デジタル大辞泉
「組」の意味・読み・例文・類語
そ【組】[漢字項目]
[音]ソ(漢) [訓]くむ くみ
[学習漢字]2年
〈ソ〉
1 何本かの太い糸をより合わせたひも。組みひも。「組綬」
2 いくつかの要素を集め、一つのまとまりにくみ立てる。「組閣・組織・組成/改組」
3 組合のこと。「職組・労組」
〈くみ(ぐみ)〉「組曲・組長/白組・隣組・番組」
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くみ【組】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「くむ(組)」の連用形の名詞化 ) 組むこと。また、そのもの。
- ① 縒(よ)りあわせたり、そろえたりすること、またそのようなもの。
- ② 「くみいと(組糸)」の略。
- [初出の実例]「 久彌」(出典:新撰字鏡(898‐901頃))
- 「大なる人あかきくみをくびにかけて」(出典:古今著聞集(1254)一七)
- ③ 佩物(おびもの)の玉を貫く総(ふさ)。玉佩(ぎょくはい)の緒。おぶさ。綬(じゅ)。
- [初出の実例]「綬 礼記注云綬〈音受 久美 又用組字音祖〉所以貫珮玉相受也」(出典:十巻本和名抄(934頃)六)
- ④ 原稿に従って活字を配列し、印刷できるようにすること。
- ⑤ 同じ種類または同じ性格を持ったものが一つのまとまりを持つこと。
- (イ) 一緒にして一そろいになるもの。そろい。組合わせ。対(つい)。
- [初出の実例]「処の百姓二三十家を一会(クミ)にして」(出典:制度通(1724)九)
- (ロ) 同じような性格を持つと見られる人々の部類。
- [初出の実例]「而して其徒党(〈注〉なかま)を約し部(〈注〉クミ)を分」(出典:都繁昌記(1837)乞食)
- ⑥ 「くみうた(組歌)」の略。
- [初出の実例]「ながきよの折々の手ずさみに組(クミ)の證哥をうたひて」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)六)
- ⑦ 同じ目的、行為などのために仲間同士の関係になること。また、そうなった人々の一団。→与(くみ)する。
- (イ) なかま。
- [初出の実例]「敵の組西切・今堅田・東切にて切負、白浜へ、葭のなかへ流逃げ去るなり」(出典:本福寺跡書(1560頃))
- (ロ) 同じ武器を持った軍兵が一つの群になったもの。隊。
- [初出の実例]「岡部出羽守が一族四十余人、皆日比の与(クミ)にて自害しぬ」(出典:太平記(14C後)二二)
- (ハ) 株仲間のこと。
- ⑧ 「くみやしき(組屋敷)」の略。
- [初出の実例]「お組の衆かへ」(出典:洒落本・三千之紙屑(1801)二)
- ⑨ 学級を構成する一単位。クラス。
- [初出の実例]「『甲の組(クミ)かね』『乙です』」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一〇)
- ⑩ 親分を中心とする博徒の仲間、また、土木建築業などの結社にいう語。
- [初出の実例]「昌介は辻組の後継者なので、若おやじと呼ばれている」(出典:魔の河(1957)〈火野葦平〉一)
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普及版 字通
「組」の読み・字形・画数・意味
組
常用漢字 11画
[字音] ソ
[字訓] くみひも・くむ・くみ
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は且(そ)。〔説文〕十三上に「綬の屬なり。其の小なるは、以て冕(べん)の纓(えい)と爲す」とあり、組紐(くみひも)の類。呪飾として用いることがあった。〔礼記、玉藻〕に「玄冠、朱組の纓は、天子の冠なり」より以下、諸侯・士に至るまで、冠纓に用いる組の定めを記している。組紐の意より、すべて組成・組織するものをいう。
[訓義]
1. くみひも、うちひも、ひらひも。
2. くむ、くみあわす、くみ。
3. くみする、仲間となる。
[古辞書の訓]
〔立〕組 クム・クミス
[語系]
組tza、tziaは声近く、は草を編んで祭とするものをいう。糸を組んで呪飾とするものを、組という。
[熟語]
組帷▶・組纓▶・組▶・組▶・組甲▶・組綬▶・組就▶・組▶・組▶・組織▶・組▶・組成▶・組総▶・組帳▶・組珮▶・組▶・組冕▶・組▶・組麗▶・組練▶
[下接語]
華組・改組・解組・銜組・組・組・結組・綵組・雑組・纂組・朱組・織組・垂組・尺組・縫組・履組・綸組・麗組
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組 (くみ)
