蓋し(読み)ケダシ

デジタル大辞泉 「蓋し」の意味・読み・例文・類語

けだし【蓋し】

[副]
物事確信をもって推定する意を表す。まさしく。たしかに。思うに。「蓋しその通りであろう」
(あとに推量意味を表す語を伴って)もしかすると。あるいは。
もも足らず八十隅坂やそくまさかに手向けせば過ぎにし人に―逢はむかも」〈・四二七〉
(あとに仮定の意味を表す語を伴って)万が一。もしも。ひょっとして。
「わが背子し―まからば白妙の袖を振らさね見つつしのはむ」〈・三七二五〉
おおよそ。大略。多く、漢文訓読文和漢混淆文などに用いる。
「よって勧進修行の趣、―もってくの如し」〈平家・五〉
[類語]たいてい恐らくたしかまず多分おおかた文字通りまさにまさしく

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「蓋し」の意味・読み・例文・類語

けだし【蓋・盖】

  1. 〘 副詞 〙
  2. あり得る事態を想定する時の、肯定的な仮定の気持を表わす語。ひょっとすると。もしかすると。けだしく。
    1. [初出の実例]「古に恋ふらむ鳥は霍公鳥(ほととぎす)(けだし)や鳴きし吾が思へる如(ごと)」(出典万葉集(8C後)二・一一二)
  3. 判断を下す時の、多分に確信的な推定の気持を表わす語。多分。おそらく。思うに。けだしく。
    1. [初出の実例]「是の談(ものかたりこと)、蓋(ケタシ)幽深(ふか)き致(むね)(あ)らし」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))

蓋しの語誌

( 1 )この語は「けだしく」と形容詞連用形のような形に語形拡張しても用いられる。
( 2 )平安時代以降は、ほとんど漢文訓読系の資料にのみ用いられている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

メタン

化学式 CH4 。最も簡単なメタン系炭化水素で,天然ガスの主成分をなしている。また石炭ガスにも 25~30%含まれる。有機物の分解,たとえばセルロースの腐敗,発酵の際に生成され,沼気ともいわれる。また...

メタンの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android