花田清輝(読み)ハナダキヨテル

デジタル大辞泉 「花田清輝」の意味・読み・例文・類語

はなだ‐きよてる【花田清輝】

[1909~1974]評論家小説家。福岡の生まれ。現代の変革をモチーフにした評論および芸術運動組織者として活躍。評論「復興期の精神」、小説「鳥獣戯話」など。

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精選版 日本国語大辞典 「花田清輝」の意味・読み・例文・類語

はなだ‐きよてる【花田清輝】

  1. 評論家、小説家、劇作家。福岡市生まれ。京都帝国大学中退。早くから経済・文化評論を書き、戦時下も時流に抗した評論活動を展開。昭和二一年(一九四六)「復興期の精神」を刊行。大胆なレトリックを駆使した評論によって戦後批評界の一方の雄と目された。評論「自明の理」「アヴァンギャルド芸術」、小説「鳥獣戯話」「小説平家」、戯曲「ものみな歌でおわる」などがある。明治四二~昭和四九年(一九〇九‐七四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花田清輝」の意味・わかりやすい解説

花田清輝
はなだきよてる
(1909―1974)

文芸評論家、小説家、劇作家。明治42年3月29日、福岡市生まれ。京都帝国大学英文科中退。1940年(昭和15)、中野秀人(ひでと)、岡本潤らと『文化組織』を創刊、奇抜なレトリックと弁証法を駆使したエッセイを発表、評論集『自明の理』(1941)、『復興期の精神』(1946)によって評論家としての地位を確立した。第二次世界大戦後は『近代文学』『新日本文学』などに拠(よ)り、文学演劇、映画など幅広く芸術的プログラムを提示、知識人の硬直した論理や感傷的ヒューマニズムを批判しつつ、現実変革のための前衛理論の確立に努めた。「前近代的なものを否定的媒介として近代を超える」という命題と、『復興期の精神』以来のルネサンス的人間への関心は、のち小説・劇作の分野で具体的に展開され、『鳥獣戯話』(1960~1962)、『爆裂弾記』(1962)、『小説平家』(1967)、『室町小説集』(1973)などの作品を生んだ。評論集に『アヴァンギャルド芸術』(1954)、『近代の超克』(1959)、『日本のルネッサンス人』(1974)など多数がある。昭和49年9月23日没。

[石崎 等]

『『花田清輝全集』15巻・別巻2(1979~1980・講談社)』『小川徹著『花田清輝の生涯』(1978・思想の科学社)』『宮内豊著『ある殉死 花田清輝論』(1979・講談社)』『岡庭昇著『花田清輝と安部公房――アヴァンガルド文学の再生のために』(1980・第三文明社)』『『花田清輝の世界』(1981・新評社)』『絓秀実著『花田清輝 砂のペルソナ』(1982・講談社)』『平野栄久著『流行と不易――花田清輝論』(1982・近代文芸社)』『好村冨士彦著『真昼の決闘――花田清輝・吉本隆明論争』(1986・晶文社)』『関根弘著『シリーズ民間日本学者 花田清輝――二十世紀の孤独者』(1987・リブロポート)』『池内紀編『日本幻想文学集成29 花田清輝』(1994・国書刊行会)』『石井伸男著『転形期における知識人の闘い方――甦る花田清輝』(1996・窓社)』『菅本康之著『フェミニスト花田清輝』(1996・武蔵野書房)』『土井淑平著『尾崎翠と花田清輝――ユーモアの精神とパロディの論理』(2002・北斗出版)』『乾口達司著『花田清輝論――吉本隆明/戦争責任/コミュニズム』(2003・柳原出版)』『粉川哲夫編『花田清輝評論集』(岩波文庫)』

