改訂新版 世界大百科事典 「蓬萊」の意味・わかりやすい解説
蓬萊 (ほうらい)
蓬萊は中国で東方の海上にあって仙人が住む不老不死の地とされる霊山をいうが,この蓬萊山をかたどった飾りを正月の祝儀物として用いた。その飾台を蓬萊台,飾りを蓬萊飾という。蓬萊飾は三方の上に一面に白米を敷き,中央に松竹梅を立て,それを中心にダイダイ,ミカン,タチバナ,かちぐり,ホンダワラ,カキ,コンブ,エビを盛り,ユズリハ,ウラジロを飾る。これに鶴亀や尉姥などの祝儀物の造り物を添えることもある。京坂では正月の床の間飾として据えおいたが,江戸では蓬萊のことを〈喰積(くいつみ)〉ともいい,年始の客にまずこれを出し,客も少しだけこれを受けて一礼してまた元の場所に据える風があった。蓬萊の飾物を少しでも食べると寿命がのびると信じられたのであった。
執筆者:岩井 宏実
蓬萊 (ほうらい)
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報