒙図彙(1666)〕
  3. 紅花から製した鮮紅色の顔料をおしろいに混ぜ合わせたもの。頬紅。ももいろおしろい。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  4. 口紅。古くは、猪口(ちょく)、皿、茶碗などに塗りつけたものを、指や筆で溶いて用いた。
    1. [初出の実例]「旦那のお口の端へ紅(ベニ)がついて居りますぜ」(出典:歌舞伎・裏表柳団画(柳沢騒動)(1875)二幕)
  5. べにばな(紅花)」の略。
    1. [初出の実例]「朝月夜双六うちの旅ねして〈杜国〉 紅花(べに)買みちにほととぎすきく〈荷兮〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
  6. べにいろ(紅色)」の略。
    1. [初出の実例]「白いつつじに紅のとび入〈芭蕉〉 陽炎の傘ほす側に燃にけり〈支考〉」(出典:俳諧・百囀(1746)歌仙)

くれないくれなゐ【紅】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「呉(くれ)の藍(あい)」の変化した語 )
  2. 植物「べにばな(紅花)」の異名。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「紅(くれなゐ)の花にしあらば衣手に染めつけ持ちて行くべく思ほゆ」(出典:万葉集(8C後)一一・二八二七)
  3. 赤く鮮明な色。紅花の汁で染めだした紅色。臙脂色
    1. [初出の実例]「紅萌ゆる岡の花 早緑匂ふ岸の色」(出典:三高逍遙の歌(1906頃)〈沢村胡夷〉)
  4. 江戸時代、京都で染めた紅絹。京紅。
    1. [初出の実例]「しわひ所とてくれなひが上手也」(出典:雑俳・柳籠裏(1783‐86)五月二八日)
  5. 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。香味は甘辛。六十一種名香の一つ。〔香名秘録〕

もみ【紅・紅絹】

  1. 〘 名詞 〙 ( 紅花を揉んで染めるところから ) べに色で無地に染めた絹布。和服の袖裏や胴裏などに使う。ほんもみ。
    1. [初出の実例]「春風のもみ紅梅はうら見哉〈親重〉」(出典:俳諧・犬子集(1633)一)
    2. 「眼のさめるやうな京染の紅絹(モミ)の色は」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)

こう【紅】

  1. 〘 名詞 〙 くれない。べにいろ。紅色。
    1. [初出の実例]「眼辺に紅(コウ)を帯ぶ」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二〇)
    2. [その他の文献]〔司馬相如‐大人賦〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紅」の意味・わかりやすい解説


べに

ベニバナの花からとる紅色の色素。ベニバナは黄と紅の二つの色素を含み、その特色は、紅色素は水には溶けないが、アルカリ性の液には溶け、これに酸を加えて沈殿させてとる。わが国では山形市郊外がその代表的な産地で、俗に「最上(もがみ)の紅花(べにばな)」といわれている。紅は布帛(ふはく)類を紅染めにしたり、化粧の材料にしたり、食料品を赤く染めて祝儀に用いたりする。紅染めにするには、ベニバナを水に浸して黄色素が出るのをみて袋に入れ、これをもみ出す。半日以上経過してから、アルカリ剤を加えて放置しておく。一晩たって、これを絞ると花が白くなり、水は褐色を呈するようになる。この水に、さらに酸を加えると鮮紅色となる。この中に布帛を入れて、しばらく放置したものを薄い酢酸液に浸し、水洗いして乾燥するとできあがる。この方法を繰り返すとしだいに濃くなり、望む色合いが出るようになる。

[遠藤 武]

化粧紅

化粧用の紅はまず紅餅(もち)づくりから始まる。7月上旬に黄色いベニバナの花をむしり取り、水で洗って花の毛羽を取り去り、これを足で踏んでから莚(むしろ)を敷いた箱に広げて、一晩ねかせると花は発酵して赤くなる。これを臼(うす)で搗(つ)いて餅のようにし、両手で団子のように丸め、この上から莚をかけて踏むと、平たい餅の形となる。これが紅餅で、乾燥させたものを紅屋に運ぶのである。紅屋では、紅餅を一晩水につけて黄色素を絞り、残った餅に木灰(アルカリ)を加え、ぬるま湯を注いでその上澄みをとる。さらに木灰を加えて何回となく絞り、夾雑物(きょうざつぶつ)を取り去るために麻布を入れ、少しずつ酸を加えて麻に染め付けてから、これをろくろで水切りをし、固まった麻に酸を加えて絞ると、赤黒い液が得られる。これに酸を加えると液は真っ赤となり、紅分が沈殿する。これを羽二重(はぶたえ)で漉(こ)すと紅が残る。これを猪口(ちょこ)、茶碗(ちゃわん)などに塗り付けたものが小町紅で、江戸時代には寒(かん)に売り出されるのをとくに寒紅とか丑紅(うしべに)と称し、女性たちは競って購入した。

[遠藤 武]


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百科事典マイペディア 「紅」の意味・わかりやすい解説

紅【べに】

ベニバナからとる赤い色素。主成分はカルタミンで,古くから化粧料,画料,染料とされた。花弁を圧搾して餅(もち)紅(板紅)を作り,灰汁(あく)に浸して色素を析出,酸を加えて沈殿させ絹布でこす。これを泥紅といい,猪口(ちょこ)や貝殻に塗り口紅とした。産地では山形県の最上(もがみ)紅が,製造では京都の京紅が有名。現在ではほとんど使用されない。→口紅頬紅(ほおべに)

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デジタル大辞泉プラス 「紅」の解説

紅(くれない)

日本のポピュラー音楽。歌は日本のバンド、X(エックス)。1989年発売。作詞・作曲:YOSHIKI。第22回日本有線大賞最優秀新人賞受賞。

紅(べに)

日本のポピュラー音楽。歌は女性演歌歌手、藤あや子。1996年発売。作詞:坂口照幸、作曲:水森英夫。

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色名がわかる辞典 「紅」の解説

くれない【紅】

紅色べにいろ

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動植物名よみかた辞典 普及版 「紅」の解説

紅 (クレナイ)

植物。紅花の別称

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