せん‐こう ‥カウ【線香】
〘名〙
※御湯殿上日記‐文明一〇年(1478)六月一一日「大とく寺のせんちう、せんかう、御うちわまいらせらるる」
※
俳諧・続虚栗(1687)冬「年の市線香買
(かひ)に出
(いで)ばやな〈
芭蕉〉」 〔本草綱目‐芳草・線香〕
② (①が一本ともるあいだを単位として金を計算したところから) 特に、①のうち、花街で
芸娼妓の揚代
(あげだい)を計算するのに用いるもの。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「せん香が消てしまへば壱人酒」
※侘しすぎる(1922)〈
佐藤春夫〉一三「その代り線香は
自腹を切りますよ」
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デジタル大辞泉
「線香」の意味・読み・例文・類語
せん‐こう〔‐カウ〕【線香】
1 白檀・丁字・沈香などの香料の粉を松やになどで練り固めて線状にしたもの。火をつけて仏前に供える。
2 「線香代2」の略。
「その代り―は自腹を切りますよ」〈佐藤春夫・侘しすぎる〉
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線香
せんこう
練香(ねりこう)・抹香(まっこう)を線状にこしらえたもの。原料は沈香(じんこう)、丁字(ちょうじ)、白檀(びゃくだん)、麝香(じゃこう)などで、燃焼を助けるための松脂(まつやに)、接着材として蜜(みつ)や糊(のり)、それに黄土、緑、茶、黒などの染料を加えて練り、底に多くの穴をあけた容器に入れて押し出し、切って乾かす。杉の葉を干して香水をふりかけてつくったものも多く出回っている。中国では竹を芯(しん)にして香を塗り固めたものがあるが、日本ではみかけない。香は元来、香木の多いインドなど熱帯地方に発達し、体臭などを消すことがおもな目的であったが、早くから仏教に結び付き、心の浄化作用の面が強調された。また簡便な形の香ということで線香が考案された。日本には江戸時代の初期に中国から伝来し、仏教行事や葬式・供養のとき、香炉の灰に立ててくゆらす。死者の枕元(まくらもと)に立てるときは、霊が迷わぬようにと1本だけ立て、また煙のなびく方角から霊の行方を考えたりすることもある。沖縄では神祭りにも広く用いられ、本州でも火の神を祭るためにいろりの灰に立てる例がある。落雷除(よ)けの呪法(じゅほう)として、蚊帳(かや)の中にこもって線香を燃やすことも広く知られている。火もちがよいので灸(きゅう)のときにも使う。便所に立てて臭みを消すことにも使われた。蚊取線香は除虫菊の成分を混ぜて、渦巻状につくったものである。
[井之口章次]
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せんこう【線香】
法会や葬送の際に仏壇や墓地などで焚かれる線状の香。仙香,繊香,綫香,長寿香とも記す。沈香(じんこう),丁子(ちようじ),白檀(びやくだん),安息香などの香料を松やになどで固めてつくる。《和漢三才図会》は楡(にれ)の皮の糊に海蘿(のり)を加えてつくれば折れにくいと記す。焼香は古くから行われ,《日本書紀》皇極天皇元年(642)条に,法会で蘇我蝦夷が香炉を取り,焼香礼拝したとある。当時は粉末の抹香(まつこう)を焚く方法であり,平安時代には蜜などで香料を丸状に固めた練香(ねりこう)を焚く方法も生じた。
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線香【せんこう】
法会や葬儀の際などにたく線状の練香(ねりこう)。焼香の風は古くからあり,はじめは粉末の抹香(まっこう)がたかれたが,平安時代には丸く固めた練香も用いられた。線香は16世紀に中国から伝わり,17世紀には日本でも作られた。白檀(びゃくだん),丁子(ちょうじ),沈香(じんこう)などに接着剤(糖蜜,蜂蜜,松脂(まつやに)),整形剤(タブノキの甘皮),着色剤等を加えて練る。低級品に杉の葉を用い合成香科を加えた杉線香もある。ほかに室内の芳香用の香水線香,蚊取線香等がある。
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線香[仏壇・仏具]
せんこう
関東地方、茨城県の地域ブランド。
石岡市で製造されている。特に石岡市小幡地区は、国府の置かれた石岡や城下町の結城・土浦などに墓地が多く、親鸞などの影響もあって宗教的行事が定着していたこと、原料の杉や動力資源など筑波山塊の自然条件が適していたことなどを理由に古くから線香の産地であった。石岡の線香は、茨城県内産の杉の葉を製粉化し、練り上げ、押し出し機で線状にし、陰干しか天日干しで乾燥させてつくられる。製粉化する際には、水車の動力を用いた臼杵を使用。現在まで続く小幡の製造業者は、昔ながらの伝統を守り生産している。茨城県郷土工芸品。
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普及版 字通
「線香」の読み・字形・画数・意味
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