日本大百科全書(ニッポニカ) 「航海計器」の意味・わかりやすい解説
航海計器
こうかいけいき
船の航行に必要な情報を得るための計測器具。次のように分類される。
(1)角度測定用計器 天体の水平線からの高度角や、陸上の物標の水平角を測定する六分儀。方位測定用計器としては、磁気コンパス(羅針盤)、ジャイロコンパス、電波の到来方向を知るための電波方位測定機がある。
(2)速力測定用計器 一般にログlogとよばれる。水中を曳航する回転体の回転数から速力を計算する回転翼式ログ、ピトー管の原理(水圧は流水の速力の2乗に比例)を応用した圧力式ログ、ファラデーの法則を応用して電極間の電圧によって速力を知る電磁ログ、船の前進によって生ずる超音波のドップラー効果を利用したドップラーログなどがある。
(3)水深測定用計器 超音波を利用する音響測深機がおもなものである。古典的な計器として、ロープの先におもりを吊(つ)るした形式の測深機や、同じ形式のレッドlead(測鉛)とよばれるものもある。
(4)距離測定用計器 代表的なものはレーダーである。レーダーは物標方位も測定でき、船などの探知にも威力を発揮している。レーダーはまた衝突予防装置のセンサーとしても重要である。現在ではあまり使用されていないが、光学的測距儀もある。
(5)位置測定用計器 電波航法計器が多く、ロラン、デッカ、オメガなどの双曲線航法装置や衛星航法装置がある。
(6)時間測定用計器 日常用いる時刻のほかに、天測による位置決定に時計が必要であり、クロノメーターchronometerが利用される。最近では、ぜんまい式の手巻きクロノメーターよりも電子式のものが多い。
(7)気象測定用計器 とくに船専用のものはなく陸上で一般に使用されるものと同じである。
(8)制御用機器 もっとも重要なのはオートパイロット(自動操舵(そうだ)装置)である。コンパスから方位信号を受けて船の針路を制御するもので、自動的に保針する有効な省人化装置である。
(9)GPS global positioning system 衛星航法装置の一種で全地球測位システムなどと訳され、カーナビゲーションにも利用されている。
(10)電子海図(ECDIS) 海図をブラウン管に表示し、それにレーダー映像や、GPSによる船位を重畳できるので、航海システムの中心的存在になってきた。
このほかにも航海計器といわれるものは多いが、とくに最近のように船舶の自動化が進むと、計測器や制御機器の種類が多くなり、航海計器の範囲も広がってきている。
[飯島幸人]