改訂新版 世界大百科事典 「蜂巣炎」の意味・わかりやすい解説
蜂巣炎 (ほうそうえん)
phlegmon
蜂巣織炎,蜂窠(ほうか)織炎,フレグモーネともいう。組織の密度が粗な部分(皮下組織,筋肉と筋肉の間,頸部など)に起こる急性の化膿性炎症で,主としてブドウ球菌や連鎖球菌が原因菌となる。代表的なものに,虫さされの傷から細菌が侵入して起こる皮下蜂巣炎がある。局所には境界不鮮明な発赤とはれ,むくみが起こり,熱感と圧痛が著しい。炎症は急速に進行し,疼痛は拍動性で,悪寒や震えを伴った高熱が出現する。さらに進むと,局所は軟化して膿瘍を形成する。炎症が軽度の場合には,膿瘍を形成せず自然吸収されてしまう。しかし膿瘍形成に至ったら,自然に破れて膿が出るか,切開して排膿するかしないと治癒しない。細菌の毒性が強烈であったり,患者の抵抗力が低下しているときは,さらに重篤な症状となる。治療は,局所の安静,冷却,全身的な抗生物質の投与を行い,膿瘍があれば切開排膿する。嫌気性菌による蜂巣炎では,組織の腐敗とガスの産生がみられ,ガス壊疽(えそ)と呼ばれる。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報