出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(1)質点の位置を表すには,空間に適当な座標軸をとってx,y,z座標を与えればよい。これら3変数が時間tの関数としてx=f1(t),y=f2(t),z=f3(t)の形で与えられれば,その運動は確定する。水平面上の運動のような平面運動であれば,変数はx,yの二つでよい。座標は直交座標とは限らず,平面運動を極座標r,θで表すように,他の適当な変数を用いてもよい。二つの原子A,Bが結合した2原子分子なら,xA,yA,zA,xB,yB,zBを用いてもよいし,重心の座標X,Y,ZとABの距離l,分子軸の方向を示す二つの角θ,φの計6個を用いてもよい。このような,力学系の配置や運動状態を示すのに必要な座標あるいは変数(一般化座標という)の数を自由度という。したがって2原子分子の自由度は6,平面運動する質点の自由度は2である。2原子分子でlが一定という条件がつくと自由度は5に減少する。物体の変形を無視して剛体とみなせば自由度は6である。
(2)熱平衡状態にある物質系(例えば蒸気(気相)と共存するアルコール水溶液(液相))を,その原子的構造を考えずに巨視的に扱えば,その平衡状態は圧力,温度,体積,濃度など少数の熱力学的変数(状態量ともいう)の値によって規定される。しかも,これらのうちでかってな値をとらせることのできるものの数は限られていて,これらの値が決まるとほかは自動的に決まってしまう。この任意の値をとらせることのできる熱力学的変数の数を系の自由度という。もっとも簡単な1成分1相系(例えば純粋気体)では自由度は2である。
→相律
執筆者:小出 昭一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一つの系において変形させることができる度合いを、その系の自由度という。
(1)力学系の自由度 系の配位を指定する座標のうち任意に独立な変化をさせられるものの数をいう。たとえば、質点の自由度は3である。なぜなら、その位置を指定するのに(直角座標系なら、x、y、zの、極座標ならr、θ、というように)三つの座標が必要で、それらは、質点を動かすことにより独立に任意に変えられる。変形しない固体(剛体)の自由度は6である。なぜなら、剛体内の任意の3点の座標(9個)を与えると剛体の向きも含めて配位が定まるが、3点の相互の距離は変わらないので、座標の間に三つの関係があり、自由に変えられる座標は6個になる。剛体の1点(たとえば重心)の位置を指定するのに3個の座標、その点を固定して剛体の向きを指定するのに3個の角を用いる必要があり、つまり自由度は6になる。しかし、たとえばこの剛体が摩擦のある平面の上を滑らずに転がる場合には、6個の座標は独立には変えられない。球形の剛体なら、平面から球の中心までの距離は変わらないので自由度は5になる。さらに、球が転がっていくとき、球の回転角と中心の位置の移動の量は独立ではない。したがって自由度は5より小となる。しかし、一般に滑りのある場合には、球の回転角と中心の位置の関係を表す関数はないことが示されるので、この球の運動を記述するには5個の座標を用いざるをえない。この種の力学系を非ホロノーム系とよぶ。
(2)熱力学的自由度 熱平衡の状態にある物質系において相の数を変えることなしに変化させることのできる状態変数の数をいう。ギブスの相律によれば
(自由度)=(成分の数)-(相の数)+2
が成り立つ。
[江沢 洋]
相平衡にある一つの系の状態を完全に規定するために必要な独立変数(温度,圧力,各成分の濃度)の数を自由度あるいは自由度の数という.たとえば,水と飽和水蒸気の一成分二相系の平衡では,温度(または水蒸気圧)を規定すれば水蒸気圧(または温度)は自動的に決まるから,両者は独立な変数ではなく,この系の自由度は1である.自由度と成分の数および相の数との間には相律による一定の関係がある.[別用語参照]一変系,二変系,三変系
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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