精選版 日本国語大辞典 「脱硫」の意味・読み・例文・類語
だつ‐りゅう ‥リウ【脱硫】
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一般には物質中の硫黄(いおう)あるいは硫黄化合物を除去することをいう。現在では二つの目的のために行われており、第一は、大気汚染防止を主目的とするもので、燃料の脱硫および燃焼後の煙道ガスの脱硫(排煙脱硫)である。第二は、触媒を用いて化学反応を行う場合に、触媒活性を著しく低下させる硫黄化合物を除去することを目的とするもので、化学原料の脱硫である。
[八嶋建明]
含有する硫黄化合物をアルミナ担持(保持)コバルト‐モリブデン硫化物、あるいはニッケル‐モリブデン硫化物触媒を用いて高温高圧下で水素化し、硫化水素として除去する水素化脱硫法が行われている。対象となるのはおもに石油系燃料であるが、液化石油ガス(LPG)、ナフサ、灯油などの軽質留分は脱硫しやすく、重油など重質留分になるほど困難になる。市販の灯油は、1996年(平成8)より硫黄分80ppm(ppm=100万分の1)以下に、ガソリンおよび自動車用軽油は、2005年(平成17)より10ppm以下(サルファーフリー)に規制されている。
一方、重油の場合には、原油中に含まれる硫黄分が、重質留分中に濃縮されるほか、水素化脱硫自体が困難である。市販重油の硫黄含有率は、用途に応じて3.5~0.5%以下に規格上定められているが、都市部では、より低い硫黄含有率の燃料を使用するように規制されている。重油の脱硫法には、常圧残油をそのまま水素化脱硫する直接脱硫法と、常圧残油を減圧蒸留して減圧軽油と減圧残油とに分け、減圧軽油を水素化脱硫したのちにふたたび減圧残油と混合し、全体として硫黄分を低減する間接脱硫法とがある。直接脱硫法では、より高温高圧の反応条件を必要とするために、間接脱硫法の割合が多くなっている。重油はおもに工場等の規模の大きな燃焼装置で用いられるので、煙道ガスの脱硫(排煙脱硫)により硫黄酸化物の環境中への排出を防いでいる。
硫黄を含む燃料を燃焼したときの煙道ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx、おもに二酸化硫黄)の除去は排煙脱硫法とよばれる。日本の排煙脱硫の技術水準は世界的にも高い。
[八嶋建明]
化学原料中に硫黄化合物が含まれると、とくに金属触媒とは強い相互作用を示し、触媒の表面が硫黄化合物で覆われてしまうために、触媒活性は大きく低下してしまう。そこで、水素化・脱水素、水素化分解など金属触媒を用いるプロセスでは、水素化脱硫プロセスを前処理装置に用いて、原料をあらかじめ脱硫(石油の分野では水素化精製ということが多い)するようにしている。
[八嶋建明]
一般に,種々の物質から硫黄原子または硫黄化合物を脱離,除去することをいうが,狭義には,気体または液体燃料,とくに大気汚染の防止を主目的として,石油各留分からの硫黄分の除去をさすことが多い.
(1)石油の脱硫法としてもっとも多く行われている方法は,水素化精製(水素化脱硫)法で,主として硫化コバルト-硫化モリブデン触媒を用い,加圧水素と反応させて硫黄分を硫化水素として除去する.ナフサ,灯油,軽油,重油などに適用され,軽油以下の留出油では,この方法により硫黄化合物の大部分が除去される.しかし,重油では触媒が重質原料油中の重金属成分(バナジウムなど)による被毒やアスファルト分により汚染されやすく,その完全脱硫は困難ではあるが,近年,しだいに進歩している.一方,重油を熱分解してガス化した後,硫黄分を硫化水素として除き,脱硫ガス体燃料として用いるガス化脱硫法,重油を燃焼して煙道ガス中の二酸化硫黄を各種の方法で除去し,大気汚染を防止する排煙脱硫なども行われている.なお,ガソリンの主要部分を占める改質ガソリンでは,接触改質の前処理として原料重質ナフサの水素化精製により脱硫が行われる.また接触分解ガソリンでは,触媒の作用により分解と同時に脱硫反応も併起する.このため,いずれのガソリンも硫黄分はごく少ないが,10 ppm 以下にするには,製品の脱硫が必要である.また,ディーゼル燃料(軽油)においても,硫黄分10 ppm 以下にするには,より過酷な反応条件とともに高性能な触媒が開発されている.
(2)一般的な脱硫として,純有機硫黄化合物からの硫黄原子の除去には,通常,ラネーニッケル触媒を使用する還元法を用いる.
(3)石炭,コークスから得られる工業ガスや天然ガス中の硫化水素の除去には,各種の塩基性水溶液による化学吸収法,各種の有機溶剤を用いる物理吸収法,キノン系化合物を用いる酸化法,モレキュラーシーブを用いる吸着法などが適用される.
(4)粗金属に含有される硫黄を除去するには,精錬によって行う.
[別用語参照]直接脱硫法,間接脱硫法
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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