蓬萊(読み)ほうらい

世界大百科事典 第2版 「蓬萊」の意味・わかりやすい解説

ほうらい【蓬萊】

蓬萊は中国で東方の海上にあって仙人が住む不老不死の地とされる霊山をいうが,この蓬萊山をかたどった飾りを正月の祝儀物として用いた。その飾台を蓬萊台,飾りを蓬萊飾という。蓬萊飾は三方の上に一面白米を敷き,中央に松竹梅を立て,それを中心にダイダイミカン,タチバナ,かちぐり,ホンダワラ,カキ,コンブ,エビを盛り,ユズリハ,ウラジロを飾る。これに鶴亀や尉姥などの祝儀物の造り物を添えることもある。京坂では正月の床の間飾として据えおいたが,江戸では蓬萊のことを〈喰積(くいつみ)〉ともいい,年始の客にまずこれを出し,客も少しだけこれを受けて一礼してまた元の場所に据える風があった。

ほうらい【蓬萊】

三味線音楽曲名。(1)長唄。天保年間(1830‐44)の末ごろ,4世杵屋(きねや)六三郎(六翁)作曲。廓を仙境に,遊女仙女に見立てた作品。短い,上品な曲調で,本調子の節付けが優れている。祝儀曲としても用いられる。(2)河東節。もと半太夫節であったのを河東節に移したもので,鶴亀,松竹などめでたい主題を歌った作品。(3)地歌。松卯作詞,城菊と広瀬勾当作曲と伝える。天保期の作で京都の廓の情景を描いた作品。

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世界大百科事典内の蓬萊の言及

【半太夫節】より

…その曲節は主として弟子の初世十寸見河東(ますみかとう)をへて河東節に伝わったが,その他の三味線音楽にも〈江戸〉または〈江戸がかり〉として,優雅で淡泊な雰囲気を出すときに使われている。半太夫節を移した曲として,河東節には《きぬた》《鑓踊(やりおどり)》《蓬萊(ほうらい)》などが,地歌の〈半太夫もの〉としては《意見曾我》などが伝わっている。なお,義太夫節でいう〈江戸〉は,勇壮で律動的であり〈土佐節〉に近いものである。…

※「蓬萊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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