日本の地域社会において居住の近接性に基づいて地域的に家々を編成する組織。組は,ムラとかマチと呼ばれる地域をいくつかに内部区分する村組と,家々を一定数ずつにくくる近隣組に大別される。村組も近隣組も学術用語であり,具体的には各地でさまざまな名称と組織形態を示し,また一つの地域社会に両者が重層して併存しているのが通例である。その場合,地域社会がいくつかの村組に区分され,その一つの村組の中がさらにいくつかの近隣組に区分されているのが一般的であるが,村組と近隣組の組織化の基準の相違のため,村組の区分と近隣組の区分が一致しないこともある。
村組は一般に組と呼ばれるが,同時に全国各地にさまざまな村組を示す名称が分布している。主要なものを示せば,東北地方のヤシキ(屋敷),北関東のツボ(坪),南関東のニワ(庭),ニワバ(庭場),サト(里),中部地方のコウチ(耕地),近畿地方を中心に広く分布するカイト(垣内,垣外,貝戸,海戸等),中国・四国地方のドイ(土居),ホウジ(榜示),北九州のコガ(空閑),南九州のカド(門),沖縄本島北部のバーリ,同島南部のダカリなどである。これらのうち,東北地方,関東地方あるいは九州に分布する屋敷,坪,庭,門などの名称は,他方では個別の家においてその居住空間やその一部を示すものとして一般的に使用されている語である。これは村組がかつては農業経営の単位と密接に関連していたことを示すものであり,中世的な大規模な農業経営の単位が中世から近世にかけて小農の家に分解するとともに,かつての大規模経営の居住空間を範囲として新たに村組が形成されてきたことにより,同じ語が個別の家の居住空間と村組の両者を示すことになったものと判断される。
村組の名称に地方差があることは,村組がムラ・マチの必要から作られたものであることを示すが,その機能は3点に集約される。(1)ムラ・マチの運営の分担組織である。村組は祭礼の執行や道普請,用水浚(さら)い等の共同労働を分担したり,交代で担当する。(2)村組内の個々の家にとっての生活互助組織である。各家の婚礼や葬儀,さらには病気,火事その他非常事態のときに,種々の手伝いをするのが村組であるが,とくに葬儀の執行は村組のもっとも大きな役割といえる。(3)独立した結集の組織である。村組で神社や仏堂をまつり,また各種の講を組織し,行事を執行する。
近隣組は家を一定数ずつにくくる組織であるが,これはつねに政治権力や行政機関によって支配や行政の便宜のために設定されてきたことにその起源がある。したがって,比較的地域差が乏しく,全国的に共通する面が多い。その代表は近世の五人組であり,全国各地において五人組とか単に組合と呼ばれて現在も存在している。また,明治初年に五人組を再編して設定された伍長組,戦時体制下に設けられた隣保班(隣組)も近隣組として機能していることが多い。いずれも家々を5軒とか10軒ずつまとめて一つの組にしたもので,多くは家の並び順とか居住の近接に基づいて編成されているか,所によっては離れた家々が1組になっている場合もあり,一定数の家をくくる点では同じでも,組織化の基準は一様ではない。
五人組,伍長組等の組織は相互監視や連帯責任を目的に,あるいは上意下達,賦課物徴収等のために設けられたものであるが,制度化されて活動する中で,家々のもっとも頼りになる生活互助組織としても機能するようになり,法制上は解消して以降も地域社会の組織として存続してきた。地方によっては新旧2種類以上の組織が近隣組として同一のムラ・マチ内に併存していることもある。
→隣
執筆者:福田 アジオ
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組
くみ
日本の村落のなかで、もっとも狭い地区につくられた地縁的な機能(関心)集団のことをいう。村落内で相互扶助的な共同生活を営んでいる近隣集団のつくる組織だといってよい。同種のものに講とよばれるものがあるが、それは信仰的なものを成立の基盤とするものであり、性格上異なる点をもっている。
組は、普通数戸ないし十数戸によって構成されている。そこで、一つの地区(村落)は、いくつかの組に分かれている場合が多い。その呼び名は、地方によって異なるが、代表的なものには、「坪(つぼ)」「垣内(かいと)」「方切(ほうぎり)」「契約」「門(かど)」あるいは「五人組」などがある。また、組は、共同扶助と、祭礼、冠婚葬祭、普請、火災・水害防衛などの機能を果たすところから、「葬式組」「祭組」「普請組(屋根講)」あるいは「ゆい組」などともよばれる。日本の地域共同社会(コミュニティ)としての村落には、こうした組とよばれる多種類の機能集団(アソシエーション)が、あたかもその諸器官のように存在し、それぞれの役割を果たしているのである。
日本の家と村落の基本構造を形づくるものとして、「同族と組」という家連合の類型と、「同族結合と講組結合」という村落の類型を設ける諸説がある。前者は、本家を頂点として、系譜関係をもつ家々が、ピラミッド型に序列づけられてできるタイプのものと、家々が平等の資格で並列的に存在してできるタイプのものとの、二つのタイプを設けた説である。そして後者は、こうした二つのタイプを村落の型として考えた説である。これらの諸説は、日本の家と村落についての諸特徴をよくとらえているから、その点は生かしながらも、よりいっそう現実社会や歴史的過程に即したものとして、理論的発展を図るとよいだろう。
