葬る（読み）ホウムル

デジタル大辞泉

ほうむ・る〔はうむる〕【葬る】

［動ラ五（四）］《「ほうぶる」の音変化》
１ 死体・遺骨を墓所に納める。埋葬する。「ねんごろに―・る」
２ 不都合なことなどを、世間に知られないように隠してしまう。「真相を闇から闇に―・る」
３ 社会的立場などを失墜させる。「業界から―・られる」
[可能]ほうむれる
[類語]（1）埋葬・埋骨・納骨

はぶ・る【^▽葬る】

［動ラ四］《「はふる」とも》
１ 死者を埋葬する。ほうむる。
「神かむ―・り―・りいませて」〈万・一九九〉
２ 火葬にする。
「薪を積みて―・りて、上に石の卒塔婆を立てけり」〈著聞集・二〉

ほうぶ・る〔はうぶる〕【^▽葬る】

［動ラ五（四）］「ほうむる」に同じ。
「生きて―・られる所だ」〈漱石・坑夫〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

ほうむ・るはうむる【葬】

1. 〘 他動詞 ラ行五（四） 〙 ( 「ほうぶる（葬）」の変化した語 )
2. ① 死体や遺骨などを土の中に埋める。埋葬(まいそう)する。
   1. [初出の実例]「我が師今朝にはかに命終り給ひぬれば、おのれひとりして葬(ハウムリ)をさめたてまつらん事」(出典：発心集（1216頃か）五)
3. ② ある物事を表面に出さないで隠してしまう。取り上げて問題にすることなく、そのままにする。多く、不都合な事柄などをおおい隠す意に用いる。
   1. [初出の実例]「この怪物を〈略〉造作も無く葬ってしまふに違ひない」(出典：冷笑（1909‐10）〈永井荷風〉七)
4. ③ 人の失敗や悪業などを暴露・攻撃して、その社会的な立場を失墜させる。世間に出られないようにする。
   1. [初出の実例]「自分の名と芸術とは〈略〉時代と共に葬られてしまふ運命を持ってゐる事を」(出典：冷笑（1909‐10）〈永井荷風〉七)
5. ④ 捨てる。無駄にする。
   1. [初出の実例]「半生を葬って、希望も失へば目的も棄てる」(出典：青春（1905‐06）〈小栗風葉〉秋)

はぶ・る【葬】

1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
2. ① 死者を墓所に送って収める。野辺送りして棺を埋葬する。ほうむる。
   1. [初出の実例]「ことさへく 百済の原ゆ 神葬(はぶ)り 葬(はぶ)りいませて」(出典：万葉集（８Ｃ後）二・一九九)
   2. 「武きつはものどもおほく鼇魚(こうぎょ)のはらに葬(ハブ)られ」(出典：読本・雨月物語（1776）白峯)
3. ② 死者を火葬にする。だびにふする。
   1. [初出の実例]「はふりけるに、其の火に此の女飛び入りて」(出典：今物語（1239頃）)

葬るの語誌

( 1 )上代には清濁の確例がないが、「観智院本名義抄」では第二拍目が濁音になっている。後に「はうむる」とｍ音に転ずる。
( 2 )語形・意味から考えて、「はふ（放）る」と同語源か。

ほうぶ・るはうぶる【葬】

1. 〘 他動詞 ラ行五（四） 〙 死体を墓所などに納める。ほうむる。
   1. [初出の実例]「九月辛丑葬(ハウフル)」(出典：史記呂后本紀延久五年点（1073）)
   2. 「生きながら葬(ハウブ)られる覚悟でもあり」(出典：坑夫（1908）〈夏目漱石〉)

出典　精選版 日本国語大辞典