(読み)むしろ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「莚」の意味・わかりやすい解説


むしろ

筵、蓆などとも書く。蒲(がま)、菅(すげ)、竹(たけ)、藁(わら)などで編んだ敷物総称することが多い。稲藁は身近にある編みやすい素材であったことから、莚といえば藁莚をさすほどに受け止められている。往時は、農家にはかならず莚編み機が備わっていたほどで、農閑期に副業として莚を編んだ話が伝わる。群馬県の野反(のぞり)湖に近い村々では、湖岸に密生するイワスゲ(菅の一種)を刈り取ってきて莚編み用に使ったといい、山の口明けを期して一斉に採取、尻焼(しりやき)温泉(長笹沢川)に浸して編みやすくしたと伝えられている。莚の大きさは、幅約3尺(約90センチメートル)に長さが約6尺(約180センチメートル)と決まっていた。莚は畳以前の敷物として住生活に欠かせないものであっただけでなく、天日で干す穀類魚類の乾燥用、脱穀の際の囲い用、干物の包装用、手作りの酒造りにおいては蒸し米の放冷用などに広く利用された。雪国では、社寺板戸などを風雪から守るために莚が吊(つ)り下げられ、土間に敷かれて防湿の役割を果たした。折り曲げてかますにするとか、一部を切り取って幼児の汚物受けにするなどの利用法もあった。百姓一揆(いっき)の象徴とされた莚旗、廻船(かいせん)に使われた莚帆などは、莚の転用例である。薦(こも)より上等品とされ、保存に留意しながら生活に組み込まれてきた。

天野 武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「莚」の意味・わかりやすい解説

莚【むしろ】

イ,ガマ,わら,スゲ,タケなどで編んだ敷物の総称。平安〜鎌倉時代には室内用として寝殿造の床などに敷かれたが,畳が普及してこれにかわった。現在では一般にわら莚をさし板の間や土間に敷くほか,荷物の包装や叺(かます)(莚を二つ折りにして左右の端を縫い,袋状にしたもの。穀物石炭などを入れる)に使用される。→花莚

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