草分(読み)くさわけ

精選版 日本国語大辞典 「草分」の意味・読み・例文・類語

くさ‐わけ【草分】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 草深いところを、分けながら行くこと。また、そういう場所。
    1. [初出の実例]「蘆屋潟、ちろりがたつく草分の、道を早みて里を過」(出典:浄瑠璃・日本武尊吾妻鑑(1720)二)
  3. 土地を開拓して、一村一町の基礎をきずくこと。また、その人。
    1. [初出の実例]「五人の子ども田地あらそひ〈卜尺〉 草分の名主も終は老にほれて〈松臼〉」(出典:俳諧・談林十百韻(1675)下)
  4. 初めて物事を創始すること。また、その人。創始者
    1. [初出の実例]「二十二、三年昔から福江湾のノリソダの種付をやっております。わしらが草分けでさあ」(出典:ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉八)
  5. くさわき(草脇)
    1. [初出の実例]「殿原、草分(クサワケ)のかふ・そじしのはづれ・肝のたばね・舌の根、鹿の実には能き処ぞ」(出典源平盛衰記(14C前)三六)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「草分」の意味・わかりやすい解説

草分
くさわけ

江戸時代荒れ地を開拓して新しく町村を設立することで、それに従事した者や設立当時からの住民を、草分町人、草分百姓という。草創とも書き、草切(くさきり)、芝切(しばきり)、根生(ねおい)とも称した。草分の町人や百姓は、町村内で高い家格をもち、町役人や村役人を世襲することが多く、草分の呼称は、多分に共同体秩序を維持するための権威づけとして行われた。村の草分百姓は、五軒(七軒)百姓とよばれ、日当り水利の便のよい場所に屋敷地を構え、とくに大高持(おおたかもち)を草分地主といった。町役人のなかでも、草分名主は特権的地位を占めていた。たとえば、江戸の草分名主は、江戸開府以前から居住していた者か、徳川氏に従って三河遠江(とおとうみ)から移住してきた者の子孫にあたる町名主で、年頭および江戸城大礼の際には登城が許されていた。

[馬場 章]

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旺文社日本史事典 三訂版 「草分」の解説

草分
くさわけ

その地を最初に切り開いた開拓者
村では,最初に開発・入村した百姓で,名主・庄屋など旧家が多い。町方でも,早くから都市づくりに参加し移住した者を草分町人と呼んだ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「草分」の意味・わかりやすい解説

草分
くさわけ

江戸時代,原野などを開拓して新町村を立てることをいった。また開村開町に貢献した人をいい,彼らは草分百姓,草分町人などと呼ばれた。

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