組積構造,組積造ともいう。架構式構造,一体式構造に対するもので,一般には塊状の材料を積み上げて建物(壁体)を構成する方法をいう。歴史的な土ブロック,泥煉瓦(いずれも前6000~前5000年ころ。メソポタミア地方),日乾煉瓦(前5000~前4000年。エジプト)をはじめ,今日も用いられている石,焼成煉瓦やコンクリートブロックなどがその材料である。組積式を〈積み上げて構成する方法〉という点に共通性を見いだして考えれば校倉(あぜくら)造における校木(あぜき)なども含まれる。校木は塊状材でなく線状材であるところが他と異なる。校木によるものは北ヨーロッパから中部ヨーロッパにかけて紀元前から使用されており,今日でも受け継がれている。塊状の材料を用いる組積造の積み方は,大別して目地の位置が上下の段で連続していない破れ目地積みと,目地の位置が上下の段で連続している芋(いも)目地積みとがある。力学的には破れ目地積みのほうが力の分散という点では優れており,不等沈下や面外からの横力に対し抵抗力がある。一般的には組積造は破れ目地積みを原則とする。ただし,これは主材料が目地材料(モルタル,泥など)に比し強い場合にいえることで,石造,煉瓦造がこれにあたる。コンクリートブロック+鉄筋入りモルタル,またはコンクリートブロック+鉄筋入りコンクリートによる場合は目地部の強度のほうが強く,芋目地積みとしても目地部で破壊することは少ないし,施工時の鉄筋の挿入がはるかに容易である。したがって,一般にはコンクリートブロック造は芋目地積みが行われる。
ヨーロッパ,中近東における組積造の歴史はそのまま西洋建築史と見ることができるほどである。すなわち,メソポタミア時代のアーチ,ボールトから,ビザンティン時代のスキンチ,ペンデンティブ,ロマネスク時代のクロスボールトを経て,ゴシック時代のリブボールト,フライング・バットレスに至る組積構造技術の発展である。
一般に組積式構造は耐震的には不利な構造であるため,日本では石造,煉瓦造は今日では計画されることはなく,コンクリートブロック造によるものしか考えられない。コンクリートブロック造は補強コンクリートブロック造と型枠コンクリートブロック造とに大別できるが,前者は組積造であり,後者は一体式コンクリート造である点が大きく異なる。組積造は耐震性を確保するために,建物の高さ・形,各室の大きさ,窓・出入口の大きさ,壁(耐震壁)の配置などに多くの制限がある。コンクリートブロック塀は,材料の入手,施工とも容易であるため広く普及しているが,1978年の宮城沖地震で倒壊による事故が多出し,軽微な構造であるとはいえ,安全確保のための配慮が必要であることがあらためて力説されている。
→建築構造 →石造建築 →ブロック造建築 →煉瓦造建築
執筆者:上杉 啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…架構式構造の用途はきわめて広く,小規模の住宅から大規模の高層建築,体育館などの大スパン構造のものまであらゆる建築に用いられる。(2)組積式構造 比較的小単位の部材を積み重ねて建物を構成する方法で,石造,煉瓦造,補強コンクリートブロック造などがこれに属する。校倉(あぜくら)式の木造も組積式構造である。…
…採光に必然的に伴う熱,空気,音などの要素が,機械的な環境制御にとっての外乱となることも多い。
[採光の歴史]
構造上開口の取りにくい石や煉瓦の組積式構造が主体の西洋建築の発達の歴史は,壁体を荷重からいかに解放して採光を行うかのくふうの連続と見ることができる。古代エジプトの神殿建築の採光は,列柱の上部に設けられた高窓によって行われ,はめ込まれた石の格子が太陽光の入射量を調節していた。…
…煉瓦を主要材料とした組積式構造を煉瓦構造(または煉瓦造)brick constructionといい,この構造による建築を煉瓦造建築と呼ぶ。 古代エジプトやメソポタミアでは,日乾煉瓦が主要な建築材料で,厚い壁を築き,ポプラやヤナギの幹を梁材とし,その上にむしろを敷き,土を塗って屋根とした。…
※「組積式構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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