つな【綱】
[1] 〘名〙
① 縄
(なわ)や紐などの太く強いものの
総称。植物の
繊維や
針金などを太く長くより合わせて丈夫にしたもの。
ロープ。
※
播磨風土記(715頃)餝磨「綱
(つな)落ちし処は、即ち藤丘と号け」
※枕(10C終)二七八「
御輿の
帷子の色つやなどのきよらささへぞいみじき。御つな張りて出でさせ給ふ」
② (比喩的に) すがってたよりとするもの。助けとなるもの。また、その人。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「鼠い此の梯を縁(ツナ)として上りて」
※
源氏(1001‐14頃)東屋「その方ならで、おもほし放つまじきつなも、侍るをなむ、とらへ所に、頼み聞えさするな」
こう カウ【綱】
〘名〙
① つな。おおづな。
※米欧回覧実記(1877)〈
久米邦武〉一「米国の
水運は、大河湖を仰ぎて其綱とし」
② おおもと。根本のきまり。
綱領。〔史記‐夏本紀〕
※続日本紀‐天平勝宝八年(756)一〇月丁亥「以二五分一論、三分徴レ綱、二分徴二運夫一」
④
生物の分類学上、門と目
(もく)の間に設ける自然群。普通、体制、
生殖器官、生活史など可塑性のほとんどない
生物学的特徴を基準にし、万国命名規約に従って定める。大進化の過程では、ほぼ綱に相当する自然群の
消長が歴史的に起こったとされる。たとえば
脊椎動物門では
哺乳類、
鳥類、
爬虫類、
両生類、甲骨魚類、
軟骨魚類、無顎類(円口類)の綱に分けられる。綱と目との間に
亜綱をおくこともある。〔植物小学(1881)〕
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デジタル大辞泉
「綱」の意味・読み・例文・類語
つな【綱】
1 植物の繊維や針金などをより合わせて長くつくったもの。ロープ。
2 心身が不安・危険な状態にあるとき、すがって頼みとするもの。「命の綱」「頼みの綱」
3 相撲で、横綱のこと。
[用法]つな・なわ・ひも――太さでは、一般的に綱、縄、紐の順に細くなる。材料・形状については、綱は繊維や針金をより合わせたもの。縄は主に稲のわらをより合わせたものだが、他の材料を用いる場合に、「麻縄」「しゅろ縄」などのように言うこともある。◇「紐」は繊維をより合わせたもののほか、紙・布・ゴムなどのより合わせていないものにも言う。◇用途面では、「綱」は主に、何かを支えたり引っ張ったりする。「命綱をつけて海に飛び込む」「引き綱」。「縄」は「罪人を縄で縛る」「薪を縄で縛って担ぐ」など縛るのに用いる。「紐」は結び付けることに用途の中心がある。「靴紐を結ぶ」◇外来語「ロープ」(英語)は「綱」「縄」の範囲で「紐」は含まない。「ザイル」(ドイツ語)は、もっぱら登山用の綱。
[類語]縄・紐・荒縄・細引き・テープ・鎖・しめ縄・命綱・帆綱・ロープ・ザイル
こう〔カウ〕【綱】
生物分類学上の基本階級の一。門の下、目の上に位置する。
[補説]門と綱の間に亜門や上綱などの階級が置かれることがある。例えば、脊索動物門の脊椎動物亜門に属する顎口上綱は哺乳綱・鳥綱・爬虫綱・両生綱・条鰭綱(硬骨魚類の大部分)・軟骨魚綱などに分けられる。
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つな【綱】
繊維をそろえて撚り(より)をかけ,物を結んだりする材料には,糸,紐,縄,綱などがあるが(〈糸〉〈紐〉および〈ロープ〉の項目参照),これらには厳密な区別はない。日常的には糸が最も細く,紐,縄と太くなり,綱が最も太いものを指すことばとして用いられることが多い。 古くは葛を〈都那(つな)〉と称した。綱は実用的な用途のほか,綱引き,蛇綱,綱掛けなど神事や呪術にも多く用いられる。綱はしめ縄や横綱の綱も含めて標(しめ)として内と外の境や神域を表示し不浄や穢を隔離するところから,正月には〈綱掛け祭〉といって大綱を村の出入口や境にかけ悪疫や災厄が村に侵入するのを防ぎ,村の一年の平安を祈願する行事がある。
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綱
こう
生物を分類するとき類別に用いる一段階の名称。門(もん)と目(もく)の間に置かれる段階であって、通常かなり広い範囲にわたる生物群を包含するが、それらは外見が多様であっても、共通した明らかな特徴を備えている。たとえば、脊椎(せきつい)動物門には綱として無顎(むがく)類(円口類)、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類が含まれ、外見からも明らかに区別できるが、脊椎をもつことで共通している。ただし、分類するとき各類をどの段階に置くかは学者間でかならずしも一致しないし、また研究の進展によっても変わってくる。
[中根猛彦]
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綱【つな】
ロープとも。繊維・針金などを太く長く撚り合わせたもの。一般に縄より太いものを指すことが多い。古くから綱引き,綱掛けなどの神事にも用いられてきた。物揚げ・伝動等工業用のほか漁業・林業等に広く使用される。各種の麻ロープ,ワイヤロープ等があり,最近は軽くて柔軟で強力な合成繊維を使用したナイロンロープ,テトロンロープ等が用いられている。
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綱
つな
rope
繊維または鋼線を長くより合せたもので,物を結びつなぐのに用いるほか,産業用などに多くの用途をもつ。古くから植物繊維あるいは獣・魚皮 (極寒地) を材料とするものが,あらゆる民族により用いられた。現在では用途に応じて用材も多様化し,天然繊維によるもののほか,合成繊維によるもの,鋼線をより合せたものなど種類も多数ある。用途は漁具,船具などの水上用から,運輸,鉱業,林業,建築業などで用いる陸上用まで幅広く,またスポーツ用 (登山用ザイルなど) ,家庭用としても重要な用途がある。
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綱 つな
1756-1769 江戸時代中期の女性。
宝暦6年生まれ。若狭(わかさ)(福井県)遠敷(おにゅう)郡の奉公先で明和6年6月11日,主家の幼児の子守中に狼(おおかみ)におそわれ,自らはかまれながらも幼児をまもり死んだという。14歳。のち領主酒井氏によって「忠烈綱女之墓」と刻した碑がたてられた。
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世界大百科事典内の綱の言及
【分類学】より
…命名については国際動物(植物)命名規約によって方法が規定されている。 分類群の階級としては,種speciesを基本的な単位として,それより上級に属genus,科family,目order,綱class,門division(動物ではphylum)などが設けられ,それらの間にもいくつかの階級を設けてもよいことになっている。種以下の分類群としては,動物の命名規約では,亜種subspeciesだけが認められているが,植物の場合には,亜種のほかに変種variety,亜変種,品種などの階級も認められている。…
【ロープ】より
…細い繊維を集めて左撚り(より)をかけて単糸(ヤーン)にし,これを数本ないし数十本集めて右撚りをかけて子縄(ストランド)にし,ストランドを三つ,四つ,または八つ撚り合わせるかまたは組むことによって作った長い繊維索。綱,縄,ひも(紐)はだいたいの大きさで繊維索を分別したもので,狭義にロープは綱をさす。一般に綱は単糸が複数本の子縄からできているもの,縄は1本の単糸の子縄から成るものをいう。…
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