改訂新版 世界大百科事典 「聖年」の意味・わかりやすい解説
聖年 (せいねん)
Year of Jubilee
Holy Year
旧約聖書《レビ記》25章10節以下に見られる〈ヨベルの年〉から出た習慣。ヨベルとはヘブライ語で角から作られたらっぱを意味し,安息日の思想と実践を年に移した〈安息の年〉の原理をさらに拡大した七週年(7×7年)が満了した翌年の50年目を,解放,恩赦の年(大安息年)としてらっぱの吹奏で告知したことに由来する。ヨベルの語とラテン語jubilum(〈喜びの叫び〉の意)との連想もあって,のちに慶事の50年目を喜びの年または日として祝う〈金祝golden jubilee〉の習慣が起こった。他方,カトリック教会では,ローマ巡礼などの一定の宗教行為に免償(贖宥)を付与する年を布告して始める聖年大赦が慣習となった。15世紀には,ローマのサン・ピエトロ大聖堂の〈聖年の門〉を教皇が槌で打って聖年を開始するといった習慣もすでに見られる。現代では,聖年に当たる年にはキリストの生涯をはじめ,教会の重要なできごとを記念するとともに,信者が信仰生活を深め,教会の相互扶助などのために献金するようなことに向けられている。
執筆者:土屋 吉正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報