荒涼(読み)コウリョウ

デジタル大辞泉 「荒涼」の意味・読み・例文・類語

こう‐りょう〔クワウリヤウ〕【荒涼】

[名・形動]
荒れ果ててものさびしいこと。また、そのさま。
「三千代は自分の―な胸のうちを」〈漱石それから
漠然として要領を得ないこと。また、そのさま。
「題の本意もなくすこぶる―なる方もあり」〈無名抄
軽はずみに物事を行うこと。うっかりすること。また、そのさま。
「―に物を難ずまじきなり」〈無名抄
物の言い方が尊大であること。また、そのさま。
「―の申し様かな」〈平家・九〉
[ト・タル][文][形動タリ]風景などが、荒れ果ててものさびしいさま。また、生活や気持ちなどが荒れすさんでいるさま。「荒涼としたツンドラ平原」「荒涼たる心境
[類語]殺風景寂しい寂寥せきりょう寂寞せきばく索莫さくばく落莫らくばく蕭然しょうぜん蕭蕭しょうしょう蕭条しょうじょう蕭殺しょうさつ寥寥りょうりょう寂然じゃくねん・せきぜん

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精選版 日本国語大辞典 「荒涼」の意味・読み・例文・類語

こう‐りょうクヮウリャウ【荒涼】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動ナリ・タリ )
  2. 風景などが荒れはててものさびしいこと。気持が荒れすさんでいること。また、そのさま。荒寥
    1. [初出の実例]「荒凉霊沼龍還駐、寂歴稜岩鳳更尋」(出典:凌雲集(814)奉和聖製宿旧宮応製一首〈藤原冬嗣〉)
    2. 「劇烈なる男児の荒涼が、春霞の如き婦人の聖愛に包まれて始めて和楽を得」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉五)
    3. [その他の文献]〔孔稚珪‐北山移文〕
  3. 漠然としていて要領をえないこと。つかみどころがないこと。また、そのさま。また、確かな根拠がなくいいかげんであること。また、そのさま。広量
    1. [初出の実例]「右歌いづらに来つつは見るぞ、頗荒涼也」(出典:天徳四年内裏歌合(960))
  4. ( ━する ) 軽率であること。うっかりすること。不注意であること。また、そのさま。広量。
    1. [初出の実例]「荒凉して心しらざらむ人のまへにゆめがたりな、このきかせ給ふ人々、しおはしまされそ」(出典:大鏡(12C前)三)
  5. 器量の備わっていないこと。不適任。
    1. [初出の実例]「縦雖彼門弟、荒涼之人尤不相承、況他人乎」(出典醍醐寺文書‐文治二年(1186)八月二六日・沙門某処分状)
  6. 尊大なものの言い方であること。また、広言するさま。ぶしつけ。広量。
    1. [初出の実例]「参会したる大名小名みな、荒凉の申様かなとささやきあへり」(出典:平家物語(13C前)九)

荒涼の語誌

( 1 )漢語本来の意味は、「すさまじい」であるが、平安時代に男子の日常語として、原義から離れての「とりとめもない、でたらめ」という意味に転じ、中世には、の「うっかりと、無思慮に」という心的な意を内包するようになる。
( 2 )古くは、「色葉字類抄」に見える「荒涼」の表記が一般的であったが、の意で「今昔物語」には「広量」がもっぱら用いられている。→こうりょう(広量)

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普及版 字通 「荒涼」の読み・字形・画数・意味

【荒涼】こうりよう(くわうりやう)

荒れはててもの寂しい。斉・孔稚珪〔北山移文〕して、與(とも)に歸るもの無し。石逕涼として、徒(いたづ)らに佇(えんちよ)す(たたずむ)。

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