自己中心性(読み)じこちゅうしんせい(英語表記)egocentrism

精選版 日本国語大辞典 「自己中心性」の意味・読み・例文・類語

じこちゅうしん‐せい【自己中心性】

〘名〙
自己本位に考え、他人のことを考えない性質
心理学で、幼児思考に見られる特性ピアジェ用語自分と自分をとりまく外界とを、はっきりと区別することができない性質。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「自己中心性」の意味・読み・例文・類語

じこちゅうしん‐せい【自己中心性】

ピアジェの用語。乳幼児の思考様式の特徴で、事象を自分の立場あるいは一つ視点からしか分析・認識できないこと。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自己中心性」の意味・わかりやすい解説

自己中心性
じこちゅうしんせい
egocentrism

事象を客観的に第三者の立場、あるいは複数の視点から分析・認識できず、主観的に、自分の立場、あるいは固定した一つの視点だけから分析・認識する認知・思考の仕方をいう。心理学者のJ・ピアジェは、児童の思考はこのような性格をもつと考え、自己中心的思考と名づけた。さらに、前述のほか、自己の行為や操作についての内省反省や、相対的関係判断が不可能であること、知覚的に際だった特徴にこだわり総合的判断に欠けること、矛盾意識がないことなどの特徴を指摘した。統合失調症(精神分裂病)、ヒステリーなどの病的状態の際も、このタイプの思考がしばしば生じる。道徳的な意味での利己主義とは異なる。

[天野 清]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「自己中心性」の意味・わかりやすい解説

じこちゅうしんせい【自己中心性 egocentrism】

自分自身の視点を中心にして周囲の世界を見ること。ピアジェはこれを子どもの思考の特徴として指摘した。自分以外の視点に立てないため,たとえば,自分の左右がわかっても他人の左右がわからないように,ものの客観的関係を理解することができない。さらに自分自身を客観的に見ることができないため,自分の考えを意識したり,活動を反省したりすることもない。子どもの思考に論理性が乏しく,思いついたままのことを何の関連もつけずに次々と並べたてるだけですませてしまうのもそのためである。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自己中心性」の意味・わかりやすい解説

自己中心性
じこちゅうしんせい
egocentrism

J.ピアジェが,幼児の精神構造の特徴を表わすために用いた概念で,もっぱら自己を中心に据えた視点から外界に働きかけ,視点を変えたり,視点と視点の関係をとらえたりすることのできない時期の特徴をさす。こうした性質は,空間知覚,言語,知的作業など,さまざまな側面について認められる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典内の自己中心性の言及

【エゴイズム】より

…その場合彼はエゴイズムの語をエゴティズムの意味で用いている。 要するに,自律性と秩序志向の両方をまったく欠いた自己中心性をエゴイズムの極限形態とみなすなら,この両者のうち自律性が増すにつれてエゴイズムはエゴティズムと呼ばれるにふさわしくなり,さらにそのうえに秩序志向が加わってくると個人主義と呼ばれるにふさわしくなる,ということができよう。利他主義【作田 啓一】。…

【喧嘩】より

…子どもがけんかをよくするのは,子どもはそのときその場の自分のものの見方,感じ方,考え方,行動のしかたに強くこだわるからである。この自己中心性のために,子どもはそのとき,その場の自分を強く主張したり,他者や集団を自分本位的に理解して,争いを起こす。しかし,子どもはけんかを通じて他者や集団を知り,自分自身を知るなかで,自他の要求を対等に扱い,それらを正しく関係づけ,集団を自主的に統制することのできる自我をつくり出していく。…

※「自己中心性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

インボイス

送り状。船荷証券,海上保険証券などとともに重要な船積み書類の一つで,売買契約の条件を履行したことを売主が買主に証明した書類。取引貨物の明細書ならびに計算書で,手形金額,保険価額算定の基礎となり,輸入貨...

インボイスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android