デジタル大辞泉 「落葉」の意味・読み・例文・類語
らく‐よう〔‐エフ〕【落葉】
1 葉が落ちること。また、その落ちた葉。日照期間の短縮や葉自体の老化により、葉柄の離層で切れて茎から離れる。おちば。「イチョウの街路樹が
2
3 「落丁」に同じ。
[類語]葉・木の葉・枝葉・草葉・葉っぱ・押し葉・葉身・葉脈・葉柄・葉末・托葉・苞・単葉・複葉・葉序・双葉・若葉・若緑・新緑・万緑・青葉・
ふつうは木本植物の葉が枯れて落ちることをいうが,草本の葉の枯死まで含めていうこともある。典型的な落葉現象は,葉の寿命によって定まっており,一定の生理的周期に達すると,葉の養分が茎のほうへ流れ去ってしまい,葉緑体が分解して緑色を失う。これと同時に,葉柄の基部などに離層abscission layerがつくられる。離層をつくる細胞群は基本組織系のもので,分化の程度は種によって一定していないが,植物ホルモンの量によって左右されるといわれる。いずれにしても,離層の細胞の接着力が弱くなり,そこで脱落して葉が落ちる。離層が形成されると葉と茎の間の物質の流通は乏しくなり,通道組織は機能をもたなくなってしまう。葉が落ちたあとを葉痕leaf scarというが,落葉後コルク層で全面が覆われる。
落葉樹は葉が1年以内に全部落ちて裸になる時期をもつものであり,落葉は秋とか乾季前にいっせいに起こることが多い。常緑樹でもクスノキの場合のように,春に新しい葉が展開してから古い葉を落としてしまうものもあり,葉の寿命が母樹の寿命と同じということはない。また,熱帯の樹木では落葉の周期は一定している場合とそうでない場合があるらしく,実体はよくわかっていない。アコウの場合,個体によって落葉の周期が決まっているようで,種によってはその周期が暦年とは独立の場合もあるようである。カエデのように,明らかに外因によって落葉が生じるものもあるが,種によっては内因によって支配されているものもあるらしいことがこれらの事実から推定されるが,具体的な事実関係が明らかにされているわけではない。落葉前に葉が紅色や黄色になる現象を紅葉とか黄葉というが,これは葉緑体の分解によって緑が消えることによるが,場合によってはアントシアニンの増加がみられて色彩が鮮やかになることもある。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
葉が自然の加齢に伴って老化する結果、あるいは自然環境の変化に対応する結果として、茎から脱離することをいう。後者の場合は落葉樹にみられ、主として日照期間の短縮が引き金となって、すべての葉が同時期に落ちる。これは植物の越冬機構の一つである。
落葉がおこる前には、葉柄の基部に、細胞分裂の結果、離層とよばれる小形の細胞でできた数層の柔細胞組織が形成される。離層の形成は、成熟葉になってから行われる場合と、葉の成長の初期にすでに行われている場合とがあり、植物によって異なる。離層の部分の維管束系には繊維細胞を欠如することがあり、全体としては機械的に弱くなっている。実際の落葉に先だって、離層では、ペクチナーゼおよびセルラーゼという酵素が誘導される。これらの酵素の働きで、それぞれ細胞壁多糖類のペクチン質、およびセルロースが分解され、離層を構成する細胞の細胞壁が崩壊して、葉柄は離層のところで切れる。そして、つながっていた維管束は葉身の重みで切断され、落葉がおこる。葉柄の脱離面では、維管束の木部道管、または仮道管細胞内にカロース(填充体(てんじゅうたい)ともいう)とよばれる細胞群が生じて管をふさいでしまう。さらにコルク組織が形成されて脱離面全体を覆うようになる。落葉する葉は、クロロフィルやタンパク質などが分解され、葉の栄養分は他の組織へ転流される。落葉樹における落葉では、黄色化または紅色化するものが多い。
落葉には内的要因として、植物ホルモンのオーキシン、サイトカイニン、およびエチレンが関与していると考えられる。前二者の生成や供給の低下は葉の老化を促進させ、離層形成の引き金となる。エチレンは、離層における細胞壁分解酵素の合成を誘導し、直接的に落葉を調節する。なお、落果の現象も基本的には落葉と同じである。
[勝見允行]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…その後,貧困と視力の悪化という苦況と闘いながら,春草は一度否定した線描を新たな観点から復活する方向へ向かい,06年以後日本美術院が五浦に移転してから,新境地を開拓する。07年以後の文展に発表した《賢首菩薩》《落葉》《黒き猫》はその結論を示すものである。しかし,近代日本画の代表傑作というべき《落葉》を発表したときもこれを非日本画とそしられ,洋画家からは洋画かぶれといわれた。…
※「落葉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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