胃潰瘍(読み)いかいよう

精選版 日本国語大辞典 「胃潰瘍」の意味・読み・例文・類語

い‐かいよう ヰクヮイヤウ【胃潰瘍】

〘名〙 胃壁損傷粘膜下組織にまで達した疾患。幽門付近あるいは、小湾、後壁等に潰瘍ができる。原因としては、胃液消化説、自律神経不調和説などあるが、確定はしていない。疼痛出血過酸症などが主な症状。〔増訂医語類聚(1878)〕

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デジタル大辞泉 「胃潰瘍」の意味・読み・例文・類語

い‐かいよう〔ヰクワイヤウ〕【胃潰瘍】

胃壁に潰瘍ができる疾患。みぞおちの痛み、胸焼け吐血などがみられ、大出血や胃穿孔いせんこうを起こすこともある。

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百科事典マイペディア 「胃潰瘍」の意味・わかりやすい解説

胃潰瘍【いかいよう】

胃液の消化作用が重要な因子となる,消化性潰瘍の一つ。胃液分泌の攻撃因子と粘膜の抵抗力の防御因子のバランスがくずれることによって生じる。たとえば,アルコール,コーヒー,香辛料などの機械的な刺激や,ストレスなどで攻撃因子が強くなり,病気,血行障害,ストレスなどで防御因子が弱くなると,バランスはくずれる。さらに近年,胃・十二指腸潰瘍患者にピロリ菌ヘリコバクター・ピロリ)が認められることから,この菌も重要な因子と目されている。ほとんど小彎(わん)側に発生する。40歳以上の男性に多い(女性の2〜3倍)。体重減少,便秘,疲労感,貧血を伴い食後20〜30分にみぞおちから左肋骨弓下に疼痛(とうつう)を認める。便の潜血反応,X線検査,胃カメラ等によって確診される。胃癌に移行することはないが,発生部位ならびに症状が近似するため,鑑別が必要である。内科的療法とくに食事療法を主とするが,大出血,穿(せん)孔,幽門狭窄(きょうさく),癌化の疑いある場合および癌性潰瘍に対しては手術を行う。なお食事は以前よりも早期に高カロリー食をとらせるようになり,治癒期間も短縮された。
→関連項目胃液検査胃拡張胃穿孔胃痛H2ブロッカー十二指腸潰瘍心身症幽門狭窄

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胃潰瘍」の意味・わかりやすい解説

胃潰瘍
いかいよう
gastric ulcer

胃壁の粘膜から筋層に及ぶ組織欠損による潰瘍性病態で,欠損の深さによって4段階に分けられる。胃液による自己消化による病気という考えから,十二指腸潰瘍とあわせて「消化性潰瘍」といわれる。症状の特徴は潰瘍痛といわれるきりきりする痛みで,食後1~2時間で起り,初めは飲み物や軽い食物をとると治まる。胃液が過酸になるので,げっぷ,胸焼けなどの症状も多くみられる。原因は炎症説,中枢神経説,栄養障害,アレルギーなど種々の説があるが,ストレスによるものも多いといわれる。診断は胃液検査,便検査,X線検査,内視鏡検査などにより比較的容易であるが,胃癌との鑑別が大切なので,内視鏡的生検 (バイオプシー) も行われる。治療は潰瘍治療薬も多くできているので,内科的にもなおりやすいが,また再発もしやすい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胃潰瘍」の意味・わかりやすい解説

胃潰瘍
いかいよう

胃液にさらされている胃壁の組織欠損で、一般には同じ原因でおこる十二指腸潰瘍とともに、消化性潰瘍ともよばれる。

[編集部]

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世界大百科事典 第2版 「胃潰瘍」の意味・わかりやすい解説