ところで、日本の歴史のなかで、為政者が、近隣集団としての組の結合に着目して、それを国家の行政機構の末端の単位として組み入れ、利用したことがあった。すなわち、江戸時代には、五人組の制度を敷くことによって、それを行政上に位置づけ、連帯責任による相互検察、共同担保、互助共済の機能を果たさせたのであった。また、昭和に入って、戦時下、隣組制度が敷かれたのは、同じく組を、行政上の単位として掌握し、末端の機能を果たさせたものであった。しかし、本来の組は、こうした行政制度のなかに組み入れられたものとは性格的に異なるものであって、逆に現実の地縁結合のなかから発生した集団であるという点は、注意しておかなければならない。
[二宮哲雄]
『守随一著「部落と組」(柳田国男編『山村生活の研究』所収・1937・民間伝承の会)』▽『有賀喜左衞門著「日本の家」(『日本民族』所収・1952・岩波書店)』▽『福武直著『日本農村の社会的性格』(1949・東京大学出版会)』▽『二宮哲雄著「ムラと組」(『講座日本の民俗2 社会構成』所収・1980・有精堂出版)』
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組【くみ】
日本の社会結合の形式。おもなものは,(1)村組。契約講,垣内(かいと),つぼなどという。江戸時代から村の日常生活の相互扶助の必要から祭組,葬式組,結(ゆい)組,水車組,普請(ふしん)組などができた。この共同の近隣集団を利用し,領主は五人組,年貢組などをつくって支配した。第2次大戦中の隣組も同様な支配の末端組織。(2)町でも同種または異種の商工業者の間に相互扶助の組合(株仲間,仲間)があった。江戸の十組問屋,大坂の二十四組問屋は有名。(3)江戸幕府の軍制で番方により編成,また大名の家臣組織の単位。馬廻組,徒(かち)組など。与とも書く。(4)中世末から発展した町村の連合組織,行政区画。組郷,組村など。(5)侠客(きょうかく)などの組織。旗本奴(やっこ)の白柄組,神祇組など。(6)子供組,若者組などの年齢集団の組織。一般に組の長を組頭(くみがしら),組親と呼ぶのに対し,組の構成員を組子という。→寄親・寄子
→関連項目組合
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組
くみ
同業者の組織,学級編成などさまざまの社会組織をさすが,古くはいろいろの用例があった。 (1) 江戸時代,武士の編成単位。本来は戦闘の単位であるが,平時にも身分等級によって役が与えられ,組に編成されていた。鉄砲組,小姓組などがそれである (→組頭 ) 。 (2) 日本の村落社会における社会的結合の単位。本来同族組織を中心とする血縁集団であったが,江戸時代に入ると地縁的に結合し,相互扶助,日常の共同労働を目的とする組,すなわち葬式組,祭組,水車組,普請組,ゆい組 (田植えなどの労力交換) などができた。 (3) 江戸時代,領主が領内支配のため設けた行政区画も組 (地域により通,筋など) といい,城下町には組町があった。 (4) 江戸時代,都市における各種の職業組合的結合。
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組
くみ
組合とも。前近代における社会結合の一形態。一般に同位平等な成員間の結合による集団で,大別して地縁的なものと職縁的なものとの2種がある。地縁的な組としては大庄屋による広域支配領域としての組や都市の町組,諸種の組合村など,共同体としての村・町を単位としたものと,これら共同体内の個々の家を単位とした小地域としての組の両者がある。職縁的な組の典型は商人・職人の仲間組織であるが,同業者仲間全体が一組となる例と,仲間内部が複数に分かれる例とがあり,後者の場合業態や新旧の差(新組・古組)のほか,同業者集住にもとづき地域呼称を付したものもみられる。広義の職縁的な組には,軍団における戦闘単位に由来する番士の組や足軽・与力などの組も含まれる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の組の言及
【組頭】より
…
[武家]
与頭とも書く。江戸幕府の番方(武官),役方(文官)の長官である頭,奉行,支配などの配下にあって,次官として各組の頭に任じたものをいう。幕府の番方の一つ大番には大番頭の配下に大番組頭,役方の一つ勘定所には勘定奉行の配下に勘定組頭,無役(本来は番方に所属)のものを集めた小普請組には小普請支配の配下に小普請組頭がいるといったぐあいである。…
※「組」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」