精選版 日本国語大辞典 「薬用植物」の意味・読み・例文・類語
やくよう‐しょくぶつ【薬用植物】
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薬として用いる植物のことで、植物性生薬(しょうやく)の原植物ともいえる。すなわち、薬用植物とは、植物のなかで全体あるいはその一部分が、人あるいは他の動物に対してなんらかの薬効を有するもの、あるいは有するとの考えから使用されるものをいう。俗に薬草ともよばれるが、これには木本植物やキノコなどの菌類も含まれ、さらに広義には抗生物質をはじめとする薬物を生産する細菌類も含まれることがある。また、そのままでは薬用とされないが、含有する化学成分を合成化学的に変化させたものが薬用となる場合や、分泌物、虫こぶなどが薬用となる場合もあり、これらは薬用資源植物とよばれることもある。食用植物や有毒植物であっても、薬用として利用される場合には薬用植物に分類される。
薬用植物は世界の各地で使用されており、その土地によって利用される植物の種類や利用方法は異なる。正確な統計ではないが、実際には全世界の高等植物(シダ類を含む維管束植物)中、約10~15%が世界中のどこかで薬用にされており、その種類はきわめて膨大といえる。薬用には新鮮品あるいは乾燥保存したものが利用され、代表的な利用方法には次のようなものがある。〔1〕薬用部をそのままか、あるいは軽くもんだり搗(つ)き砕いて外用する。〔2〕搗き汁あるいは絞った油を外・内用する。〔3〕水またはアルコールで冷浸あるいは煎(せん)じて外・内用する。〔4〕粉末にして外・内用するか、あるいはスナフ(嗅(か)ぎたばこ)とする。〔5〕発酵させてその液を内用する。〔6〕油で抽出して外用する。〔7〕水性エキスを乾燥したものを利用する。〔8〕火中に入れるか、たばことして用い、生じる煙を患部に当てたり吸引したりするほか、昆虫忌避剤ともする。〔9〕黒焼きあるいは灰にして利用する。〔10〕浴湯料として沐浴(もくよく)したり湯気で蒸したりする。〔11〕水蒸気蒸留して得られる精油を利用する。〔12〕調理するか、あるいは新鮮なままで料理として食する(薬膳(やくぜん))。〔13〕特殊な化学成分を抽出し、そのままか、あるいは合成化学的に構造を変化させたものを利用する(近代医学)。
これらの方法以外にも、国や地域によって特殊な用例が数多くみられる。
古代における薬用植物の発見は、食用植物と有毒植物の認識のなかから本能的にみいだされたものと想像されるが、薬物を摂取する場合に用いる「服用」の「服」の字は、本来は身につけるという意味であり、薬用植物のもっとも原始的な利用法は、魔除(まよ)けとして身につけることであった。この方法は、現代においても多くの開発途上国に残っている。
薬用植物の分類方法としては、〔1〕植物分類学的手法による、〔2〕薬効による、〔3〕使用される地域あるいは民族の違いによる、〔4〕薬用植物の利用部位による、〔5〕含有成分による、などがあるが、植物分類学的な手法以外は、同一植物が複数の項目を重複するなど、それぞれに一長一短がある。ヨーロッパや日本では植物分類学的手法によることが多いが、現代中国では漢方医学的な薬効による分類法が一般的である。
植物資源は本来無限資源であり、計画的に収穫すれば永遠に資源の枯渇はないはずである。しかし、近年、先進国においては自然破壊が急速に進み、また生産国の乱獲もあって、薬用植物の資源確保問題が深刻に論議されるようになってきた。経済植物として栽培される種類も多いが、一方では価格が不安定であったり、残留農薬の問題や薬効的な問題など、今後に残された課題も多い。なお、最近の薬草ブームや自然食ブームの影響で、誤って採集した有毒植物による中毒例が増えている。身近にある薬用植物の利用は便利ではあるが、なまはんかな知識で利用するのは非常に危険である。自信のない植物は使用しないか、経験豊かな人に相談するなどして事故がないように心がけることがたいせつである。
[難波恒雄・御影雅幸]
『刈米達夫・木村康一監修『薬用植物大事典』(1958・広川書店)』▽『刈米達夫著『最新和漢薬用植物』(1959・広川書店)』▽『木村康一・木村孟淳著『原色日本薬用植物図鑑』全改訂新版(1981・保育社)』▽『佐藤潤平・三浦三郎・難波恒雄著『薬になる植物I~Ⅲ集』(1956~79・創元社)』▽『伊沢凡人著『身近な薬草百科』(1973・主婦と生活社)』▽『N・テーラー著、難波恒雄・難波洋子訳注『世界を変えた薬用植物』(1972・創元社)』▽『難波恒雄・御影雅幸著『身近な薬用植物』(保育社・カラーブックス)』
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…また医薬品として利用されるものは,成分製剤原料であるとの考え方からdrug materialという言葉もよく使われる。 生薬に関連する日本語の用語として薬用植物,薬草,漢方薬,民間薬,和漢薬などがある。薬用植物と薬草はほぼ同意義に使われるが,薬用植物中には薬木(やくぼく)も,またアメリカでは抗生物質を生産する放線菌なども含めている。…
…直接あるいは間接的に食用に供している植物のなかにも,飲料や香辛料に利用する植物は薬理的に利用する植物と利用のしかたや,効用に一脈通じるものがあり,厳密な区別はしにくい。
[薬用植物]
古くから漢方として東洋医学独得の医療体系を発達させた中国では,知られている限り数千種もの植物が民間薬として利用されている。また,世界のどの民族をとりあげてみても,本当に薬効があるかどうかは別として,薬用にする生物,特に植物の体系的な知識の蓄積がみられる。…
※「薬用植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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