菅家文草(読み)かんけぶんそう

精選版 日本国語大辞典 「菅家文草」の意味・読み・例文・類語

かんけぶんそう クヮンケブンサウ【菅家文草】

平安前期の詩文集。一二巻。菅原道真作。昌泰三年(九〇〇)、道真みずから編して醍醐天皇に献上したもの。一~六巻に詩四六〇首あまり、七~一二巻に文一六〇編ほどを収める。詩は元稹白居易影響が強く、文は四六駢儷体美文に、平易で自由な散文が混ざる。「道真集」とも。

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デジタル大辞泉 「菅家文草」の意味・読み・例文・類語

かんけぶんそう〔クワンケブンサウ〕【菅家文草】

平安中期の漢詩文集。12巻。菅原道真著。昌泰3年(900)成立前半に詩468編、後半に賦・奏状願文などを収める。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「菅家文草」の意味・わかりやすい解説

菅家文草
かんけぶんそう

菅原道真(すがわらのみちざね)の漢詩文集。12巻。900年(昌泰3)8月、自ら編纂(へんさん)して醍醐(だいご)天皇に献呈した。成立の事情は道真の「家集を献ずる状」に詳しい。現存本は成立時の原形をほぼそのまま伝えている。巻1から巻6までは詩、巻7から巻12までは散文で、468首の詩と、賦(ふ)・序・詔勅・奏状・願文(がんもん)等の多様な文体の散文159首とを収める。平安朝漢詩人の詩文集としてもっとも大部なものである。11歳時の初めての詩作から成立の年の春まで45年間の作を収めるが、詩は年代順に配列されており、30余年の詩人の心の軌跡を読み取ることができる。「家を離れて四日自ら春を傷(いた)む 梅柳(ばいりゅう)何に因(よ)りてか触るる処(ところ)に新たなる 為(かるがゆえ)に去来の行客の報ずるに問ふ 讃州(さんしゅう)の刺史(しし)は本より詩人なり」(駅楼の壁に題す)。

[後藤昭雄]

『川口久雄校注『日本古典文学大系72 菅家文草・菅家後集』(1966・岩波書店)』


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百科事典マイペディア 「菅家文草」の意味・わかりやすい解説

菅家文草【かんけぶんそう】

菅原道真の漢詩文集。900年成立。全12巻。巻6までに468首の漢詩,巻6以下に169編の散文を収載。詩はほぼ制作年代順にまとめてあり,文は四六駢麗体(駢文)が中心,・銘・・祭文・記・詩序・書序・策問・対策・詔勅・奏状・願文(がんもん)などジャンル別に分類してある。900年に祖父清公の《菅家集》,父是善の《菅相公集》とともに醍醐天皇に献上された。これに続くものに大宰府時代の詩をまとめた《菅家後集》がある。

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世界大百科事典 第2版 「菅家文草」の意味・わかりやすい解説

かんけぶんそう【菅家文草】

菅原道真の漢詩文集。12巻。900年(昌泰3)成立。前半6巻は詩468首を年次順に,後半6巻は散文161編をジャンル別に集める。道真は政府高官であった得意時代,〈月夜に桜花を翫(もてあそ)ぶ〉(385),〈殿前の薔薇を感(ほ)む〉(418)など艶冶巧緻の作を多く詠む(作品番号は《日本古典文学大系》所収のものによる)。なかんずく,〈春娃(しゆんわ)気力無し〉(148),〈催粧〉(365)の詩と序は,宮廷専属歌舞団の舞姫の官能的な姿態を描いて,王朝妖艶美の頂点に立つもの。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「菅家文草」の解説

菅家文草
かんけぶんそう

菅原道真(みちざね)の漢詩文集。12巻。900年(昌泰3)醍醐天皇の求めに応じて編集献上。巻1~6は詩(年代順),巻7~12は散文(内容別)からなる。饗宴でのものや外国使節との酬唱詩など華麗な詩のほか,讃岐時代の地方民衆の生活にふれての詩作もある。また国司としての実務体験にもとづいた奏状や,賦(ふ)・対策・詔勅・願文などの散文もある。「日本古典文学大系」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菅家文草」の意味・わかりやすい解説

菅家文草
かんけぶんそう

平安時代前期の漢詩文集。菅原道真著。 12巻。昌泰3 (900) 年,道真が醍醐天皇に献上した家集で,それまでの自己の作品を集めて時代順に配列したもの。侍宴や贈答,離別,即興の詩などがあり,流麗優美な詩風が特色。散文は事務的な論文と芸術的な美文に分れる。当時最高の学者,詩人であった作者の姿をうかがうことができる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「菅家文草」の解説

菅家文草
かんけぶんそう

平安前期,菅原道真 (みちざね) の漢詩文集
900年刊。12巻。前6巻は詩,後6巻は散文よりなり,醍醐 (だいご) 天皇に献上した。詩文の内容的特徴は高踏的芸術至上主義のものや,民衆生活にふれたものなどがあり,文学者・政治家としての道真の姿をうかがうことができる。

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