精選版 日本国語大辞典 「署名」の意味・読み・例文・類語
しょ‐めい【署名】
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行為者の同一性を示し、行為者の責任を明らかにするために行為者が自己の氏名を手書き(自署)すること。種々の法分野で用いられる。
(1)文書の署名 一般の私文書、公文書には自署が要求される。日本では署名だけでなく、捺印(なついん)(押印)も同時に要求されることが多い。署名を欠く行為は原則として無効である。しかし、例外も少なくない。戸籍の届出では署名し、印を押すべき場合に、印を有しない者は署名するだけで足りるし、署名することができないときは氏名を代書させ、印を押すだけで足りる。署名することができず、かつ印を有しないときは氏名を代書させ、拇印(ぼいん)するだけで足りる(戸籍法施行規則62条)。刑事手続でも署名・押印すべき場合に署名できないときは他人に代書させ、押印することができないときは指印しなければならない(刑事訴訟規則61条)。商法、会社法、手形法、小切手法上の署名は記名捺印でかえることができる。なお、天皇の署名を親署といい、詔書などに用いられる。なお、他人名義の文書を作成することを文書偽造といい、文書偽造罪になる。また、印章・署名を偽造または不正使用したり、偽造した印章・署名を使用すると、印章偽造罪になる。
(2)法律・政令の署名 法律・政令には内閣総理大臣が主任の国務大臣として署名し、または主任の国務大臣とともに連署する(憲法74条)。法律については執行の責任、政令については制定と執行の責任を明らかにするためである。
(3)直接請求の署名 地方自治法上、住民が条例の制定改廃、議会の解散、議員・長などの役職者の解職などを請求する直接請求の制度が認められているが、その請求が成立するためには一定数以上の選挙権者の連署と押印を必要とする。何人(なんぴと)であるかを確認しがたい署名は無効とされる。違法署名運動には刑罰が科せられる(地方自治法74条以下)。
(4)条約の署名 条約締結の交渉がまとまったとき条約当事国の全権委員は署名する。これを調印ともいう。これにより条約の内容は確定するが、条約が成立するためには通常、国会の承認を要する。
(5)選挙運動の署名 選挙運動に関しては署名運動は禁止されている(公職選挙法138条の2)。
そのほか、原水爆禁止や物価値上げ反対、安保条約反対の署名など、事実上の領域においても、署名は広範な分野において用いられる。
[阿部泰隆]
「署」には書く、表書きをするなどの意があり、中国、日本では美術作品に作者が自己の名あるいは雅号を記すことをいう。この習慣が広く行われるようになったのは、近世・近代になってからのことで、古くはあまり例をみない。たとえば飛鳥(あすか)・奈良時代の絵画の遺品には署名は見当たらず、彫刻(仏像)には銘文を刻んで作者名を記入したものもあるが(例、法隆寺金堂(ほうりゅうじこんどう)釈迦三尊像(しゃかさんそんぞう)、四天王像(してんのうぞう))、署名にあたらない。平安時代の絵画の作品、仏画や絵巻にも署名はないが、仏画の場合とくに礼拝する対象として描かれたものであって署名を必要としなかった。鎌倉時代に入ると、絵巻や仏像彫像に作者の名を付することがしばしばみられる。とくに運慶・快慶の場合、仏像の胎内に直接墨書きしたり(円成寺(えんじょうじ)大日如来像(だいにちにょらいぞう))、胎内に納入する銘札に名を記したりしている(浄楽寺阿弥陀三尊像(あみださんそんぞう))が、快慶は仏像の足の枘(ほぞ)に「安阿弥(あんなみ)」と自号を刻書したものがみられる(三十三間堂千手観音像(せんじゅかんのんぞう))。室町時代になり水墨画が盛んになると、雪舟など多くの画家は画面の隅に署名をするようになったが、寺院の障壁画などにはほとんど署名をする例はみられない。江戸時代になると絵画では署名をすることが普通になり、仏像作者では円空、木喰(もくじき)など像の背面に墨書したり、のみで名を刻んだものが多い。
[永井信一]
西洋の美術作品に施された、通常、サインとよばれる署名signatureの歴史は、紀元前6世紀のギリシアの壺絵(つぼえ)にその起源をみることができる。中世にはまれにしかみることができないが、作者の個我意識が目覚めるとともにルネサンス以降からは一般化していく。ピサーノ、ジョット、ベッリーニらの工房銘が早い例である。署名に付して制作年を示す年記dateは紀元後14、15世紀から現れている。デューラーなどのように署名のかわりとしてモノグラムmonogramを用いることもある。これは通常、作者のイニシアルを装飾的に組み合わせた複合文字である。モノグラムによってのみ認知されている作家もあり、たとえば「ESの版画家」などとよばれている。署名は、作品の完成を自認して作者自身の手で最後に記されるのであるから、作者の責任を公的に示すものである。それゆえ、作品研究や真贋(しんがん)鑑定のうえで重要な手掛りとなっている。また、複数制作の版画ではサインの有無によって商品価値が大きく異なるのでとくに重視される。署名は美術作品を構成する、欠かせない一要素である。
[大井健地]
字通「署」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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…製本工程のうち最もたいせつな作業で,ここで〈乱丁〉(折丁の前後をあやまってとったもの),〈落丁〉(まちがって折丁をとりおとしたもの),〈取込み〉(おなじ折丁を重複してとったもの)などのまちがいをおこせば,どんな豪華な装丁の本ができても本としての本質的な価値は失われることになる。これらのあやまりを未然に防ぐため,印刷のとき折丁の背部に丁合印の〈背標signature〉を刷りこむことがある。これがあれば,丁合の不正もすぐ発見できる。…
※「署名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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