艶めかしい（読み）ナマメカシイ

デジタル大辞泉

なま‐めかし・い【^▽艶めかしい】

［形］［文］なまめか・し［シク］《動詞「なまめく」の形容詞化》
１ 姿やしぐさが色っぽい。あだっぽい。「―・い声」「―・くしなを作る」
２ 清新でみずみずしい。若々しい。
「あてに―・しう、二月ばかりのしだり柳のさましたり」〈紫式部日記〉
３ 優雅で気品がある。
「御簾押し上げて眺め給へるさま…若う―・しき御さまなり」〈源・若菜上〉
４ 物や情景などが美しく趣がある。風流である。
「七夕まつるこそ―・しけれ」〈徒然・一九〉
[派生]なまめかしげ［形動］なまめかしさ［名］
[類語]色気・色っぽい・あだっぽい・あだ・色香・艶っぽい・あでやか・濃艶・妖艶・あで姿・セクシー・チャーミング・コケットリー・コケティッシュ・官能的・肉感的・扇情的・性的・卑猥ひわい・淫猥いんわい・猥褻わいせつ・いやらしい・淫靡いんび・淫乱・みだら・みだりがわしい・いかがわしい・エッチ・エロ・エロチック・セクシュアル・不身持ち・不品行・ふしだら・不行状・不行跡・淫蕩・好き者しゃ・好き者もの・色好み・色情狂・色気違い・自堕落・エロい・好色・多淫・放蕩・遊蕩・邪淫・荒淫・姦淫かんいん・淫奔いんぽん・漁色・酒色・すけこまし・ジゴロ・尻軽・きわどい・淫婦・女たらし・女狂い

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

なま‐めかし・い【艷めかしい】

1. 〘 形容詞口語形活用 〙
   [ 文語形 ]なまめかし 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「なまめく」の形容詞化 ) さりげなくふるまうさまから、奥ゆかしい、優美であるの意となって、中古の女流文学などに多く用いられた。
2. ① 人の容姿、態度などについていう。優美である、上品である、もの柔らかである。「あて」や「清ら」などとともに用いられることが多い。
   1. [初出の実例]「はづかしう、なまめかしき顔姿にぞ物し給へる」(出典：宇津保物語（970‐999頃）楼上上)
   2. 「花の中におりて、童(わらは)べとまじりてありき給ふは〈略〉あてに、にほひやかに、なまめかしく見え給ふ」(出典：夜の寝覚（1045‐68頃）五)
3. ② 特に若い女性などの容姿をいうことが多いところから、次第に女性の若い魅力をいうようになり、後世は、女性の性的魅力を、さらに性的魅力一般を表現する語となる。色っぽい。つやっぽい。
   1. [初出の実例]「けさうなどのたゆみなく、なまめかしき人にて、暁に顔つくりしたりけるを」(出典：紫式部日記（1010頃か）寛弘五年九月一一日)
   2. 「艷(えん)なるねくたれの姿なまめかしうて」(出典：浜松中納言物語（１１Ｃ中）三)
   3. 「この媚(ナマメ)かしくもふしだらな葉子の丸寝姿を」(出典：或る女（1919）〈有島武郎〉前)
4. ③ 広く一般の物品などに対していう。優雅である。優美である。
   1. [初出の実例]「なまめかしきもの〈略〉薄様の草子」(出典：枕草子（１０Ｃ終）八九)
   2. 「侍従は、大臣(おとど)の御は、すぐれてなまめかしうなつかしき香なり、とさだめ給」(出典：源氏物語（1001‐14頃）梅枝)
5. ④ 人の性質・心柄や、情景・風物などについて、情趣のあるさま、趣を解するさまなどをいう。風流である。
   1. [初出の実例]「醍醐(だいご)ときこえさせ給けるぞ、なまめかしき御門におはしましければ」(出典：延喜御集（967‐1000頃）)
   2. 「神楽(かぐら)こそ、なまめかしく、おもしろけれ」(出典：徒然草（1331頃）一六)

艶めかしいの語誌

( 1 )「源氏物語」までの用例では、王朝風上品・優美な感覚美を基調としてはいるものの、女性の性的官能美や華麗に飾り立てた美を押え込んだ、深みのある精神美と同調する優雅さを意味する。特に「源氏物語」では、さりげない振舞い・飾り付け等から、自然ににじみでる高雅な精神性に裏打ちされた美を形容した用法が特徴的に見られる。
( 2 )平安後期になると、②の挙例「浜松中納言物語」など官能的であるさまを形容する用法が見え始める。中世には、王朝風を懐古する文脈中に、王朝風用例も残存はするが、南北朝期以降は、女性の性的官能美を触発する、媚態に重点が置かれるようになる。

艶めかしいの派生語

なまめかし‐げ

1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

艶めかしいの派生語

なまめかし‐さ

1. 〘 名詞 〙

出典　精選版 日本国語大辞典