羊羹(読み)ようかん

精選版 日本国語大辞典 「羊羹」の意味・読み・例文・類語

よう‐かん ヤウ‥【羊羹】

〘名〙 (「かん」は「羹」の唐音)
棹物一種中国羊肉の羹(あつもの)原形とするもの。古くは禅宗文化とともに渡来したが、日本では小豆を主原料として羊の肝の形につくって蒸し、汁に入れて供された。後、蒸し物のまま茶菓子として供されるようになったのが蒸し羊羹の始まりで、今日ふつうに見られる、砂糖を加えた餡(あん)寒天を混ぜて煮つめた練り羊羹は、江戸時代につくられた。栗羊羹柿羊羹水羊羹芋羊羹などがある。
庭訓往来(1394‐1428頃)「点心者〈略〉羊羹。驢腸羹。猪羹
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一「其色羊羹(ヤウカン)に近づきたるに」
③ 羊羹紙でつくったタバコ入れ。江戸の江戸橋で売り出された。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
煉瓦を縦に半分に切ったものをいう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「羊羹」の意味・読み・例文・類語

よう‐かん〔ヤウ‐〕【羊×羹】

《「かん(羹)」は唐音
棹物さおもの和菓子の一。あんに砂糖を入れて蒸し、あるいは寒天液を加えて練ったもの。蒸し羊羹練り羊羹水羊羹など。
羊羹色ようかんいろ」「羊羹紙ようかんがみ」の略。
[類語]練り羊羹蒸し羊羹栗蒸し羊羹水羊羹芋羊羹外郎ういろう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「羊羹」の意味・わかりやすい解説

ようかん【羊羹】

和菓子の一種。現在は甘みの菓子であるが,もともとは中国で古くからつくられていた羊肉の羹(あつもの),つまり汁であった。日本で初めて〈羊羹〉の語が見られるのは南北朝~室町初期に成立した《庭訓往来》などの往来物においてであり,このときすでに汁でなくなっていた。また,本来〈ようこう〉と読むべきものを〈ようかん〉というようになっていた。《庭訓往来》などには,点心の品目として鼈羹(べつかん),猪羹(ちよかん),驢腸羹(ろちようかん)などとともに羊羹,砂糖羊羹の名が見られるが,それらは〈惣(そう)じて羹は四十八かんの拵様(こしらえよう)有りといへども,多くは其の形によりて名有り〉と《庖丁聞書》にあるように,〈羹(かん)〉と総称され,スッポンの形にすれば鼈羹,猪(ブタ)の形にすれば猪羹といったぐあいに,形によっていろいろな呼名がつけられていたようである。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「羊羹」の意味・わかりやすい解説

羊羹【ようかん】

和菓子の棹物(さおもの)の一種。もとは中国から伝わった羊肉の(あつもの)であったが,材料をアズキに代え,甘味を加えて菓子に発展させたもの。アズキ餡(あん)に砂糖,小麦粉を加えて煮つめて蒸す蒸羊羹と,寒天を加えてねり固める練羊羹に大別され,寒天を多くし冷やし固める水羊羹もある。餡にはクリ,サツマイモ,ユリ根等も使用され,岐阜県大垣市の柿羊羹,長野県小布施の栗羊羹など地方名物も多い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羊羹」の意味・わかりやすい解説

羊羹
ようかん

和菓子の一種。禅宗文化とともに中国から渡来したもので,当時は蒸し羊羹であった。蒸し羊羮は,小麦粉,浮粉,食塩を練り,砂糖を混ぜてふかしてつくるが,水分が多く糖分が少いので腐りやすい。練り羊羹は,寒天と砂糖とあんをよく練りながら煮つめて固めたもので,水分が少く砂糖が多いので貯蔵性がよい。水羊羹は,練り羊羹の水分が多いものである。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「羊羹」の解説

ようかん【羊羹】

和菓子の一種。あんを主に寒天を用いたり蒸したりして固めたもの。練りようかん蒸しようかん水ようかんなどがある。◇「かん」は唐音。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

とっさの日本語便利帳 「羊羹」の解説

羊羹

もとは中国から渡来した料理の一種で、羊肉で作ったとろみのあるスープだった。羊肉を食べなかった日本では、小豆を蒸して羊の肝の形に作り汁に浮かべて代用し、後に羊肝形の小豆の蒸し物だけで供されるようになり、現在の菓子につながる。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

普及版 字通 「羊羹」の読み・字形・画数・意味

【羊羹】ようこう

羊汁。

字通「羊」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

少子化問題

少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...

少子化問題の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android