精選版 日本国語大辞典 「蛮社の獄」の意味・読み・例文・類語
ばんしゃ‐の‐ごく【蛮社の獄】
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江戸後期、蘭学(らんがく)者に対する弾圧事件。蛮社とは蛮学社中の略。三河(愛知県)田原(たはら)藩の家老渡辺崋山(かざん)は、藩政改革の推進を図って、高野長英(ちょうえい)、小関三英(こせきさんえい)ら蘭学者と尚歯(しょうし)会の集まりを通じて西洋知識の吸収に努めていた。また、幕臣・諸藩士などの識者のなかには、崋山の識見を慕って集まる者も少なくなかった。大学頭(かみ)林述斎(じゅっさい)の子で目付の鳥居耀蔵(とりいようぞう)は、儒教思想による守旧的立場から、崋山ら蘭学者を憎悪していた。1837年(天保8)6月、対日通商の望みをもって、日本人漂流民の送還のため江戸湾に入ったアメリカ船モリソン号が、浦賀で異国船打払令によって撃退されるという事件が起きた。すると、崋山は『慎機論(しんきろん)』を、長英は『戊戌(ぼじゅつ)夢物語』(『夢物語』)を著して、世界情勢に目を覆い人道に反する幕府の処置を批判した。39年、老中水野忠邦(ただくに)は守旧派の鳥居と開明派の伊豆韮山(にらやま)の代官江川英龍(ひでたつ)に江戸湾の備場(そなえば)巡見を命じた。江戸に帰った江川から意見を求められた崋山は、江戸湾防備の意見書や『西洋事情書』などを江川に送った。鳥居は、江川が崋山と親しいことを知り、崋山が無人島(小笠原(おがさわら)島)渡航計画に関係し、長英らと蘭学を講じ、幕政批判を行ったなどと、罪状を捏造(ねつぞう)して、同年5月崋山、長英ら一味を逮捕した。取調べの結果、無人島渡航計画などの容疑は晴れたが、幕政批判の罪は重く、同年12月、崋山には国元田原における蟄居(ちっきょ)、長英には永牢(えいろう)の判決が下された。これより先、小関三英は自分も罪の逃れがたきを思い自刃し、崋山、長英の両名もやがて自殺に追い込まれた。蛮学社中の観を呈した尚歯会そのものは、主宰者の紀州藩士遠藤勝助(しょうすけ)が逮捕されておらず、弾圧の直接対象にはなっていなかった。しかし、この事件は、蘭学・蘭学者が弾圧を受け、そこに幕府内における守旧派と開明派との対立が顕著にみられた事件であったといえよう。
[片桐一男]
『佐藤昌介著『洋学史研究序説』(1964・岩波書店)』
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1839年(天保10)江戸でおきた政治疑獄事件。目付鳥居耀蔵(ようぞう)の告発によって渡辺崋山(かざん)・高野長英(ちょうえい)・小関三英(さんえい)ら西洋事情研究者の仲間「蛮学社中」が弾圧された。幕府儒官林述斎の次男である鳥居は,幕臣が崋山らのもとに出入りすることに危機感を覚え,同年,江戸湾岸の巡見を終えた代官江川太郎左衛門英竜(ひでたつ)が,崋山に復命書の別冊として西洋事情書の執筆を依頼したことを探知。同書の上呈を阻止するため,配下の小人目付小笠原貢蔵に探索を命じ,小笠原の報告に脚色を加え老中水野忠邦に上申。崋山・長英は逮捕され,審理中に押収された「慎機論」「西洋事情答書」によって崋山は国元蟄居,長英は「戊戌(ぼじゅつ)夢物語」著述により永牢に処された。三英は逮捕前に自殺した。
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…広東のアメリカ貿易商社オリファント社所属のモリソンMorrison号が1837年(天保8)日本人漂流民7人の送還を兼ねて対日貿易の開始を求めて浦賀へ来航し,異国船打払令に従った浦賀奉行の砲撃をうけ,さらに鹿児島湾に入港しようとして砲撃された事件。翌年,事件の真相をオランダ商館長の情報から知った幕府は,打払政策に関する評議を行ったが,幕府評定所一座が打払令順守を主張したことを知った渡辺崋山らは,幕府の危険な政策を批判し,蛮社の獄の原因の一つとなるとともに,対外的危機を認識させる事件となった。【藤田 覚】。…
…そのころようやく海防が問題化した時期であったため,彼の学識を慕って集まる知識人が少なくなかった。このことが幕府の文教をつかさどる林家の忌諱(きい)に触れ,林家出身の目付鳥居耀蔵が崋山と同志を陥れるために39年に蛮社の獄を起こした。そのため崋山は在所蟄居(ちつきよ)を命ぜられ,2年後に在所田原で自殺した。…
※「蛮社の獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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