いかいよう【胃潰瘍 gastric ulcer】

胃壁が内側からえぐられ組織欠損を起こした状態をいう。胃壁の欠損が表面の粘膜にとどまるものを糜爛(びらん)と呼び,粘膜下層より深い組織欠損を潰瘍と呼んで区別することが多い。大部分の潰瘍は,なんらかの原因によって胃の組織が胃液の酸やペプシンに消化されて生じるもので,消化性潰瘍とも呼ばれている。これに反して,癌,結核,梅毒などの病変が胃にあり,明らかな原因によって生じるものを特殊胃潰瘍として消化性潰瘍と区別している。

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栄養・生化学辞典 「胃潰瘍」の解説

胃潰瘍

 潰瘍とは,皮膚や粘膜表面の症状で,これが胃粘膜に起こると胃潰瘍.しばしば炎症をともなう組織表面の損傷によって起こる.

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世界大百科事典内の胃潰瘍の言及

【胃X線検査】より

…本法はとくに隆起性病変の検査にすぐれた方法である。現在のX線診断は小さな胃潰瘍とか微小早期胃癌のある種のものはX線検査およびX線診断では明りょうに描写されているにもかかわらず,手術によって胃漿膜からは病変部を確認できず,切開して胃壁を露出して初めて病変を確認したり,病理組織標本で確診に結びつく場合が多くなった。これほどに胃X線検査およびX線診断の技術は進歩している。…

【胃癌】より

…他の病気との関係では,悪性貧血患者に胃癌が多いことが知られている。胃潰瘍や胃ポリープが胃癌に変化すると考えられた時代もあったが,現在では,その可能性はむしろ少ないと考えられている。一方,胃粘膜の中に腸型の上皮が出現してくる腸上皮化生とよばれる変化は,胃癌と密接な関係があると考えられている。…

【胃穿孔】より

…穴があいても大網や膵臓などの隣接臓器によっておおわれる場合を被覆性穿孔といって区別する。穿孔は胃潰瘍の合併症として起こることが最も多く,その他,胃癌や,誤飲した異物または外傷によって起こることもある。胃穿孔を起こすと胃内容が腹腔内にもれて,急性汎発性腹膜炎となるが,被覆性穿孔の場合には限局性腹腔炎や化膿巣をつくる。…

【胃排出機能検査】より

…食欲不振,食後の胃のもたれ,吐き気などの症状は,胃排出能が衰えている場合によくみられる。病気との関係は,胃潰瘍は一般に胃排出が遅れ,食べ物が長時間胃に停滞し,逆に十二指腸潰瘍では胃液酸度が高いにもかかわらず胃排出能が強まっているといわれている。胃排出能をしらべることは,潰瘍をはじめ多くの消化器疾患の成因,治療法の確立,潰瘍の再発予防などに重要である。…

【潰瘍】より

…潰瘍の病因には,物理的作用,組織損傷性の化学物質,微生物による炎症,循環障害,神経性因子が挙げられる。胃潰瘍は消化性潰瘍といわれるが,胃酸分泌過多,胃壁を保護する粘液の減少,それにストレスなどの神経要因が加わって,胃酸による粘膜の自己消化が進行し,潰瘍形成に至る。胃潰瘍と鑑別すべきものに,胃癌の潰瘍化がある。…

【十二指腸潰瘍】より

胃潰瘍と同様に,胃液が消化管を消化することによって発生する消化性潰瘍。胃の幽門輪を越えた十二指腸入口から約3cmの間,十二指腸球部と呼ばれる部位に発生する。…

【腹痛】より

…痛みは上腹部から臍部にかけて持続的にみられ,左背部から肩にかけて放散することが多い。膵炎
[穿孔性腹膜炎]
 腹膜炎のうちで最も多いもので,胃潰瘍,十二指腸潰瘍の穿孔によって生じるもので潰瘍部が破れて腹腔内に胃内容や腸内容がもれて広範囲に腹膜炎を起こすものである。それまで潰瘍を有している人に多くみられるが,まったく潰瘍を自覚しなかった人にも突然発病することがある。…

※「胃潰瘍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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