翻訳|brooding
孵化(ふか)した家禽の雛を育てることで,金網の籠で立体的に飼育するバタリー育雛と,電熱式の傘型育雛器を用いて平土間で飼う平飼い育雛がある。バタリー育雛は狭い面積で多羽数の飼育ができ,また衛生管理の面でも利点があるが,施設費のかかること,機械化が難しく省力ができないことなどの欠点もある。そのため比較的小規模な経営の産卵養鶏では前者が広く利用され,大規模経営のブロイラー養鶏では後者が多用されている。初生雛は体内に卵黄が残っているので孵化後48時間は餌も水もいらない。卵用鶏の場合はこの期間中に雌雄鑑別を行って不用な雄を淘汰する。餌づけ後は餌入れに飼料がいつでも入っているように不断給餌を行う。水も十分に与える。また幼雛には給温が必要であり,最初の1週間は約33℃に保ち,つづいて1週間ごとに3℃ずつ下げて3~4週間で外気温と一致したときに給温を中止する。保温に留意するあまり換気をおろそかにしてはならない。育雛期に多発する疾病としてはコクシジウム症,鶏痘,雛白痢などがある。鶏舎,機具の消毒を完全にし予防薬の飼料への添加,ワクチンの使用などで発生を防ぐ。栄養疾患としては脚弱症がある。飼料中のミネラルやビタミンの不足が原因となる。このほか雛を群飼する場合には尻つつきや食羽などの悪癖が発生して悩まされることが多い。これには栄養も関係しており,飼料中のカロリーとタンパク質との比が高すぎると起こりやすい。タンパク質が低くならぬように注意し,飼育密度にも気を配る必要がある。この対策としては5~8週齢の雛の上くちばしの2/3,下くちばしの1/3を電熱を利用した断嘴(だんし)器で切り取る断嘴も行われている。
→養鶏
執筆者:正田 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鳥類の親が、子である雛(ひな)を育てること。鳥類では哺乳(ほにゅう)類と同じく、生まれた子を放置せず、一定期間育てる習性がよく発達している。育雛のなかには、雛の保温、給餌(きゅうじ)、外敵の回避、排糞(はいふん)などが含まれる。孵化(ふか)後まもなく歩き出せる早成性の雛がいるキジ類やガンカモ類では、親鳥は雛を連れて、はやばやと巣を離れ、雛と行動をともにしながら世話をしていく。スズメ、ツバメ、シジュウカラなどの小鳥類のように、自分ではほとんどなにもできない晩成性の雛がいる鳥では、親鳥は巣内にいる雛に食物を運んでやる。また、巣内で雛がした糞は食べてしまうか、巣から離れた所まで捨てにいく。このタイプの親鳥は、巣立ち後もしばらくは雛の世話をする。育雛は一般に、雌雄1羽ずつのつがいで繁殖する鳥では雌雄両方が、フウチョウ類やライチョウのように一夫多妻や乱婚形式で繁殖する鳥では雌だけが行う。なお畜産用語として用いられる場合は、ニワトリやシチメンチョウの雛を、電熱器などを使って育てることをさす。
[樋口広芳]
…ウズラやヒバリのように親鳥が傷ついたまね(擬傷)をして,捕食者に自分を追わせひなのいる場所から遠ざける鳥もいる。孵化したひなが未成熟で羽毛も生えず,目もあいていないような場合(晩成性または留巣性),親鳥は長期間,餌を運んで育雛(いくすう)する。巣は一般に樹上,洞穴など安全な場所につくられる。…
…このようなわけで鳥類は爬虫類と違って,孵化した子どもは独立生活ができないから,さまざまな程度に親鳥の世話になる。こうして鳥類は造巣,抱卵,育雛(いくすう)といった独自の繁殖生活を送ることになっているのである。
[育雛]
育雛は早成性の雛の場合は比較的単純で,とくに自分で採餌ができるカモやチドリでは親鳥は雛を連れて歩いて危険を知らせるだけである。…
※「育雛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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