翻訳|water supply
水道施設を通じて水需要者へ必要な水質と水量の水を供給すること。市街地では各戸が独自に良質・豊富な水を得ることは一般に困難であり,水道施設からの給水を必要とする。給水の目的は飲料水をはじめとする生活用水と消火用水の確保にある。良質で豊富な水源を近郊に得られる場合には,全用途に一括して飲用可能な水を給水する一元水道のシステムが合理的であり,現行の一般的な水道のシステムが発達し普及した。しかし水資源の新規開発が限界に達し,水需要が安定供給力を上回るようになった一部の地域では,一元水道は渇水時に給水不良や断水を余儀なくされたり,エネルギー多消費型の高度水処理による補給を必要とするなどの不合理が生じており,用途水質別の多元水道(少量ながらも絶対に良質な水を必要とする飲料水の給水系統と,質的には若干劣っても水量を必要とする生活雑用水の給水系統などを分けて給水するシステム)へ転換する必要も生じている。
水道施設は,水を貯留し輸送する施設と,原水を水質的に浄化する施設からなり,基本的にはダムから各戸の給水栓までが一連の施設でつながれている。この水道システムの終端で,市街地内の公道下に埋設された配水管から分岐して各需要家の私有地内に入って各戸の給水栓に至るまでの部分を給水装置という。
給水方式は,直結式給水とタンク式給水に大別される。直結式給水は配水管から給水管を分岐して敷地内に引き込み,止水栓,量水器(水道メーター)を経て直接家屋内の給水栓まで接続するもので,一戸建て住宅に標準的な方式である。配水系統は給水区域内のどこにおいても,地盤高から少なくとも15~20mの水頭(1.5~2.0kgf/cm2の水圧)を維持するように運用されているので,2階建て程度のふつうの家屋では,配水管から蛇口までを直結しても水圧と水量が十分に足りる。タンク式給水は,3階以上の建物階への給水のように配水管の水圧では不足する場合,一時に多量の水を使用する場合,あるいは水不足や災害や故障による配水管の断水時にも必要最小限の水を確保したい場合などに用いられる。これは,建物内に受水タンクを設け,水をいったんこれに受けてため,あらためて建物内にポンプで供給する方式である。受水タンクは外部からの汚水の流入を防ぐため地下は避け1階に設けるのが原則である。タンクからはポンプで直接各階に配る方法もあるが,一般には屋上の塔屋(高層建築物では約10階ごとの最上階)に高置タンクを設け,受水タンクから高置タンクまでをポンプで揚水し,各階の蛇口には高置タンクからの水圧で給水する。中高層の住宅や事務所,ビル,ホテル,大病院などはほとんどタンク式給水によっている。これは配水管内の水圧を現行以上に高めると漏水量が増大するほか,低層建物の給水装置にかかる水圧が過大になること,一時的な集中需要をすべて配水施設に受け持たせることは社会的に不経済であることなどのため,やむをえない方式と考えられている。タンク式給水では,受水タンクに水を受けたのちの水質管理責任は建築物管理者に移る。水の衛生的安全を保つために,タンクと配管設備は外部からの異物・汚水の混入や腐食に対して十分に保護されなければならない。さらに配管内での細菌繁殖を防ぐため,蛇口で所定の塩素濃度が保たれるよう,必要に応じて殺菌用塩素剤の再添加が必要である。タンク式給水においても水道法で定める水質基準に適合する水を供給すべきことが,法律に定められている。
給水系統に外部から汚水が混入したり,給水管内が低圧または負圧になったときに汚水を吸引したりすると,配管を通じて近隣へ汚水を給水するおそれがある。そのため給水栓を用水機器に直結して使用することは原則的に禁じられている。特例として水洗用大便器に直結される洗浄弁(フラッシュバルブ)には,水圧低下時でも水道管内へ汚水を吸い込まないよう特殊な空気弁が付されている。最近,給湯器,皿洗器,太陽熱温水器,湯水混合栓,自動給茶器,ユニットバスなど配水管の水圧を利用する直結使用の便利な機器が増えているが,これらは配管材料からの有害溶出物や汚水が水道管内へ逆流する危険をはらんでおり,技術審査に合格した機器以外は直結してはならない。また飲料水の配管設備に地下水系統や雑用水系統の配管を直接連結することは,弁類の誤用や故障による汚染の危険が高いので禁じられている。なお本来,落し込みで使用されるべき給水栓にホースなどをつけたとき,ホースの先端が浴槽,洗濯槽,池,プールなどの水面下に入っている場合にも汚水の逆流の危険がある。このように水道局から配水される水が質的に安全でも,建築物内の配管設備を通る過程で,水質的に劣化したり汚水の混入する危険があるので,蛇口から出る水の飲用水としての安全を保つためには,建物管理者や水使用者個人の責任も大きい。
→上水道
執筆者:小林 三樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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