元来は貴人のそばに仕えて身のまわりの世話や雑用をすること,また,その人をいう。転じて近代以降,役所や企業,学校などで茶を運んだり,その他さまざまな雑用に従事する係の者を給仕と呼ぶようになった。一方,ひろく飲食の席で会食者の世話をすることも〈給仕〉の語で指示されるようになり,その結果,旅館や飲食店などで客の飲食の接待をする係も給仕と呼ばれるようになった。とくに明治時代以降に流行したカフェーやバーで男の客の接待にあたる婦女子は〈女の給仕〉をつづめて〈女給〉と呼びならわされた。だが,今日では給仕もしくは女給という呼名が用いられることはまれで,その代りに,レストランや喫茶店ではボーイもしくはウェーター,ウェートレス,バーやキャバレーではホステスなどの呼名が用いられることが多い。また,役所や企業,学校などで雑用に従事する人も,用務員などの名称で呼ばれるのがふつうである。
執筆者:高田 公理 平安時代以降,天皇の食事に近侍して給仕に当たる役を陪膳(はいぜん)といい,重要な饗宴のさいには高位の公卿や典侍などがこれを務めた。〈陪膳の采女(うねめ)〉といって,宣旨によって任命された采女が務めることもあった。次の間まで膳を運んで取り次ぐ役は手長(てなが)といい,陪膳が中納言で手長が蔵人頭といった例も少なくなく,のちには給仕役一般を〈お手長〉といった。江戸時代,武家の宴席などでこうした仕事に従う人を配膳人と呼んだが,やがてそれを専業とする者が現れた。京都で配膳と呼んでいたのがそれで,婚礼披露その他の宴席に招かれ,色紋付に袴(はかま)をつけて給仕した。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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