自転(読み)じてん

精選版 日本国語大辞典 「自転」の意味・読み・例文・類語

じ‐てん【自転】

〘名〙
① 軸を中心回転すること。
※松ケ岡本人天眼目抄(1471‐73)上「生死事大无常迅速と大事は風車の自転して迅速なる処に有ぞ」
② 特に、天体がその内部を通る軸(自転軸)を中心として回転すること。自転運動。⇔公転
※遠西観象図説(1823)中「地球一自転する毎に 無度五十九分零八秒進む」

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デジタル大辞泉 「自転」の意味・読み・例文・類語

じ‐てん【自転】

[名](スル)
自分で回転すること。
天体が、それ自身の内部にある軸の周りを回転する運動。→公転
[類語]公転軌道運行

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自転」の意味・わかりやすい解説

自転
じてん

天体が重心を通る直線の周りを回転すること。地球の自転周期は平均23時間56分4.0905秒(恒星日)であるが、1年かけて太陽の周りを公転しているため太陽に対する地球の自転周期は24時間になる(太陽日)。自転による地球表面の動きは中緯度でも時速1000キロメートルを超え、遠心力によって地球の赤道部分は外に張り出す。その結果、地球は楕円(だえん)を短軸の周りに回転してできる回転楕円体の形状を示す。ただし赤道半径(地球の中心から赤道に至る距離)と極半径(地球の中心から北極または南極を結んだ線の距離)の差は20キロメートルあまりにすぎない。自転による遠心力が働くため地表で計測される重力の大きさは緯度によって変化し、赤道での値は極での値に比べて0.5%ほど小さくなる。地球の衛星である月や木星の四大衛星など、中心星の潮汐(ちょうせき)力の影響が強い天体では自転周期はしばしば公転周期と同じになる。

 地球の自転は1960年代までは時刻の定義の直接の基準とされていたほど規則正しいが、地質学的な時間の経過に伴い徐々に遅くなってきたことが知られている。また自転速度より正確な原子時計が実用化され、それに基づいて位置天文学観測がなされた結果、自転速度はわずかではあるが、さまざまな周期で複雑に変化することがみいだされた。地球は地殻やマントルなどの固体部分と、流体核や大気海洋などの流体部分からなるが、角運動量(回転の勢い)保存の法則に従って地球の流体部分と固体部分の角運動量の和が保存される。偏西風のような緯度線に沿って吹く風(帯状風)の強弱に伴って大気の角運動量が変動するが、それを補償するように固体地球の回転速度が変動する。数年より短い周期の自転速度変動のほとんどはこのような帯状風の変動によるものである。10年以上の周期の変動は流体核とマントルの電磁的な結合によるものとされているが、その原因の詳細はわかっていない。現在の世界時は原子時計の刻みに基づいているが、自転速度の変動にあわせて、ときおり「閏秒(うるうびょう)」を挿入することによって地球自転による時の刻みとの乖離(かいり)を一定以下に保つくふうがされている。

 なお自転速度変動以外にも地球自転軸の乱れに相当する章動や極運動がある。自転の変動は地球の内部構造と活動を反映する貴重な情報源であり、天文学と地球物理学の境界にある学問分野として研究の対象となっている。

[日置幸介]

『若生康二郎編『現代天文学講座 第1巻 地球回転』(1979・恒星社厚生閣)』『デイヴィッド・E・フィッシャー著、中島龍三訳『地球の誕生――空間と時間と想像力のうた』(1991・法政大学出版局・りぶらりあ選書)』『パリティ編集委員会編『地球大循環とエルニーニョ』(2003・丸善)』

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世界大百科事典 第2版 「自転」の意味・わかりやすい解説

じてん【自転 rotation】

天体がその重心を通る軸のまわりに回転する現象である。複数の天体が共通重心のまわりを回る公転に対する語。回転の軸を自転軸,1回の回転に要する時間を自転周期という。一般に自転の状態は,自転軸の方向と自転周期によって定まる。地球の自転の場合,自転軸は天の北極を向き自転周期は1恒星日である。 天体の自転周期の測定には,天体の種類に応じていくつかの方法がある。太陽系の天体で表面に模様が見える場合は,その移動を観測して決める。

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百科事典マイペディア 「自転」の意味・わかりやすい解説

自転【じてん】

天体が自分の重心を通る軸(自転軸)のまわりに回転する運動。公転の対。1回転に要する時間を自転周期といい,天体表面の模様の移動,天体表面で反射されるレーダー電波の解析,変光の周期などから求められる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自転」の意味・わかりやすい解説

自転
じてん
rotation

天体がそれ自身の直径の一つを軸として回転すること。天体が他天体の周囲を軌道運動する公転に対する言葉。

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世界大百科事典内の自転の言及

【恒星】より

…また,若い星と考えられているおうし座T型星やフレア星も低温度星ではあるが活動的な輝線を示す。
[恒星の自転]
 自転によって手前にくる部分と遠ざかる部分とでは,ドップラー効果により吸収線の波長が長短にずれるから,本来細い吸収線であっても星全体からの寄与では幅の広いものとなる。このことから逆に恒星の自転速度の視線成分がわかる。…

【地球】より

…軌道半長径=1天文単位(1億4959万7870km)離心率=0.0167太陽からの距離 最小=1.471×108km平均=1.496×108km最大=1.521×108km公転周期=365.256日 平均軌道速度=29.78km/s赤道半径=6378km体積=1.0832×1027cm3 質量=5.974×1024kg平均密度=5.52g/cm3自転周期=0.9973日 赤道傾斜角=23゜.44アルベド=0.30赤道重力=9.80m/s2 脱出速度=11.18km/s太陽系内の一惑星。月を衛星にもつ。…

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