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20世紀日本人名事典 「花田清輝」の解説

花田 清輝
ハナダ キヨテル

昭和期の評論家,小説家,劇作家



生年
明治42(1909)年3月29日

没年
昭和49(1974)年9月23日

出生地
福岡県福岡市東公園

学歴〔年〕
京都帝大英文科中退

主な受賞名〔年〕
サンデー毎日大衆文芸(第8回)〔昭和6年〕「七」

経歴
大学在学中の昭和6年「サンデー毎日」懸賞募集大衆小説部門に「七」が入選。11年中野正剛の東方会に参加。14年、中野秀人、岡本潤らと文化再出発の会を結成し「文化組織」を創刊。16年第1評論集「自明の理」(のち「錯乱の論理」と改題)を刊行。戦後は21年「復興期の精神」を刊行し、さらに綜合文化協会、夜の会などを結成、前衛的芸術運動をこころみた。23年日本共産党に入党するが、党指導部を批判し、36年除名。27年「新日本文学」の編集長となるが、29年内紛のためにおろされる。その後「ものぐさ太郎」「泥棒論語」を発表し、小説家、戯曲作家としても活躍。「鳥獣戯話」「ものみな歌でおわる」「室町小説集」などの作品がある。34年、三々会を結成して演劇刷新運動を展開。35年には記録芸術の会を結成して「現代芸術」を創刊するなど、多方面で幅広く活躍し、評論集「アヴァンギャルド芸術」「映画的思考」「近代の超克」などを刊行。「花田清輝著作集」(全7巻 未来社)、「花田清輝全集」(全15巻・別巻2 講談社)がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「花田清輝」の意味・わかりやすい解説

花田清輝 (はなだきよてる)
生没年:1909-74(明治42-昭和49)

評論家,作家。福岡市生れ。1931年,京大選科在学中に《サンデー毎日》の小説募集に応じて《七》が入選。昭和10年代には主として《文化組織》に評論を発表,戦後にそれらを編成した《復興期の精神》(1946)を出し,ユニークな評論家として注目された。やや難解なレトリックに満ちているが,現代を〈転形期〉として見すえながら変革をめざすその思想は,広い影響力を持った。52-54年《新日本文学》編集長を務める。《アヴァンギャルド芸術》(1954),《大衆のエネルギー》(1957)などを通じて芸術運動の新方向を開拓し,他方,埴谷雄高,吉本隆明らとの論争を通じて,政治における心情主義を批判し,自身の立場を示した。60年代以後は小説をも執筆し《鳥獣戯話》(1962),《小説平家》(1967)などがあり,また戯曲《ものみな歌でおわる》(1964)なども知られる。文学における自閉症的な孤独を冷笑する風刺精神は,そのレトリックとともに,ひときわ異彩を放った。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花田清輝」の意味・わかりやすい解説

花田清輝
はなだきよてる

[生]1909.3.29. 福岡
[没]1974.9.23. 東京
評論家。第七高等学校を経て 1931年京都大学英文科中退。第2次世界大戦中から抵抗精神を韜晦した文体に託した評論活動を続け,戦後,それらを集めた『復興期の精神』 (1946) ,『錯乱の論理』 (47) で脚光を浴びた。岡本太郎と前衛芸術運動の母胎として「夜の会」を結成 (48) ,野間宏,安部公房らと「記録芸術の会」を結成 (58) した。『近代文学』同人となり,52~54年『新日本文学』の編集長をつとめた。ほかに評論集『アヴァンギャルド芸術』 (54) ,『近代の超克』 (59) ,『もう一つの修羅』 (61) などがあり,また小説にも手をつけ,『鳥獣戯話』 (62) ,『ものみな歌でおわる』 (64) などを書いた。

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百科事典マイペディア 「花田清輝」の意味・わかりやすい解説

花田清輝【はなだきよてる】

評論家,小説家。福岡市生れ。京大英文科卒。第2次大戦中雑誌《文化組織》を編集,1946年に《復興期の精神》としてまとめられる評論を掲載,戦時下におけるユニークな批評活動として高く評価される。戦後は新日本文学会などに所属し特異な評論家として活躍。現代を〈転形期〉ととらえ,その論理と精神を探り,変革へと結びつけようというその思想は,大きな影響力をもった。評論集《錯乱の論理》《アバンギャルド芸術》のほか,小説《鳥獣戯画》《俳優修業》などや戯曲《泥棒論語》《ものみな歌でおわる》などもある。全集(14巻・別巻3)がある。
→関連項目岡本太郎近代文学

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「花田清輝」の解説

花田清輝 はなだ-きよてる

1909-1974 昭和時代の評論家,小説家,劇作家。
明治42年3月29日生まれ。昭和15年中野秀人(ひでと)らと「文化組織」を創刊,評論を発表して「復興期の精神」にまとめた。戦後は新日本文学会に属し,前衛芸術運動を推進した。昭和49年9月23日死去。65歳。福岡県出身。京都帝大中退。作品に小説「鳥獣戯話」,戯曲「泥棒論語」など。

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367日誕生日大事典 「花田清輝」の解説

花田 清輝 (はなだ きよてる)

生年月日:1909年3月29日
昭和時代の評論家,小説家,劇作家。「新日本文学」編集長
1974年没

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