聴力検査(読み)ちょうりょくけんさ

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「聴力検査」の解説

聴力検査


伝音難聴感音難聴の区別をする検査です。耳鳴りめまいの原因解明などにも、この検査を行います。検査前は騒音を避け、補聴器ピアスなどは外します。

難聴の原因と程度を判定する検査

 おもに、音がきこえにくくなった(難聴)ときに行う検査です。難聴は、耳の伝音系(外耳から鼓膜)の異常による場合、感音系(内耳から聴覚神経)の異常による場合、また、両者が障害されておこる混合性に分けられます。

 一方、難聴の原因としては、老人性、中毒性(ストレプトマイシンなどの薬物服用)、内耳炎中耳炎外傷腫瘍でおこるもの、さらに原因不明の突発性などがあります。

 聴力検査では、伝音難聴と感音難聴の区別をします。

 その他、耳鳴り、めまいの原因解明のためや、耳の炎症(外耳炎、中耳炎、内耳炎)、メニエール病、外傷(鼓膜損傷)、神経腫瘍、顔面麻痺まひなどのときにも、この検査を行います。

老人性難聴では高い音がきこえにくくなる

 音は、大きさ(デシベル)と波長ヘルツ)の組み合わせできこえます。老人性や中毒性の難聴では、鈴のような高い音(波長が大きい)がきこえにくく、メニエール病では、男性の声のような低音がきこえづらくなります。

■難聴の程度

 縦軸dBはデシベルといい、音の大きさを表す。20dBより上(弱い音)が聴こえるのが正常。

 本例は、左聴力が低下(×)し、感音性難聴(])を示している。


約10~15分で終了

 防音された検査室で、オージオメーターという機械を使って検査します。

 まず、ヘッドホーン(気道聴力用)を両耳に当て、よくきこえるほうの耳から検査をします(反対側の耳は遮音しておく)。断続的な音(1秒に2拍の音)が出るのをききとり、きこえたらボタンを押し、だんだん波長を上げ(高い音)、次に波長を下げながら(低い音)調べます。約10分で終了します。

 以上の検査で聴力に異常があったら、次に感音性障害か伝音性障害かを区別するために、骨導聴力用イヤホーンをつけて検査します。

 きこえにくいほうの耳たぶの後ろにある骨に骨導端子を当て(よいほうの耳は遮音して)、異なった波長の音がききとれるかどうかを調べます。

 約15分ですべて終了します。

音楽やラジオをききながらの来院は禁止

 検査前は、騒音の環境を避けます。ヘッドホーンで音楽やラジオをききながら、来院しないでください。

 補聴器は使用しないで検査します。イヤリングやピアスは外します。

 体調ストレス)で結果が変動することがあるので、体調の悪いときは日を改めます。

疑われるおもな病気の追加検査は

◆メニエール病→平衡機能検査、頭部CT、眼振検査など

医師が使う一般用語
「ちょうりょくけんさ」

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「聴力検査」の意味・わかりやすい解説

聴力検査 (ちょうりょくけんさ)
audiometry
hearing test

聴覚検査ともいい,〈きこえ〉の能力を測定する検査をいう。耳の遠い人について,難聴の程度と性質を測定することにより社会生活上における適応能力をはかり,また難聴の原因を診断する目的をもって行われるが,今日,きわめて重要な検査となっている。検査音には厳密に規定された純音および語音,雑音などが使用され,方法には被検者の応答による自覚的検査と生体電気現象などを応用した他覚的検査がある。また特殊な方法として,音の与え方をくふうした幼児聴力検査,および学童,騒音環境下の作業者を対象とした選別聴力検査などがある。最も基本的な検査は純音オーディオメーターによって行われる。この装置は125Hzから8000Hzまで,オクターブごとに7段階の周波数の純音が,任意の強さで発振されるものであり,やっとききとれる聴力レベル,すなわち最小可聴域値をそれぞれの周波数別に結んだオーディオグラムaudiogramを作成することによって,難聴の程度を診断することができる。さらに検査音を気導受話器(いわゆるイアホンで,これによる検査法を気導測定という)と骨伝導型の受話器(これによる検査法を骨導測定という)で測定した二つのオーディオグラムを比較することにより,難聴の発生部位が中耳伝音系か内耳以後の感音系であるかを知ることができ,精密聴力検査の出発点となる。また日本では言葉による検査で〈ア〉〈サ〉などの単音節を用いるが,補聴器の適応などには重要な検査である。また難聴部位を鑑別するためには,音の物理量と心理量が不均衡となるために生じるレクルートメント現象(補充現象)の有無をみる検査法が発達しており,これによって内耳の病気を鑑別することができる。また,方向感などを利用した両耳聴力検査によって聴覚中枢の病気が鑑別できることがある。他覚的聴力検査の代表例には,中耳の病態を推定できる中耳インピーダンス測定法,音刺激によって脳幹部から発生する特殊な脳波である聴性脳幹反応をコンピューターによって加算記録する方法がある。後者の方法は乳幼児の聴力の推定,難聴の鑑別に有用であり,近年急速に発達し,普及している。
聴覚
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「聴力検査」の意味・わかりやすい解説

聴力検査
ちょうりょくけんさ

大きく二つに分類できる。一つは耳の聞こえの程度を検査するものであり(狭義の聴力検査)、他の一つは耳の聞こえ方を調べ、それによって難聴をおこしている病巣部位を診断するもの(診断用聴力検査)である。音叉(おんさ)や肉声を用いることもあるが、通常はオーディオメーターを用いる。

 狭義の聴力検査では、種々の周波数の純音を用いて、どれくらい小さな音の強さまで聞こえるか(最小可聴域値)を測定することが多い(純音域値検査法)。しかし、日常の生活に必要な会話がどれくらい聞こえるかを知るためには会話音を用いた検査がよい。そのためには種々の会話音を録音しておき、それを再生しオーディオメーターを通して、音の強さを一定にして検査する(語音聴力検査)。語音の強さをしだいに小さくして、どの強さまで聞こえるかを測定する方法(語音域値検査)と、種々の語音を十分聞こえる強さで聞かせ、正しく聞こえるのが何%かを測定する方法(語音明瞭(めいりょう)度検査)とがある。そのために日本ではオーディオロジー学会で決められた語音表を使用するのが普通である。補聴器が適しているか否かを知るのにはこのような検査がよい。

 診断用聴力検査の種類はたくさんあるが、代表的なものをあげると、一つは骨を通って伝わる音を用いた骨導検査により伝音難聴と感音難聴を区別する。また、感音難聴のなかで、音の強さのわずかの変化を感知できるのは内耳性難聴、異常な順応を示すのが後迷路性難聴、方向感覚検査により中枢性難聴などを診断できる。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「聴力検査」の意味・わかりやすい解説

聴力検査【ちょうりょくけんさ】

音をきき取る能力の測定。純音聴力検査は純音オーディオメーターにより純音の可聴閾値を求めるもので,聴力損失は,正常最小可聴限を基準(0デシベル)として被検者の最小可聴限をデシベル単位で表す。そのほかレコードやテープに録音した単純な語音で聴力を測定する語音聴力検査などがある。

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とっさの日本語便利帳 「聴力検査」の解説

聴力検査

様々な周波数の音を聞かせることで行う検査。最も弱い音で聞くことのできる値を算出することにより、聴力障害の有無を判定する。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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